2017-03-16
レナード『自由を憎む改革者』
本当は怖い最低賃金
最低賃金は経済弱者を救うと、多くの人は思い込んでいる。もちろんそれは間違いだ。経済の原理上、最低賃金はむしろ技能や経験に乏しい非熟練労働者を市場から排除する。
本書によれば、そもそも米国で20世紀初め、左翼の政治圧力により最低賃金法が導入された際、その目的は、技能・経験に乏しい代わりに低賃金を強みに働く移民や非白人を排除し、白人労働者の賃金を高く保つことだった。排除の背後には当時流行の優生学思想があったという、背筋の凍るような事実も描かれる。以下は第9章より抜粋。(数字は位置ナンバー)
1910年代米国で経済学者たちは最低賃金について論争し、賛否は別として、次の点で意見が一致した。すなわち最低賃金規制が成功すれば、生産性の低い労働者は仕事がなくなる。非熟練労働者は雇うコストが上がると雇われなくなる。(3335)
米国の左翼進歩派知識人の多くは、最低賃金法を支持した。(移民や非白人など)生産性の低い労働者が職を失い、雇われなくなることは承知のうえである。彼ら改革者はそれを犠牲ではなく、社会への利益と考えたのである。(3356)
米国の左翼進歩派知識人は、能力の劣った者が最低賃金で仕事を失っても不都合はないと考えた。それによって他の労働者の賃金が高くなり、米国の賃金水準が守られるし、アングロサクソンの人種統合も保たれるからだ。(3359)
最低賃金は、劣った労働者を見つけ、科学的に取り扱う役目を果たすとされた。英国の社会主義者でフェビアン協会の中心人物であるウェッブ夫妻によれば、文明社会は最低賃金によって「産業上の病人」を労働力から取り除いたという。(3363)
最低賃金による隔離では不十分な場合、能力の劣った人々に避妊手術を強制せよとシカゴ大学の神学者兼社会学者ヘンダーソンは提案した。能力の優れた人々に子供をもっと多く生むよう求めるのは、不公正で非現実的だからという。(3373)
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