お金に価値があるのは税金のおかげだというMMT理論では、説明のできない現象がある。米ドルへの国際的な需要だ。
現代の世界経済で、国際取引の大半は米ドルで決済されている。しかし、取引を行う企業や個人の多くは、米ドルで納税するわけではない。米国以外の企業や個人はそれぞれ自国通貨で納税するだろう。それにもかかわらず米ドルが国際取引で多用されている事実は、お金の価値は納税義務から生まれるというMMT理論の矛盾を示す。
貨幣の価値を基礎づけているのは何かと掘って掘って掘り進むと、国家権力が究極的に貨幣の価値を保証しているという認識に至った——。中野剛志氏はMMTの貨幣理論をこう称える。国家を市場経済より優位に置く国家主義者には好都合な理論だろう。しかし、せいぜい社会主義経済にしか通用しない。社会主義は徹底した国家主義の一形態だから、当然ではある。
お金に価値があるのはなぜか。さまざまな商品やサービスを購入できるからだ。言い換えれば、お金に購買力があるからだ。もし購入できる商品やサービスがなければ、お金に価値はない。つまりお金に価値をもたらすのは、商品やサービスを豊かに生み出す市場経済である。自分では何も生まない国家権力ではない。
MMTは現代貨幣理論というその名前にもかかわらず、貨幣の本質を説明できない。看板に偽りありもいいところだ。権力に都合の良い、怪しげな理論を吹聴して回る学者や評論家にはご用心。(この項おわり)
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