米国がイラク戦争などで武力を使って非民主的政権を倒したのは、人道的に正しいとして擁護する意見がある。しかし戦争と人道は結局のところ相容れない。戦争によって殺されるのは非道な権力者だけではないからだ。
しかも本書に収録された論文で独立研究所のチャールズ・ペーニャ(Charles V. Peña)が指摘するように、国際法上は正当とされる、一般市民を攻撃対象としない戦争であっても事情は変わらない。以下、同論文より抜粋。(数字は位置ナンバー)
軍事力を使って人道的目的を達成しようとするのは、結局のところ逆効果である。なぜなら「戦争は人を殺す」という不変の事実を無視しているからだ。この事実は、軍隊が優れた能力で任務を果たした場合も当てはまる。(3776)
かりに米軍が完璧そのもので、誤爆や流れ弾、砲撃ミスで無辜の市民に一人の犠牲者も出さなかったとしても、戦争に勝てるかどうかはイラク軍の兵士をどれだけ殺傷するかにかかっている。(3783)
この点を人道的軍事介入の支持者はすっかり見落としている。独裁政権を倒すための「完璧」な戦争で、軍の攻撃対象を権力の源泉だけに絞ったとしても、人々は死ぬ。(3785)
死ぬのはすべて兵士だけで、武力紛争の伝統的な規範によれば「正当」な攻撃対象かもしれない。しかし兵士たちは父親であり、兄や弟であり、息子である。しかもその多くは徴兵され、自分の意志に反して兵役に服している。(3788)
米国が軍事力を使って非民主的な政権を倒すのは、偉大で道徳的な使命だと信じる人もいる。しかし当然ながら、戦争で父親や兄弟、息子を失った人々はそう考えないかもしれない。(3792)
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