「コロナ危機」という言葉を毎日のように各種報道で目にする。しかし正確には、その多くは「コロナ対策がもたらした危機」のはずだ。
日本経済新聞の連載記事「コロナと資本主義」は、ベーシックインカム(最低所得保障)制度を取り上げ、世界の動きについてこう書く。「コロナ危機で若者や非正規雇用など経済的な弱者が深刻な痛手を被り、新たなセーフティーネット(安全網)として導入を模索する動きが相次ぐ」(太字は引用者)
この「コロナ危機」も、正確には「コロナ対策がもたらした危機」のはずだ。コロナ対策のやり方は国によって異なるが、欧米などで中央・地方政府によるロックダウン(都市封鎖)の強制が経済に深刻な打撃を与え、そのあおりで経済弱者が解雇や失業の憂き目を見ている。
日本では建前上、強制力のある措置は採られていない。営業時間の短縮やイベント開催の自粛を都道府県知事が事業者に「要請」し、従わない場合は「指示」できるにとどまり、指示に罰則はない。それでも公権力を背景とした指示は、事実上の強制力を持つと言える。
「コロナ危機」以外にも、メディアが「コロナ対策の影響」とはっきり言うべきところを「コロナの影響」としか言わないのは、単に文字数の節約のためだけとは思えない。コロナ対策が経済に打撃を与え、経済弱者を苦しめているとしたら、当然、政府の責任を問い、対策の見直しや中止を求めるのが筋だ。しかしそれは、政府のコロナ対策を基本的に支持するメディアの立場に反し、都合が悪い。
政府自身の政策が危機を引き起こしているのであれば、ベーシックインカムなど新たな政策を持ち出す前に、効果に疑問のあるコロナ対策そのものをまず見直すべきだろう。
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