政府が2021年9月のデジタル庁発足に向け、民間人材を4月に先行採用するらしい。非常勤の国家公務員とし、兼業やテレワークなど柔軟な働き方や待遇も認めるという。識者が「兼業など柔軟にするというのは良い方向性」「人材の利活用の観点でもプラス」などと歓迎のコメントをしている。
ここで身も蓋もない疑問を呈したい。デジタル庁って、そもそも必要なのだろうか。
冷静に振り返ってもらいたいのだが、農林水産省は日本の農林水産業を良くしただろうか。文部科学省は日本の教育を良くしただろうか。観光庁は「Go To トラベル」で混乱を招いているが、日本の観光を良くしただろうか。これら省庁の関係者でさえ、胸を張って「良くした」とはとても答えられないはずだ。
いやデジタル庁は違う、と言う人がいるかもしれない。デジタル庁のおもな目的は、政府自身のデジタル化推進だ。自分のことだから真剣にやるだろうし、国民も便利になるよ、と。
そうは思えない。理由は二つある。まず、農水省や文科省、観光庁など政府の省庁がなぜダメかを考えよう。それは本来の目的よりも、政治的なしがらみや都合を優先してしまうからだ。
農業を自由化すれば競争力が高まり、長い目でプラスなのに、選挙や利権の都合でそれができない。デジタル庁も同じように、政治的な思惑や利権で本来の目的がゆがめられたり、過大なコストがかかったりするのは目に見えている。
次に、行政のデジタル化って、国民にとって本当にプラスだろうか。役所の手続きが迅速になれば便利かもしれないが、そもそもの問題は、行政手続きが多すぎることにある。政府の仕事を断捨離し、行政手続きを大幅に減らせば、わざわざ税金を投じてデジタル化などする必要はない。
政府はデジタル政策の一環としてマイナンバーの普及を推進するそうだが、そうなるとプライバシーが脅かされる恐れもある。確定申告などしなくても、政府が勝手に銀行口座から税金や社会保険料、NHK受信料まで引き落としてくれれば、たしかに便利かもしれないが、暮らしが楽になるとはとても思えない。
いまさら言っても仕方ないかもしれないけれど、デジタル庁って、やっぱりいらない。
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