2017-05-31

世界はチェス盤、人間は駒?

米国がアフガニスタンでイスラム原理主義の反乱兵士(ムジャヒディン)を資金支援し始めたのは、1979年12月のソ連侵攻後だと思われている。しかし実際には、侵攻前から始めていた。それはソ連の軍事的報復を誘うためのものだった。

1988年、ブレジンスキー元米大統領補佐官は「イスラム過激派を支援し、将来のテロリストに武器と助言を与えたことを後悔しているか」と質問され、こう答えた。「タリバンとソ連帝国の崩壊と、どちらが世界の歴史にとって重要かね」
Neil Clark, World in flames - the deadly legacy of Cold War warrior Brzezinski (2017.5.29)

2017-05-30

反戦リベラルの凋落

平和運動の党派性は21世紀に入りさらに強まっている。左翼は共和党のブッシュ大統領(子)のイラク侵攻を真剣に阻止しようとしたのに、民主党のオバマ大統領がアフガニスタンへの軍事介入を拡大し、NATOにリビアのカダフィを倒させたとき、反応は大きく違った。

民主党のサンダース上院議員は左翼の反戦運動に引導を渡したかもしれない。トランプ氏が大統領選に勝利した数日後、同議員はニューヨーク・タイムズ紙で政策課題を述べた。驚いたことに、そこでは外交政策について一言も触れていなかった。
Ted Galen Carpenter, The Demise of Anti-War Liberals? (2016.11.18)

2017-05-28

戦争は道徳的行為か

政治と道徳を峻別できない政治家や言論人は、戦争は崇高で道徳的な行為であると主張する。しかし人間の行為が道徳的であるためには、それが自由意志に基づくものでなければならない。戦争が政治権力によって強制されたものである以上、それを道徳的と呼ぶことはできない。

ドイツ出身の作家レマルクは、戦争を道徳の名で飾り立てる嘘を憎んだ。今年が開戦百周年にあたる第一次世界大戦への出征経験に基づく小説『西部戦線異状なし』(秦豊吉訳、新潮文庫)で、そうした欺瞞を糾弾している。

主人公ボイメルを含む学生たちに出征を志願させたのは、カントレックという教師である。この教師は体操の時間に学生らに長々と講演を聴かせた後、クラスを引率して徴兵区司令官の下へ連れて行き、「君達もいっしょに出るだろうな」と促す。ベームという肥った学生だけは出る意志がないと躊躇するが、しまいには口説き落とされる。

「なにもこの男ばかりではない、もっと多くの男がベームと同じ考えだったろうが、誰も思いきって、自分だけ除け者になることはできなかった」とボイメルは振り返る。皮肉なことに、ベームは仲間のなかで最初に戦死する。

それでも初めは若い兵士たちも、戦争の大義を説く大人たちの言葉を信用していた。けれども「最初の激烈な砲火をくぐると、たちまち僕らはいかに誤っているかに気がついた」とボイメルは語る。「その砲火の下に、僕らの教えてもらった世界観は、見事に崩れてしまったのである」。若い兵士らは戦場に踏みとどまるが、安全地帯で戦争の正義を説く口舌の徒への不信感は拭いがたいものとなる。

たとえばある兵士がボイメルに問いかける。「おれたちはここにこうしているだろう、おれたちの国を護ろうってんで。ところがあっちじゃあ、またフランス人が、自分たちの国を護ろうってやってるんだ。一たいどっちが正しいんだ」。ボイメルが「どっちもだろう」と答えると、兵士は反問する。「だがドイツの豪え学者だの坊さんだの新聞だのの言ってるところじゃ、おれたちばかりが正しいんだっていうじゃねえか。〔略〕だがフランスの豪え学者だの牧師だの新聞なんかだって、やっぱり自分たちばっかりが正しいんだって、頑張ってるだろう。さあそこはどうしてくれる」

真の自衛であれば、人々は政府から強制されるまでもなく、戦おうとするだろう。しかし何のためだかわからない戦争にためらわず参加しようとする者はいない。政治家や言論人が戦争は道徳的な行為であると声高に叫ぶのは、そのようなときである。史上初の世界大戦から一世紀を経た今も、この欺瞞はなくなる気配がない。

(2014年7月、「時事評論石川」に「騎士」名義で寄稿)

2017-05-21

政府には向かない仕事

国鉄がJRに、電電公社がNTTにそれぞれ民営化され三十年近くが経とうとしている。民営化の際には左翼勢力中心に反対意見もあったが、今では誰も国営に戻そうなどと言う者はいない。サービスが格段に向上し、収支も改善したからである。逆に言えば、鉄道、通信は政府には向かない仕事だったのである。しかし政府に向きそうにない仕事は他にもある。たとえば国防である。

藤井非三四『陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人』(集英社新書)は、戦前の陸軍、海軍が国防という任務を果たすうえでいかに欠陥を抱えた組織だったかを、多くの具体例を挙げて明らかにする。

たとえば人事。平時はもちろん、戦時になっても年功序列、学校の成績を重んじ、信賞必罰がなされない。海軍で主戦力となった空母機動部隊の司令長官には、航空に暗い南雲忠一ではなく、航空育ちで積極果敢な山口多聞を起用すべきだったと今も語られる。しかし「それはまったく無理な話だ」。なぜなら「南雲は海軍兵学校三十六期、山口は四十期、四期も若い者を後任として補職することは、制度的にあり得ないし、当時はそう発想すること自体、妄想として片付けられた」からである。

たとえば組織。陸海軍の連携がとれていなかったことは有名である。陸軍の輸送船団の護衛には海軍が当たったが、どちらの指揮官が全体の指揮権を握るかあいまいで、情報の共有も不十分だった。その結果招いた「信じられないような椿事」の一つが、バタビア沖海戦での同士討ちである。味方である海軍の魚雷誤射により陸軍の輸送船団四隻が沈没し、陸軍司令官の今村均中将が海中に投げ出され三時間漂流した。「統一指揮の下に行動すれば、情報を共有することができて、錯誤が避けられる」はずだったと藤井は指摘する。

これらの欠陥には、程度の差はあれ、外国にも共通なものが少なくない。たとえば陸軍と海軍の反目は日本に限らない。

民間企業でも、硬直した人事や官僚的な組織など政府の軍隊と似た欠陥が生じる場合はある。しかし政府の軍隊と決定的に異なるのは、そのような欠陥を克服できない企業は、満足できるサービスを提供できずに顧客から見放される点である。政府の場合、どれほど低劣なサービスでも、顧客である国民から見放される気遣いはなく、殿様商売に胡座をかいていられる。

近代国家が成立する以前のヨーロッパでは、国防のかなりの部分は傭兵や私掠船といった民間武力集団によって担われた。日本の武士も古くは傭兵的性格が濃かった。国防は政府にしかできないという考えは、かつて国鉄や電電公社の民営化に反対した左翼の主張と同じく、誤った思い込みにすぎない。

(2014年6月、「時事評論石川」に「騎士」名義で寄稿)

2017-05-20

蔵研也『18歳から考える経済と社会の見方』


イノベーションを妨げる日本

保守やリベラルの言論人は、貧困問題を嘆く。それでは生活水準を高め、貧困をなくすにはどうしたらいいか。経済学者の著者は、イノベーションが生活水準の向上を可能にすると明快に説く。

多くの言論人は、市場経済に対する規制や「弱者」の保護を支持する。しかしそれらはイノベーションを妨げ、むしろ貧困層を不幸にする。本書がおもな読者として想定する若者に限らず、経済学の正しい知識を知ることによって、おためごかしの議論に惑わされないようにしたい。以下、第5講より抜粋。

バブル後の日本の低成長の一番の問題は、政府による規制のあまりの多さ、複雑さのせいです。政府の規制はあらゆる分野のイノベーションを窒息させ、本来なら可能な経済成長を禁じています。(p.109)

誤った投資の維持や、あるいは既存の産業構造の維持をすることでは、私たちの生活は豊かになりません。シュンペーターの言葉を借りるなら、イノベーションを伴う経済成長には、既存産業の「創造的破壊」が必要なのです。(p.114)

ケインズ政策によって、不況期以前の産業構造を維持し続け、同時に完全雇用を実現しても、それは…むしろ、それ以前の消費・生産構造を頑なに維持する力になり、それ以降の産業振興を阻害していることでしょう。(p.115)

二〇一五年の企業決算を見ると、上位に入っているのはドコモやKDDI、ソフトバンクなどといった、政府から電波利権を与えられた権益産業です。…三大メガバンクの銀行業にしても、許認可制度によって完全に保護されています。(p.116)

日本の政策は既存の特定職種の保護であって、労働者個人の保護ではありません。転職リスクの高さが、日本の名門企業の就活人気を数十年にわたって維持し続け、日本の成長率をヨーロッパの半分にしているのです。(p.116)

2017-05-18

資本主義とバフェット氏の誤解

次より抜粋。
Tim Worstall, What Warren Buffett Gets Wrong about Capitalism
(資本主義に関するバフェット氏の間違い)

ウォーレン・バフェット氏は、投資会社3Gキャピタルと共同で行った米食品大手クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)の買収が解雇、失業、合理化につながったことに言及し、それは単に資本主義のやり方だと述べた。しかしバフェット氏は間違っている。

人減らしは資本主義特有の方法ではない。あらゆる経済を機能させる方法である。共産主義、社会主義、社会民主主義、資本主義のいずれであっても、経済は生産過程への投入量(inputs to a process)を節約する。それこそが人々を豊かにする。

バフェット氏が続けて述べた、「1人当たりの生産量(output per capita)が増えると人々の生活はより良くなる」という主張は正しい。しかしそれも資本主義に限った話ではない。

人間の労働は希少な資源(scarce resource)である。それを経済的に使用することが、人々を豊かにする。もし100人で100個の製品を作っていたら、生産性を上げて100人で200個作るようにすれば、誰もが1人につき1個の製品分、豊かになる。

労働の節約こそが文明(civilization)を可能にする。これは資本主義に限った話ではない。あらゆる経済制度は、生産への投入量を減らすため絶えず努力する。 労働の節約によって既存の製品や新しい製品の生産が増え、人々は豊かになる。

2017-05-17

身代金ウイルスの責任者

次より抜粋。
Jeffrey A. Tucker, Culpability for this Ransomware Belongs to the NSA
(身代金ウイルスの責任は米国家安全保障局にある)

大規模サイバー攻撃に関し、あまり議論されていない点がある。攻撃ソフトを作り出したのは誰か。ソフトの出所はどこか。どのように漏れたのか。そう、責任(culpability)は米国家安全保障局(NSA)にある。

国民をサイバー攻撃から守ると言う政府自身が、ウイルスを作り、それを犯罪者にまんまと盗まれてしまったのである。これは国際関係上、大問題だ。大量破壊兵器(weapon of mass destruction)を作り、うかつにも犯罪者に入手を許したのと同じだ。

もちろん大量破壊兵器のようなウイルスを使った連中は、悪質だ。しかしそもそもウイルスを作り、それを漏らしてしまった官僚には、一義的な責任(primary responsibility)がある。

NSAがウイルスを開発したのは、敵国のネットワーク・システムに対して使用するためで、その保護に失敗した。マイクロソフト(Microsoft)の社長が今回の出来事に憤り、対策を求めたのも当然である。

これがもし民間企業(private company)の責任なら、株価はゼロ近くまで暴落し、政府はサイバー攻撃の責任を厳しく問うだろう。誰かが牢屋にぶち込まれるかもしれない。でもNSA失態なら? きっと予算が増額されるだろう。

2017-05-16

危険な思想と言論の自由

次より抜粋。
Andrew Syrios, Is Communist Speech Free Speech?
(共産主義者の言論は自由であるべきか)

ディーン米バーモント州元知事が、国境の壁を支持する保守派コラムニスト、アン・コールター氏(Ann Coulter)の講演に関し「ヘイトスピーチに言論の自由はない」と発言した。しかし現実に大量虐殺につながる主張は、むしろ共産主義者たちのものだ。

5月1日の共産主義犠牲者記念日(メーデーとも呼ばれる)に、パリで「抗議者」と称する暴徒が破壊と暴力の限りを尽くした。いつものゲバラのTシャツだけでなく、なんとスターリン(Stalin)の顔の付いた旗を掲げる連中もいた。

反ファシズム共産主義者(Antifa communists)は、ファシストとみなす相手に暴力を振るう。女性に催涙スプレーを浴びせ、男性をバイクの鍵で殴る。どうやらファシストとは共産主義者以外の人間のことらしい。実際、「リベラルも標的だ」と公言している。

かつて共産主義テロリストは多くの人を殺害したが、権力を握った共産主義政府とは比較にならない。スターリン、毛沢東(Mao)、ポル・ポト、レーニン、カストロ、金正日、金日成、チャウシェスク、チトー。ざっと1億人が犠牲になった。

ここで厳しい質問をしなければならない。共産主義者やその同調者に、彼らの危険な思想(dangerous ideas)を広める自由を認めるべきだろうか。「アカ」に血まみれのたわごとを説く場を与えるべきだろうか。共産主義者の言論は自由であるべきだろうか。

2017-05-15

FBIの脅威

次より抜粋。
James Bovard, Dethrone the FBI, Not Just Comey
(コミー長官だけでなく、FBIを権力の座から降ろせ)

J・エドガー・フーバー(J. Edgar Hoover)は、1924年から死ぬ1972年までFBI長官を務め、政府を脅かすほどの機関に育てた。トルーマン大統領は1945年にこう書いた。「ゲシュタポや秘密警察はいらない。FBIはその方向に向かっている」

FBIは1956年から1971年まで、COINTELPRO(反諜報プログラム)で暴力集団間の抗争を誘い、無実の人々を政府の情報提供者(government informants)として中傷し、左翼、黒人、共産主義、人種差別主義、反戦などの組織を潰そうとした。

1993年4月19日、FBIはテキサス州ウェーコ近郊のブランチ・ダビディアン(Branch Davidians)教団本部に装甲車で突入する。化学兵器禁止条約で使用を禁止されているCSガスを発射後、火災が発生し、子供を含む80人の男女が死亡した。

9/11テロの前、FBIは国内航空訓練(domestic aviation training)を受けた不審な外国人の洗い出しに失敗した。議会はコンピューターの更新に17億ドルもの予算をつけたが、捜査官の多くは古い機械のままで、ウェブ検索や写真のメール送信ができなかった。

もしトランプ大統領が政権への犯罪捜査をやめさせるためにコミー長官を解任したのなら、弾劾されて当然の罪だ。そうでなければ、FBIを台座から外し、本来あるべき場所に置く絶好の機会となる。その場所とは、法の下(under the law)である。

2017-05-14

韓国経済を笑う愚

韓国の悪口を書いた本はよく売れるらしく、さまざまな「嫌韓」「反韓」本が次々と出る。その大半は韓国以上のナショナリズムに盲いており読むに耐えない。最近多いのは韓国経済が弱体だといって嘲笑してみせるもので、これが他の嫌韓本に劣らずお粗末である。

経済評論家を名乗る三橋貴明は『愚韓新論』(飛鳥新社)で、「韓国経済にとって日本は必須だが、日本にとってはまったくそうではない」と韓国を見下す。なぜなら「韓国経済は日本からの資本財輸入が止まると、生産設備の多くが動かなくなる。逆に、日本は韓国からの輸入が止まっても、特に何の支障もない」からだという。

三橋は、韓国が輸入している日本製品のうち「代替のきかないもの」の例として、高純度のネオン、クリプトン、キセノンといった「レアガス」を挙げる。レアガスは半導体やプラズマディスプレイなど先端産業分野に欠かせない材料だが、「韓国にはまったく生産能力がない」。したがって竹島問題などで日韓関係がさらに悪化し日本が対韓禁輸に踏み切れば、韓国は「製造ラインが止まってしまう」と三橋は嬉しそうに述べる。

しかしこれはおかしい。そもそもレアガス販売で高い世界シェアを握るのは、欧米の化学大手である。今は値段が安いなどの理由で日本製レアガスを買っている韓国企業も、日本からの輸入がストップすれば、欧米のどこからか購入するだけの話である。他の資本財にしても同様で、日本企業しか作れないものなどない。禁輸などすれば、損失を受けるのは販売先を失う日本企業である。

また三橋はさらに妄想を逞しくして、もしこうして日本から「代替のきかない資本財」の輸入が止まれば、韓国経済は壊滅的な打撃を受け、失業率が三十パーセントを上回っても不思議でないと脅かす。

だがこれもこけ威しの議論である。労働には需要と供給の法則が働く。もし労働の価格、すなわち賃金が十分下がれば失業は増えないし、かりに増えても一時的である。

ただしこの法則が働くには、賃金の下落が政府の規制で妨げられないことが必要だが、三橋自身が書いているとおり、現在の韓国では賃金水準が下落している。賃金構造がこのように柔軟であれば、経済環境が悪化しても、失業が大幅に増えることはないだろう。

むしろ日本のように、政府が企業に賃下げを許さない圧力をかければ、企業は人件費削減を新卒採用の凍結や「派遣切り」によって行わざるをえず、失業者を増やすことになる。三橋は韓国企業が賃金を切り下げ、国民を貧困化させていると難ずるが、失業すればもらえる賃金はゼロである。労働者にとってどちらが望ましいか、言うまでもない。

(2014年5月、「時事評論石川」に「騎士」名義で寄稿)

2017-05-13

愛宕松男・寺田隆信『モンゴルと大明帝国』


通貨発行権の誘惑

政府に通貨発行権を与えるのは、浪費家にクレジットカードを渡すようなものだ。その運命は破産である。政府内に通貨の濫発を戒める人物が一部いたとしても、労せずして通貨を入手できる誘惑には結局勝てない。

勇猛なモンゴル帝国が中国に打ち立てた元朝も、例外ではなかった。通貨発行益(シニョレッジ)に味をしめて交鈔と呼ばれる紙幣を大量に発行するようになり、最後は財政が破綻し、滅亡に至る。以下、抜粋。

「漢地大総督」フビライの主宰する政権が漢地に拠って独立し、元朝が実質的に誕生した年、すなわち中統元年(一二六〇)に、政府は、「諸路通行中統元宝交鈔」という法定紙幣七万三千錠を発行した。略して「中統鈔」といわれる…。(p.173)

民間における金銀の自由取引を禁じ、ただ官庫においてだけこれを許すという法令の下に、金銀と交鈔との兌換権を政府が握り、兌換にともなう一定の利鞘を独占できた。(p.178)

ついに幣価下落の対策を講ぜざるをえなくなった。…五分の一までに低下した中統鈔の実質を認めたうえで、その五倍の価値を〔新紙幣の〕至元鈔に賦与し…もう一度振り出しにもどった形で再出発をしようというのであった。(p.180)

政府は塩価(四百斤単位)を…値上げするほか、茶課・商税といった現金収入の項目にも増額を命じ、かたわら、百官の俸給を至元鈔給付に切り換え、至元鈔本位の態勢を整えて再出発に臨んだのである。(p.181)

元末の動乱が河南から江南に蔓延するのは順帝の中期以降であるが、この段階では、ひとり幣制だけではなく、元朝の制度一般が硬直し瓦解する。…財政の崩壊が元朝滅亡の致命傷となるのである。(p.182)

2017-05-12

影の官僚組織、ひそかに膨張

次より抜粋。
John J. DiIulio, Jr., 10 questions and answers about America’s “Big Government”
(米国の「大きな政府」に関する10の質問と回答)

1960年以降、米国では国家支出が5倍になり、7省庁を新設し、事業と規制を着実に増やしたにもかかわらず、連邦政府の職員数は横ばい(zero growth)だ。これは(1)州と自治体(2)営利企業(3)非営利団体--に肩代わりさせたからである。

1960年以来、連邦政府の常勤職員は約200万人前後で推移したが、州・地方公務員(state and local government employees)の総数は3倍になり1800万人を超えた。これを促進したのは連邦政府だ。2010年代初めまで、助成金はインフレ調整後で10倍以上に増えた。

営利企業との契約は、連邦政府のあらゆる省庁で利用されている。正確な数字の入手は困難だが、推定によれば、契約企業の従業員(federal contract employees)総数は1990年の約500万人から2013年には約750万人に増加している。

1977年から2012年にかけて、非課税・独立セクターの雇用が1200万人以上に倍増した。内国歳入庁(米国税庁)に届け出をする一部の非営利団体(nonprofit organizations)だけで、収入は年間2兆ドル以上に達している。

連邦政府の事業運営のため支払いを受けた人々(連邦政府職員、州・地方の事実上の連邦職員、政府契約企業の従業員、非営利団体職員)を実質的な連邦官僚(real federal bureaucracy)とみなすと、その総数は55年半の間に少なくとも3.5倍になったとみられる。

2017-05-11

法の支配の神話

次より抜粋。
Robert Taylor, The Myth of the Rule of Law
(法の支配の神話)

どんなに強力な国家も、強引な力(brute force)だけで支配することはできない。イデオロギーに頼らなければならない。暴力は国家のあらゆる行動の背後にあるが、国民を最も効率よく収奪するには、それが国民自身のためになると信じさせればよい。

政府が強制する法の支配とは、神話にすぎない。「人治でなく法治による政府」など存在しない。法令はつねにそれを解釈する人々の偏見と計略(biases and agendas)に左右され、社会に独占的権力を及ぼす人々によって強制される。

国民は法律を中立・客観的な仲裁人とみなすと、国家権力とその収奪・寄生を進んで支持する。予測不能な無政府状態という怖ろしい代替案より、客観性という心地よい妄想(comfortable delusion)と、予測可能な法律の必要性を進んで受け入れる。

中央集権国家以前の私法制度(private law system)の下では、公衆に受け入れられなかったり行き過ぎとみなされたりした悪い裁定は、社会に強制されなかった。この仕組みは、私有財産保護に有益な法律を広め、悪法を駆逐することを可能にした。

しかし国家制度の下では、悪法の修正ははるかに難しい。法律をそのままにしておく政治的動機がある。裁判官、議会、警察がすべて国家機関(state apparatus)の一部なら、政府権力の範囲を広く、個人の自由の範囲を狭く解釈する傾向が強まるだろう。

2017-05-10

フランス革命と重税

次より抜粋。
Eileen L. Wittig, Dickens Knew Taxes Started the French Revolution
(ディケンズは税金がフランス革命を起こすと知っていた)

フランス革命の背景には政治、宗教、羨望、その他多くの要因があった。しかし火を付けたのはもっと原始的なことである。飢え(hunger)だ。飢えの原因は飢饉ではなく、財政である。市民のお金が宮殿の建造と維持に使われてしまったのだ。

ディケンズ(Dickens)は小説『二都物語』で、革命のほんの数年前のフランスについてこう書いた。「貧困の原因は物不足ではない。政府、教会、領主などに支払う税だった。地方税、国税、あちこちで税を払わなければならなかった」

私たちの多くは重税で餓死するほどではないが、稼ぐよりはるかに少ない資本(capital)で生きている。税金を払っているのに道路には穴があき、街灯はお粗末だ。むしろ道路は税率の高い州ほど貧弱で、税率の低い州ほど良好である。

収入(earnings)の75%とか60%とかではなく、100%、せめて95%が手元に残れば、何ができるか、どれだけ投資や寄付ができるか、考えてみてほしい。18世紀フランスの人々が収入を取っておけたら、飢えずに済んだだろう。

私たちがフランスの革命家たちのように税金についてはっきり理解すれば、減税や基礎控除額の引き上げ、そして理想的には税金の廃止をもっと強く主張するようになるだろう。もちろん平和的な手段によってである。ギロチン(Guillotines)はいらない。

2017-05-09

欧州ポピュリズムの正体

次より抜粋。
Iain Murray, European Populism Is Really Nationalist Conservatism
(欧州のポピュリズムの正体は国家主義的保守主義)

欧州におけるポピュリズムの台頭は、実際には、ハイエク(F.A. Hayek)が1960年のエッセイ「なぜ私は保守主義者でないのか」で警告したような、国家主義的保守主義の復活である。

欧州の保守主義は、米国の保守主義とは性質が異なる。米国では守られるべき伝統は自由である(英国も程度は違うが同じことが言える)。大陸欧州では、伝統とは暗黒の国家主義(darker form of nationalism)である。

国家主義的保守主義には、ハイエクが指摘した欠点がある。「保守主義はしばしば社会主義と妥協し、そのお株を奪ってきた」。欧州の保守主義は公然と大きな政府(big government)を主張しており、それが自身の崩壊につながるだろう。

欧州の保守派が政府権力を掌握し、経済の力(economic forces)を無視するにつれ、各国が直面する問題は収まるよりむしろ激化するだろう。

国家主義(少なくとも地域主義)と調和するようなハイエク的自由主義が、今日の欧州政治における唯一の希望だろう。しかし欧州の自由主義諸国指導者たち(liberal leaders)の関心が問題解決より英国の懲罰にあるようでは、光明は見えない。

2017-05-08

グローバル化が地域文化を磨く

次より抜粋。
Frédéric Jollien, Is Culture Really Threatened by the Free Market?
(文化は自由な市場によって本当に脅かされているか)

自由な市場は、文化を均質的な塊(homogenized mass)にしてなどいない。それどころか、地域文化の大幅な改善をもたらした。

イヌイットの石の彫刻が盛んになったのは20世紀の終わりだ。イタリア、ブラジル、カナダ・ケベック州との貿易のおかげで、彫りやすいステアタイト(steatite)を利用できるようになった。

中華料理やケバブのレストランは世界中どこでも繁盛し、アイリッシュパブ(Irish pubs)では伝統音楽の演奏が鳴り響き、アフリカやラテンのダンス教室は多くの国で成功を収めている。自由な市場は世界主義につながった。

一方、市民は地方の独自性を求めている。この傾向は北アイルランド、ブルターニュ、バイエルン(Bayern)など愛郷心が強い土地で特に顕著だ。独自性の肯定はグローバル化や世界主義に反するものではなく、その一部である。

逆説的だが、人々が地域文化に多くを投資し、それを大きく改善したのはグローバル化のおかげである。異文化どうしのかかわりは、文化を豊かさにする中核基盤であり、自由だけがそれに対して真の誘因(genuine incentives)となる。

2017-05-07

戦時下日本の愚劣と傲慢

戦争を論じる保守主義者は、将兵の雄々しさばかりを強調する。しかし戦争において人間は雄々しさと同じく、いやそれ以上に、度し難いほどの愚かしさや傲りもさらけだす。

早川タダノリ『神国日本のトンデモ決戦生活』(ちくま文庫)は大東亜戦争中に刊行された雑誌やパンフレットをもとに、銃後の日本人、とりわけ政府や軍関係者、それに迎合する言論人らの愚劣きわまる言動を、ユーモアを交え、しかし呵責なく批判する。

文部省の教学錬成所で錬成官を務める医学博士の杉靖三郎は、「日本に栄養不足絶対になし」という珍妙な文章を「婦人倶楽部」に書いた。杉曰く、従来の栄養学は肉食偏重の西洋型で、日本栄養学の見地から見ればどんな粗食・少食にも日本人は耐えられる。「足りないのは実は食糧でなくて……食事に対する工夫です」。精神力で空腹を克服しろというわけである。

杉は戦後も大活躍で、医学専門書のほか、『エレガントなSEX』『写真で見る性生活のテクニック』といった本を量産し、九十六歳まで生きた。

雑誌「主婦之友」は空襲下での子育てについて、母親たちにこんな説教を垂れた。「子供を被害から逃れさすことばかりが防空ではありません。戦場に育つた子供でなければ経験し得ない、生々しい戦いの体験を、将来国の強兵として戦場に立つときの基礎に、立派に活かしてゆかうではありませんか」。いつ命を落とすかわからない空襲を、子供の精神鍛錬に活用しろとは恐れ入る。

同誌は十九年十二月号で、全体の半分近い頁に「アメリカ人をぶち殺せ!」といった扇動的なスローガンを刷り込んだ。この号は古書店でも入手が難しく、敗戦時に主婦之友社が戦犯追及から逃れるため回収・焼却したのではないかとみられている。

帝国在郷軍人会本部が刊行した『軍国家庭読本』は最終章を、戦争未亡人の貞操をどう守るかに費やした。女は「つまらぬ劣情」に左右されるものと決めつけ、そのうえで「理想としては、一生独身生活を送るのが至当」「親兄弟や社会が、何等要求する事がないに拘はらず、その身の勝手や、情欲の為に、再婚するような事は許すべからざる罪悪」などと非人間的な要求を押しつける。

極めつけは右翼の巨魁、頭山満である。昭和十九年七月、サイパン島で約三千名の日本軍が玉砕、残された日本人住民も断崖から身を投じたと聞き、「愉快なことぢや」と喜んだ。「忠に死し孝に死するは臣子の大経」だからである。頭山は同年十月、御殿場の山荘にて九十歳で大往生を遂げる。

こうした愚劣や傲慢から目を逸らした、建前だけの戦争論など無意味である。

(2014年4月、「時事評論石川」に「騎士」名義で寄稿)

2017-05-06

政府信仰という宗教(スペンサー)

次より抜粋。
Herbert Spencer on the State’s cultivation of “the religion of enmity” to justify its actions (1884)
(英社会学者ハーバート・スペンサーいわく、政府はみずからの行為を正当化するため「憎しみの宗教」を育てる)

社会進化(social evolution)の長い段階を通じ、あらゆる物事の運営上、強力で広範囲にわたる政府権力が必要とされた。それに応じて政府権力への信頼と服従が伴った。大規模な事業は政府の行動によってのみ達成された。

〔政府権力による〕強制的な協力はほんの少しずつ、〔市場経済による〕自発的な協力(voluntary cooperation)に置き換わっていった。それに応じて、政府の能力・権威に対する信頼も弱まっていった。

政府の能力・権威に対する信頼の維持が必要とされるのは、おもに戦争に対する適応力(fitness for war)を保つためである。

政府はみずからに対する信頼と服従のおかげで、攻撃または防御の際、社会のあらゆる力を使うことができる。だから政府への信頼と服従を正当化する政治理論(political theory)はなくならない。

政府に対する信頼と服従という感情や概念は、絶えず平和を脅かす。政府の権威に対する信念は、戦争のため政府に国民への強制力(coercive power)を与えるうえで欠かせない。同時にその信念は、戦争以外の目的にも強制力を与えるのだ。

2017-05-05

自然発生的な秩序

次より抜粋。
Barry Brownstein, The Mountain Paths That No One Planned
(誰も計画しない山道)

雪山で出会った若い男女は、踏み固められた山道のすばらしい状態は、人間が意図的に設計したものに違いないと確信していた。山には雪で固められた道(snow-packed trails)が数百マイルも続いているが、誰かが計画して作ったものではない。

踏み固められた山道は人間の行動の産物であり、人間の設計(human design)の産物ではない。

私の教える経済学部の学生で、現代の高い生活水準(standard of living)をもたらしたのは何か、不思議に思う者はほとんどいない。わずか数百年前、厳しい貧困に苦しんだ大多数の人々にとっては想像を絶するほどの〔豊かな〕暮らしに違いない。

豊かな暮らしをもたらすのは、人間の計画されない行動(unplanned human actions)だが、それはほとんど目に見えない。メディアや学校ではめったに議論されないし、個人の理解を超えている。

経済学者ハイエクによれば、秩序や進歩は自然発生的な現象(spontaneous phenomenon)として生じうるのであって、人間やその集団によって制御されない。人間の設計の結果ではなく、多くの人々の行動の産物として、秩序ある構造がもたらされるのである。

2017-05-04

賃金格差は女性差別?

次より抜粋。
Brittany Hunter, What the Wage Equality Crusaders Don't Understand
(男女同一賃金論者が理解していないこと)

男女同一賃金論者にとって残念なことに、データを詳しく調べると、そこで見つかるのは必ずしも賃金格差ではなく、より正しくは「選好」格差( “preference” gap)というべきものだ。それが存在する理由は性別ではなく、個人的な選択である。

経済学者クラウディア・ゴールディン(Claudia Goldin)によれば、キャリア開発の初期段階では、同じ分野で働く男女の間に実質的な賃金格差はない。 ほぼ同じ履歴と知性の男女の同僚を比較したところ、賃金格差は1%未満しかなかった。

しかし時間が経つにつれ、働く女性の一部が結婚して子供を持つと、賃金格差は最終的に広がった。女性が子供の世話(caregiving)に多くの責任を負うよう決めると、高い賃金を得る機会よりも融通のきく勤務形態を重視するようになった。 

子供の世話に責任を持つ女性の多くは、より多くの責任と勤務時間を意味する昇進を求める代わりに、より低い賃金を受け入れることにした。仕事場の外で、より多くの時間を過ごせるという利点(benefit)があるからだ。

これは女性社員の雇い主が、女性であることを理由に価値の低い仕事を割り当てたことを意味しない。女性社員の多くにとって、融通のきく勤務形態は高い給与や責任よりも価値があることを示す。それは選択と人間の行動(human action)の現れである。

2017-05-03

イラク戦争という愚行

次より抜粋。
Neil Clark, Saddam Hussein at 80: Iraq without its ‘liberation’
(生きていれば80歳のサダム・フセイン)

2003年3月20日、米国とその同盟国はイラクが大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)を所有していると主張し、同国に侵攻した。それ以来、100万人以上のイラク人が命を失っている。米国と同盟国の兵士も4800人以上が死亡した。

反対派の予測どおり、戦争は大規模な難民危機(refugee crisis)を引き起こした。国連によれば、2015年末までに避難したイラク人は460万人に達した。それには厳しい迫害にあったキリスト教徒も含まれる。キリスト教徒の80%が逃避したという。

開戦から14年後、米軍はまだイラクにいて、「イスラム国」から都市モスルを「解放」しようとしている。だが「イスラム国」は以前の「解放」がなければ存在しなかった。それは戦争を先導した一人、ブレア元英首相(Tony Blair)すら一部認める。

フセイン政権最後の年である2002年、イラクは報道の自由指数(Press Freedom Index)で世界130位だったが、今は158位。ジャーナリストにとって世界で最も危険な国の1つだ。ジャーナリストの殺害は処罰されないままである。

そうそう、開戦の前提とされた大量破壊兵器だが、どこからも出てこなかった。葉巻をくゆらせ、映画「サウンド・オブ・ミュージック(Sound of Music)」を愛した独裁者フセインとイラク。14年前、ほうっておいたほうがましではなかっただろうか。

2017-05-02

圧力だけでは解決できない

次より抜粋。
Nile Bowie, Trump’s foreign policy after 100 days: Tweeting with bombs?
(トランプ、就任100日後の外交政策)

トランプ米大統領は、ホワイトハウスにわざわざ全上院議員を招いて対北朝鮮政策(North Korea policy)に関し説明した。だが最大の圧力と関与を伴うその政策は、過去の政権が示そうとしなかった柔軟性がない限り、目標を達することはできない。

第一に、北朝鮮の世界市場への関与は非常に限られ、経済制裁(economic sanctions)の効果は期待できない。同国への制裁はすでに世界一厳しく、それでもなお穏やかな経済成長を遂げている。上層部は折に触れ、制裁には準備できているとほのめかしてきた。

第二に、北朝鮮の核開発を平和裏にやめさせる交渉の実現可能性はきわめて低い。北朝鮮はイラクのフセイン(Saddam Hussein)、リビアのカダフィ(Muammar Gaddafi)の過ちに学び、核抑止力を放棄しないだろう。核兵器は安全保障と国威の象徴の両方で重要な役割を果たす。

オバマ政権(Obama administration)は、非核化の約束を前提として北朝鮮と対話した。当然このやり方は失敗し、北朝鮮は核兵器の開発を進めた。トランプの関与政策が彼独特の傲慢なものだとすれば、成功はない。

北朝鮮は朝鮮戦争を正式に終結させる平和条約の締結と、侵攻の予行演習とみなす米韓共同軍事演習の一時停止と引き換えに、核開発とミサイル実験を凍結する意思を何度も表明している。見る限り、これが唯一の軟着陸(soft landing)だろう。

2017-05-01

トランプの減税案は正しい

次より抜粋。
Jeffrey A. Tucker, Trump’s Tax Plan Is Brilliant Politics and Even Better Economics
(トランプの税制改革は政治的にすばらしく、経済的にはさらに良い)

トランプ大統領の税制改革案は良い考えに基づく。経済成長をもたらすのは民間部門(private sector)であり、民間投資である。資本の所有者がうまく利益をあげたら、それを再投資できなければならない。すると新しい雇用が生まれ、分業が広がる。

反対派は財政赤字と政府債務を持ち出すだろう。税収が減ったらどうする、と。しかし資本形成に基づく経済は静的なもの(static one)ではない。税率が引き下げられたとしても、企業の増益と事業拡大によって税収が増える可能性は大いにある。

財政赤字を減らすには一つの方法しかない。歳出カット(cut spending)だ。納税者の負担によって​​予算を均衡させるのは、経済的に愚かで、道徳的にも不健全である。政府の財政問題にかかわらず、人々が得たお金をより多く手元に残すことは正しい。

「財政赤字」という言葉が何度もおまじない(incantations)のように繰り返されるのを聞いたら、その本当の意味は、人々の正当な収入を奪い続ける口実にすぎないと知るべきである。

トランプ大統領の税制改革に反対する人々は、すでに予想された不平を言いつのっている。「金持ちのための減税」という不平だ。そう、そのとおり。そしてそれは良いことだ。金持ちの資本家は社会の恩人(benefactors)なのだから。