左右両翼によるユダヤ人差別(anti-Semitism)の原因は複雑だ。しかし共通するのはユダヤ人が歴史的にみて、資本主義、企業家精神、世界主義、移民の自由といった自由の重要な概念に関連付けられてきたことにある。
右翼左翼どちらにせよ、古典的自由に基づく社会秩序(social order)に大きな欠陥があると考える人々から、ユダヤ人は敵と見られやすい。ユダヤ人に対する脅威はたいてい、自由主義の基礎に対する脅威でもある。
ユダヤ人の多くは仲買人(middlemen)として働いた。生き方が遊牧民的で、世界のさまざまな地域に親しんだからだ。仲買人は昔から、経済に無知な人々に、形ある物を何も作らずに儲けていると疑われてきた。特に金融業者の場合はそれが甚だしい。
今日世界で経済ナショナリズム(economic nationalism)が台頭し、またぞろユダヤ人は勢いづく右翼の標的にされている。ユダヤ人はいつも根なし草の商人の象徴だった。移民、国際貿易、市場制度に対する反対がユダヤ人差別と結びつくのは不思議でない。
社会がユダヤ人をどう扱うかを見れば、寛容(openness)と自由の尊重の目安になる。炭鉱でカナリアを殺す有毒ガスは目に見えないが、ユダヤ人と自由主義に対する脅威は見える。自由社会の市民がその脅威を軽く見れば、ツケは自分に跳ね返る。
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