2021-04-20

マネーの起源②物々交換説は誤りか


まず、貨幣商品説に対するMMT側の批判をみてみる。中野剛志氏は、貨幣商品説のポイントを「みんながおカネがおカネだと思っているから、みんながおカネをおカネだと思って使っている」とまとめ、こう述べる

貨幣の価値は「みんなが貨幣としての価値があると信じ込んでいる」という極めて頼りない大衆心理によって担保されているということになります。そして、もし人々がいっせいに貨幣の価値を疑い始めてしまったら、貨幣はその価値を一瞬にして失ってしまうわけです。

そのうえで中野氏は「はっきり言って、苦し紛れの説明です」と切り捨てる。

しかしブランド品や美術品が端的に示すように、あるものの価値を決定するのは、結局のところ「極めて頼りない大衆心理」である。それは貨幣も変わらない。人々が一斉に貨幣の価値を疑い始め、その価値が一瞬にして失われる事実は、ハイパーインフレの歴史が示している。

中野氏によれば、貨幣の起源を研究した歴史学者や人類学者、社会学者たちも、今日に至るまで誰も、「物々交換から貨幣が生まれた」という証拠資料を発見することができなかったという。おそらくその学者たちは、ご苦労にも、わざわざ証拠の見つかりにくい古代を調査したのだろう。

大昔のことを調べなくても、貨幣が物々交換から生まれた事例はすぐ見つかる。第二次世界大戦中の捕虜収容所で、配給品の物々交換を通じ、タバコが貨幣の役割を果たすようになったエピソードは有名だ。最近、米国の刑務所では即席ラーメンが支払いの手段として使われている。

お金が市場での物々交換から生まれたことを否定するMMT論者は、遠い昔の話などでなく、身近な事象に目を向けたほうがいい。お金は自然発生的に生まれるのだ。(この項つづく)

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