2021-03-29

MMTの矛盾①フリーランチの幻想


最近もてはやされる現代貨幣理論(MMT)の根底にあるのは、国家を万能の存在として神のように崇める国家主義である。だから信奉者が左翼(革新派)、右翼(保守派)の両方にまたがっている。

しかし、国家の力で経済に繁栄をもたらすことはできない。むしろ混乱と衰亡を招くばかりだろう。保守派の評論家、中野剛志氏がダイヤモンド・オンラインで公開している記事を素材に、MMTの本質と矛盾、害悪を見ていく。

MMTとはそもそも何か。中野氏が説明するとおり、自国通貨を発行できる政府の自国通貨建ての国債はデフォルト(債務不履行)しないので、政府はいくらでも好きなだけ財政支出をすることができる。財源の心配をする必要はない、とする理論だ。

「政府はいくらでも財政支出をすることができる」という突飛な主張について、中野氏はこう付け加える。「経済学の世界では、よく『フリーランチはない』と言われますが、国家財政に関しては『フリーランチはある』んです」

経済学についてまともな知識のある人なら、驚いてのけぞるに違いない。「フリーランチ(タダ飯)はない」とは、あらゆる経済事象に共通する鉄則だ。それを部分的にせよ否定するのは、たとえるなら「物理学の世界では、『すべての物体の間には引力が働く』と言われますが、霞が関では違うんです」と言うようなものだ。

後述するように、たとえ国家であっても、フリーランチはないという経済の法則を逃れることはできない。それができると信じるのは、国家は万能という幻想にとらわれているからだ。(この項つづく)

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