東北新社の認可取り消しに続き、フジテレビの親会社でも過去に放送法の外資規制に違反していた疑いが強まった。放送法では、外国の法人などが持つ議決権の比率を20%未満に制限している。
安倍政権下で大騒ぎになった加計学園の獣医学部新設問題もそうだったが、この種の行政スキャンダルではいつも、そもそも規制は必要なのかという論点が無視される。それどころか、逆に規制を強化しろという意見が勢いを増す。
株式会社アシスト社長の平井宏治氏がダイヤモンド・オンラインへの寄稿で、そうした規制強化論を展開している。外資規制は「放送が世論に及ぼす影響を考慮した安全保障上の理由」から必要だと強調し、「官民ファンドを設け、MBO(経営陣が参加する買収)を行い、外国人投資家を株主から一掃することは可能」などと提言する。
平井氏が見落としていることがある。国民の安全にとって、外国政府だけではなく、自国政府も同じくらい、いやそれ以上に脅威になりうるという事実だ。
もし大東亜戦争中、情報源が日本政府の大本営発表に偏らず、外国のもっと客観的な報道に接することができたら、戦禍があれほど甚大になる前に、戦争をやめることができたかもしれない。外国の宣伝工作を心配するより、兵士の多数を戦地で餓死に追いやるような自国政府の暴虐のほうがはるかに恐ろしい。
コロナ下の今も、大手放送会社は感染症に関し政府の公式見解を繰り返すばかりで、戦時中と五十歩百歩だ。外国人資本家を締め出し、政府が実質牛耳る官民ファンドに経営を委ねたりしたら、報道の多様性はますます失われる。
他のあらゆる産業分野と同じく、外資規制は不要で有害だ。撤廃するのが正しい。
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