2018-10-27

一番大事な金融リテラシー

政府の暴力性は日常ではあまり目立たちません。しかし財政破綻という非常事態に直面すると、それがむき出しになります。終戦直後に強行された預金封鎖、通貨切り替え、財産税といった緊急措置がまさにそれでした。しかも政府はぎりぎりまで、財政は大丈夫と嘘をつきました。

法政大学教授の小黒一正氏は著書『預金封鎖に備えよ』で、一連の緊急措置を詳しく記します。ハイパーインフレに直面した日本政府は1946年、預金封鎖と通貨切り替えに着手。5円以上の旧銀行券をすべて銀行など民間金融機関に預けさせ、生活や事業に必要な額だけを新銀行券で引き出させました。

新たな税も導入します。柱の一つが財産税です。国内に在住する個人を対象に、一定額を超える財産(預貯金、株式などの金融資産及び宅地、家屋などの不動産)に課税。最低税率25%で、1500万円超の財産には実に90%も課税されました。

政府は太平洋戦争開戦前夜の1941年に作成した小冊子で、「国債がこんなに激増して、財政が破綻する心配はないか」という問いに対し「全部国民が消化する限り、すこしも心配は無いのです」と答えています。小黒氏が言うとおり、なんとも「強烈な嘘」です。

私たち国民にとってせめてもの慰めは、こんな非道な政府の暴力からも、多少は逃れる余地があったことです。預金封鎖を事前に察知して預貯金を大量に引き出して株券などに替えておき、新銀行券に切り替わって安定してから現金化した人々もいたようです。財産税による資産没収も、貴金属なら隠せないことはありませんでした。

最近、金融リテラシーに対する関心が高まっているのはよいことです。ただし今から学ぶのであれば、運用商品の利回りがどうこうという細かい話ではなく、非常時に政府から資産を守る知恵こそ一番大事でしょう。政府は教えてくれそうにありませんしね。(2017/10/27

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