Marco den Ouden, Don’t Call It Creative Destruction, Call It Creative Renewal(創造的破壊ではなく、創造的刷新と呼ぼう)より抜粋。
1967年、英労働党政権(British Labour government)は鉄鋼産業を「強欲な資本家ども」の手から取り上げ、国有化した。〔1980年代に〕サッチャー首相が再民営化してようやく、鉄鋼業は国際競争に復帰した。
生産性向上と国際競争の激化で、英米の鉄鋼業はひどく衰退したものの、世界の鉄鋼生産量(worldwide production of steel)は1967年以来、3倍になった。中国のシェアは2.8%から50.3%に拡大。米国の生産量は31.4%、英国は55.3%それぞれ減った。
各国鉄鋼業の盛衰は経済学者シュンペーター(Joseph Schumpeter)が名付けた「創造的破壊」という現象をくっきりと映し出す。シュンペーターの選んだ言葉は惜しまれる。「破壊」は否定的な意味合いが強く、富の創造という概念にふさわしくない。
酸素炉(oxygen furnace)の技術革新で多くの雇用が失われたが、鉄鋼生産は増加した。貧しかった国々が鉄を盛んに生産するようになった。取るに足りなかった中国、インド、ブラジル、トルコ、メキシコなどが大生産国になった。世界の富が増えた。
悲観論にもかかわらず、技術と市場経済は富全体を増やす。さもなければ、私たちは今でも馬車に乗り、ランプで読書をし、まきを割って家を暖めていただろう。資本主義はたゆみない創造的刷新(creative renewal)である。ありがたいことだ。
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