2018-10-26

規制を疑わない国

規制は何らかの目的を達成するための手段です。だから、ある規制が目的の達成にふさわしくなければ、変更や廃止を考えるのが当然のはずです。ところが日本では不思議なことに、そういう意見がほとんど出てきません。

日産自動車の不正検査が問題になっています。無資格の従業員が新車の完成検査をしていたためです。日産はこれまでに約120万台のリコール(回収・無償修理)を決め、車両の出荷を一時停止。テレビコマーシャルや新車キャンペーンも中止しました。大変なことです。

ところが報道では申し訳程度にしか触れられないのですが、これはすべて国内向けの車だけの話です。同じ工場で、同じように無資格者が検査していても、海外向けの車なら何の問題もありません。現に日産は海外向けの車の生産は続けています。

なぜなら、海外では安全性を審査する制度が異なるため、無資格者が検査しても問題とされないからです。

これはおかしな話です。もし有資格者による完成検査が安全のためにそれほど重要なら、海外でも必要とされるはずです。

この点についてジャーナリストの井上久男氏が現代ビジネスで詳しく解説しています。それによると、完成検査とは「儀式」の工程にすぎず、何のノウハウもないといっても過言ではないといいます。

そのうえで同氏は、国土交通省が主管の「型式認証制度」は一部が時代遅れになりつつあり、安全上問題がないのであれば、有資格者による検査制度は廃止にすればいいし、逆に問題があるのならば、今はあいまいな有資格者を厳密に定義せよと述べます。今回の問題の本質は、まさにこういうことでしょう。

お上の決めた規制を金科玉条のように奉って時代遅れになろうと疑わず、破った者はけしからんと有無を言わさず叩く。日本人の一番醜い姿ではないでしょうか。(2017/10/26

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