政府がお金の発行量を増やすと、政府自身は新たなお金を手にする一方、人々はお金の価値を奪われる。実質、税金と同じだ。これを「インフレ税」と呼ぶ。
MMT論者は、政府の通貨発行権を活用すれば、コストなしでメリットを享受できるとまことしやかに語る。フリーランチを楽しめると甘くささやく。それは真っ赤な嘘だ。タダ飯だと信じて盛大に飲み食いしたら、インフレ税の支払いが待っている。
しかもインフレ税は普通の税に比べ、非常にたちが悪い。
そもそも課税は、法律の定めによらなければならない。これを租税法律主義という。マグナ・カルタに由来する近代法の大原則で、日本国憲法でも84条にうたわれている。具体的には、法律で課税対象、税率、課税方法、徴収方法などの条件を定めなければならない。
ところがインフレ税の場合、根拠となる法律が存在しない。課税対象も税率も、課税や徴収の方法も、どこにも定められていない。消費税なら税率は10%と法律に明記されているけれども、インフレ税の負担は国民一人一人ばらばらだ。税率は何%か、政府自身にもわからない。
普通の税金なら、国会で根拠となる法律を成立させなければならない。世論の反対があるから、すんなりとはいかない。下手をすると選挙で負ける。
インフレ税にそんな苦労はない。政府が中央銀行を使ってお金を増やすのに、いちいち国会の承認はいらない。「金融政策の一環」と言っておけばいい。メディアもインフレ税をほとんど問題にしないから、国民の多くは税金を取られている意識すらない。
近代法の精神を踏みにじる悪質な税金。それがインフレ税だ。(この項つづく)
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