2018年7月27日金曜日

最低賃金上げの残酷な善意

「地獄への道は善意で舗装されている」という西洋のことわざがあります。よかれと思ってしたことが悲劇的な結果を招くという意味です。経済の分野で、最低賃金の引き上げほど、この言葉にぴったりなものはないでしょう。

最低賃金の引き上げは失業を増やします。なにも難しくはありません。ある会社で1時間に払える賃金が合計50万円で、最低賃金が時給800円のとき、雇える人数は最大625人(50万÷800)です。最低賃金が千円に引き上げられると、雇える人数は最大500人(50万÷1000)に減ります。減った分、失業が増えます。

最低賃金を上げても失業が増えたように見えないことはあります。けれどもそれは、他の条件が変わったためにそう見えないだけです。たとえば労働時間を短くすれば、最低賃金が上がっても払う賃金は増えないので、雇用を維持することができ、失業は増えません。

そうした調整ができない場合は、雇用を維持できず、失業が増えます。会社に残れる人は賃金水準が底上げされてハッピーかもしれませんが、失業した人は収入ゼロです。ひどい所得格差です。格差社会を批判する人の多くが最低賃金上げを支持するのは、不思議なことです。

残念ながら、どんなに愚かな政策でも、一定の有権者の支持があればやってしまうのが政治です。

米ワシントン州シアトル市では2015年4月以来、最低賃金を15ドル(約1670円)まで段階的に引き上げています。このほどワシントン大学の経済学者グループがまとめた報告書によれば、最低賃金が1%上がるにつれて、労働時間が3%短縮されたそうです。最低賃金引き上げは労働者にとって失うもののほうが大きいということです。

日本では日経電子版の記事にあるとおり、政府は最低賃金引き上げの中期目標として全国平均時給千円を掲げています。最低賃金引き上げが日本経済にプラスというなら、千円などとケチなことをいわず、いっそ5千円、いや1万円以上に上げればよいのです。国民の大半は失業し、無知な善意の残酷さにようやく気づくことでしょう。(2017/07/27

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