国際法上の自己決定権とは、すべての人民が外部からの介入を受けず、その政治的地位を自由に決定する権利です。民族自決権とも訳され、かつては植民地の人々が独立を果たす根拠とされました。現在は既存の国家から少数民族などが分離独立する権利として注目されています。
スペイン北東部カタルーニャ州の独立問題もそうです。スペインからの独立の賛否を問う住民投票で、独立賛成が圧倒的多数を占める見通しとなり、州政府は独立に向けた動きを加速させる構えです。
これに対しスペインの中央政府側は、独立に向けた動きはすべて憲法違反で無効だと主張。強硬手段で阻止に動いています。日経電子版が伝えるように、住民投票では警官隊が投票箱を一部撤去し、住民との衝突も発生しました。地元メディアは頭から血を流す女性の写真などを報じています。
この問題について内外のメディアは総じて、カタルーニャ州の独立に好意的です。中央政府の強権発動に対する反発も一因でしょうが、根底には州住民の自己決定権に対する理解があると思われます。
けれども、もしそうだとすれば、首尾一貫していないといわざるをえません。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に対する論調と違いすぎるからです。
英国のEU離脱に対し、大半のメディアは批判的です。とくに昨年6月、国民投票で離脱が決まった直後は「国際社会から孤立する」とたいへんな騒ぎでした。
しかし住民(国民)の意思によって、ある政治共同体からの離脱を選ぶという点で、英国のEU離脱は、カタルーニャ州のスペインからの独立と変わりません。もしブレグジットを「孤立」だと批判するなら、カタルーニャ州の独立も同じように批判しなければ筋が通りません。
実際には、独立は孤立ではありません。政治的に別々の集団になっても、経済的な関係を結ぶことはいくらでも可能だからです。
英国民がEU離脱を選ぶのは自由だし、その英国からスコットランドが独立を選ぶのも自由です。もし住民が望むなら、たとえば沖縄が日本から独立するのも自由でなければなりません。それが自己決定権の本質です。(2017/10/03)
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