企業が不正を行なった場合、政府がわざわざ罰するまでもなく、顧客から厳しい罰を受けます。第1に、内容次第で損害賠償を求められます。第2に、信用をなくし、自社の製品・サービスを買ってもらえなくなります。
このような事態を招いては大変ですから、企業は政府から命じられなくても、不正を防止しようとします。もちろん大勢の人が働く場ですから、完全に防ぐことはできません。けれども、それは政府が監督や規制、罰則を強化しても大して変わりません。
規制や罰則の強化にはコストがかかります。そのコストは結局、税金や経済的便益の低下という形で消費者が負担しなければなりません。コストに見合ったメリットはあるでしょうか。かりに不正防止の確度を多少高めることができたとして、わざわざ余分なコストを払う価値があるでしょうか。いや、そもそも高められるかどうか疑問です。
日経電子版の記事によると、神鋼のデータ改ざん問題について経産省が悩んでいるそうです。法律に基づく強力な指導権限がないからです。非鉄金属産業を所管するものの、その主な役目は産業振興策の立案で、電気事業法による指導・監督のように法律に基づく権限はアルミの製造にはないといいます。
けれども経産省が電気事業法によってみっちり指導・監督してきたはずの東京電力は、福島第一原子力発電所で必要な津波対策を怠り、甚大な被害をもたらしました。その責任の半分は対策を命じなかった国にあると、福島地方裁判所は10日の判決で示しました。政府の関与が企業の不正防止に有効とはとてもいえません。
企業の不正を罰する仕事は顧客に任せましょう。それは政府の画一的な罰則や政治的な指導と違い、本当に悪質な不正には厳しく、顧客の利益に関係ないルール逸脱には寛容に、きめ細かく実行されるでしょう。それが自由な市場経済にふさわしい罪と罰のあり方です。(2017/10/15)
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