2021-04-21

マネーの起源③社会主義の貨幣理論


さて、現代貨幣理論(MMT)を支持する中野剛志氏は、お金が物々交換から生まれたという貨幣商品説を否定し、市場における交換が存在する前から、貨幣は存在していたと主張する。その例として挙げるのは、古代のメソポタミアやエジプトである。

メソポタミアでは、神殿や宮殿の官僚たちが、臣下や従属民から必需品や労働力を徴収するとともに、財を再分配していた。その際、臣下や従属民との間の債権債務を計算したり、簿記として記録したりする計算単位として貨幣という尺度を使っていた。

市場経済が発達した現代の感覚からすると、これを貨幣と呼ぶには違和感がある。けれども、このような意味の貨幣は、近代にも実例がある。かつてのソ連や東欧の社会主義諸国だ。

これら社会主義諸国では、労働者に対し給与など各種の支払いを行うために貨幣を発行する一方で、労働者やその家族が国営店舗で買い物をしたり、国営アパートの家賃を払ったりする際に貨幣を回収した。従属民との債権債務を計算するために貨幣を使ったというメソポタミアそっくりだ。

古代メソポタミアエジプトも、市場経済が存在しなかったのであれば、一種の社会主義経済だ。つまりMMTの貨幣理論は、社会主義経済にならよく当てはまる。(この項つづく)

0 件のコメント: