2018-10-29

中国経済を笑えるか

ナショナリズムは理性を曇らせます。その一例は、中国経済に対する日本人の見方です。中国経済の先行きに黄信号がともると、ざまあみろとばかりに喜ぶ人たちがいます。けれども中国経済が抱える問題の本質は、日本にも共通したものです。

日経の連載記事「習近平の支配」によれば、中国の習近平総書記は1期目の当初、「資源配分で市場が決定的な役割」を果たす改革を進めると公言したにもかかわらず、実際は国有企業を大きくする道を選びました。

1~8月の製造業などの利益は国有企業が46%増に対し、民営企業は14%増にとどまっています。効率を高める改革は滞り、借金や投資に過度に頼る「古い中国」がゾンビのように温存されているといいます。

別の海外記事で、スウェーデン出身の若手経済学者、ペール・ビュールンド氏は最近中国を訪問した経験を踏まえ、中国経済は国家プロジェクトに依存し、入居者のいない高層ビルなど大きな無駄が生じていると指摘します。そして最近の中国経済の奇跡とは「根本から偽物」と厳しく批判します。

中国政府が推進する「一帯一路」構想も、同様の国家プロジェクトです。どれほど無駄な政府支出でも経済成長にカウントする国内総生産(GDP)の仕組み上、当初は成功とみなされるかもしれません。しかし市場経済に基づかないため、結局は悲惨な失敗に終わるだろうとビュールンド氏は予測します。

けれども、これらは決して日本経済と縁遠い話ではありません。

ビュールンド氏は、中国経済とは「とんでもない規模のケインズ流雇用政策」だと表現します。経済学者ケインズの主張に従い、雇用を生み出すため、無駄でもいいので政府が公共事業をどんどん行うというものです。

これは日本のアベノミクスによる「機動的な財政政策」と変わりません。日本の保守政権と中国共産党の経済政策が同じとは、皮肉な話です。

中国経済が臨界点に向かっているとしたら、笑いごとではありません。日本経済も同様の困難が待ち受けるでしょう。(2017/10/29

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