"The beginning of a world war" - Emmanuel Todd [LINK]
【海外記事紹介】フランスの著名な人口学者で歴史家のエマニュエル・トッド氏による、ウクライナ戦争の現状と欧米社会の変容に関する分析をご紹介します。トッド氏は1976年にソ連の崩壊を的中させたことで知られますが、現在はアメリカ帝国の崩壊を確信しています。同氏によれば、ウクライナ戦争は実質的に西側諸国の敗北に終わっており、バイデン政権がこの敗北を隠そうとした結果、トランプ氏がその「敗北を引き受ける大統領」として再登板しました。しかし、トランプ氏が進める「MAGA(アメリカを再び偉大に)」という再工業化の試みは、技術者や熟練労働者の深刻な不足、さらには若年層の識字率低下といった国内社会の荒廃により、実現不可能な段階に達しています。アメリカは自国の弱体化を隠すため、ベネズエラやグリーンランドへの関心といった「矛先をそらす戦術」を展開していますが、現実にはロシア、中国、イランといった敵対勢力の結集を招き、世界大戦の入口に立たされているのです。
トッド氏が特に強い危機感を抱いているのが、ドイツの変貌です。かつて平和主義的だったドイツは、フリードリヒ・メルツ政権の誕生によって軍事化の道へ舵を切りました。西側メディアは「ロシアが欧州を脅かす」という虚構の物語を流布していますが、実際にはプーチン大統領に欧州征服の意図はなく、むしろドイツが危機を克服するために産業の軍事化を進め、欧州の覇権を握ろうとしていると氏は指摘します。欧州連合の本来の理想は消え去り、各国のナショナリズムが再燃する中で、ドイツは大陸最強の軍隊を持つ自己中心的な強国へと戻りつつあります。これはフランスにとっても潜在的な脅威であり、かつてド・ゴールが核武装したのはドイツから自国を守るためであったという歴史的視点を忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。
さらにトッド氏は、現代の西側諸国が「リアリティ(現実感覚)」を喪失していると分析します。アメリカが主導したウクライナでの戦争は、歴史的宿敵であるロシアに敗北したことで、ベトナムやイラクでの失敗とは比較にならないほど致命的なシステムの崩壊を露呈させました。トランプ氏がどれほど外交的な駆け引きを演じようとも、戦場での決着はすでについており、ウクライナ体制の崩壊は避けられません。我々は今、かつてのソ連崩壊時のような文明の終わりの目撃者となっていますが、当時のロシアが尊厳を持って帝国を解体させたのに対し、現在のアメリカや欧州は「見苦しい敗者」として、虚偽と軍事的な暴走に突き進んでいます。ドイツの権威主義的な体質の再浮上と、アメリカの制御不能な凋落が交差する中で、世界は想像を絶するような不確実な未来、いわばサイエンス・フィクションのような現実へと足を踏み入れているのです。
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