2020-06-30

国家権力の源泉

国家は自分の金を持たないから、自分の力も持たない。国家のあらゆる力は社会が与えたか、国家があれこれ口実をもうけて社会から奪ったかしたものだ。それ以外に国家が力を得る源泉はない。だから国家による力の掌握はすべて、社会の力の低下につながる。
Albert Jay Nock, Our Enemy, the State

国家が社会に言うには、「お前は緊急事態に対応するのに十分な力を行使しなかったり、力の使い方がまずかったりする。だからお前の力を奪い、私に合ったやり方で使わせてもらう」。このため人は、物乞いから小銭を求められると、それは国家に頼んでくれよと言いたくなる。
Albert Jay Nock, Our Enemy, the State

政党がどれほど競争しようと、結果は変わらない。それは支配権をめぐる争いであり、もたらされるのは、中央集権化、官僚主義の拡大、補助金を求める有権者への譲歩である。これは歴史が証明しているし、物の道理からしてもそうなる。
Albert Jay Nock, Our Enemy, the State

ファシズム、ボルシェビズム(ソ連共産主義)、ナチズムは一見違っても、根本の思想は一つしかない。社会の力をことごとく国家の力に変えることだ。ヒトラーやムッソリーニの神秘主義は、哲学者ヘーゲルの「国家は神聖なる理念を地上に体現している」という言葉を思わせる。
Albert Jay Nock, Our Enemy, the State

政府の経済政策は、経済を悪化させるという歴史的事実…不況期は「何もしない」が最善

今から87年前の1929年10月24日といえば、経済の歴史で最も重要な日付のひとつである。「暗黒の木曜日」と呼ばれるこの日、ニューヨーク市場で株式相場が暴落し、史上最大規模の世界恐慌(大恐慌)の始まりを告げたからだ。

一般に流布する説によれば、大恐慌発生時の米大統領フーバー(共和党、任期1929年3月〜33年3月)は自由放任主義を信じ、経済対策をやらなかったため不況を深刻にしたといわれる。


しかし、それは嘘である。これから述べるように、フーバーは政府による経済介入を積極的に行い、それが裏目に出て、不況を大恐慌に悪化させてしまったのだ。

積極的な公共投資


たとえばフーバーは公共事業に消極的だったといわれるが、それは事実に反する。むしろすばやく行動した。

フーバーは暴落翌月の11月23日、州知事全員に電報を打ち、州の公共事業計画を拡大するよう協力を求めた。知事らは協力を誓い、同24日、商務省は州と公共事業で協力するための組織を設立する。

一方、連邦政府の建造物計画に4億ドルを増額するよう議会に提案し、12月3日、商務省は公共事業計画を促進するため公共工事局を新設する。さらに船舶連盟を通じて造船への補助金を増やし、公共事業にさらに1億7500万ドルの予算増額を求めた。

翌30年6月末には、フーバーは州と市に対し、さらに公共事業を拡大し失業を解消するよう要請している。7月3日、議会はコロラド川のダム建設など9億1500万ドルもの巨額の公共事業予算を承認した。このダムはフーバーの名にちなんでフーバーダムと呼ばれる。

フーバーは政府による公共工事だけでなく、民間投資の維持・拡大も促した。29年11月、ホワイトハウスの閣議室に鉄道会社の社長らを集め、建設・改修投資の続行と拡大を要請した。これを受けて鉄道会社側は10億ドルの支出計画を発表した。これは同年に連邦政府が予算を割り当てた全プロジェクトの3分の1強に相当する大きな金額だった(『アメリカ大恐慌・上巻』<アミティ・シュレーズ著/田村勝省訳/NTT出版>)。

会計年度ごとの政府支出をみると、30年度(29年7月~30年6月)から34年度(33年7月~34年6月)まで、公共工事を含む連邦政府支出はほぼ一貫して増加している。30年度(33億ドル)から32年度(47億ドル)にかけては42%も増えた。33年度には前年度比6100万ドル(1.3%)減っているが、同年度が始まるのは32年7月1日で、すでに大恐慌に入って3年近い。そのときまでフーバーは財政支出を着実に増やしたのである。

財政収支をみると、30年度こそクーリッジ前政権から引き継いだ黒字を維持したものの、31年度は赤字に転じ、32年度には赤字額が国内総生産(GDP)の4%に達した。国内総生産が4年間で3割近く急減した影響もあるが、一方で財政赤字の絶対額も5億ドル(31年度)から27億ドル(32年度)へと5倍強に跳ね上がっており、対GDP比率を押し上げた(『学校で教えない大恐慌・ニューディール』<ロバート・マーフィー著/マーク・シェフナー他訳、大学教育出版>)。

財政赤字の対GDP比4%という数字は、減税やイラク戦争で赤字が大きく膨らんだジョージ・ブッシュ(子)時代の3.6%(2004年度)を上回る高水準である。フーバーの政策は、積極的な財政出動を唱えるケインズ主義そのものの対応だったといえる。

2020-06-29

政府が生む貧困

自由競争の下で多くのお金を稼ぐ唯一の方法は、他人を豊かにすることだ。マイクロソフト、ウォルマート、フォード、マクドナルドの創業者らはたしかに億万長者になったが、それはお客を経済的に豊かにしたからだ。人々は得をしなければお客をやめていただろう。
Walter Block, Toward a Libertarian Society

政治の世界で大金持ちになるには、民間企業のようにお客を引きつけるのではなく、増税し、その一部を懐に入れる。政治家の財産は増えるけれども、その他全員の財産は減る。福祉で貧困層に渡るのはわずかな金でしかない。結局、政府を動かすのは金持ちなのだから。
Walter Block, Toward a Libertarian Society

米国の奴隷制は黒人の家族を破壊することはできなかった。しかし福祉政策はじわじわと黒人の家族を蝕んだ。黒人の家族は白人と同じく、南北戦争後の時代にも堅固だった。だがジョンソン大統領が進めた「貧困との戦い」によって、ばらばらに壊れた。
Walter Block, Toward a Libertarian Society

政府自身が貧困を生み出している。最低賃金規制や労働組合法のせいで、貧しい若者は職を得るのが不可能ではないまでも、難しい。家賃規制のせいで手頃な住宅が少ない。関税や補助金のせいで生活必需品がどれも高くなる。
Walter Block, Toward a Libertarian Society

ノーベル経済学賞は「ノーベル賞」ではなかった!人類に貢献せず、経済的混乱の要因に

ノーベル賞の季節がやってきた。ノーベル賞といえば、いうまでもなく科学の世界で最高の栄誉とされ、受賞者はその道で最高の権威として一般の人々からも称賛を集める。

ところが全部で6部門あるノーベル賞の中で、「これは本当はノーベル賞ではない」といわれる賞があるのをご存じだろうか。おまけにその賞の対象は、文学賞や平和賞は別として、「科学とは呼べない」という批判まで聞かれるのだ。


それはノーベル経済学賞である。「ノーベル賞ではない」という意見は、別にいいがかりではなく、少なくとも形式的には完全に正しい。一番わかりやすいのは正式名称だ。他の賞の正式名称が「ノーベル物理学賞」「ノーベル化学賞」などであるのに対し、経済学賞は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」という。

スウェーデン国立銀行とは、スウェーデンの中央銀行で、日本でいえば日本銀行にあたる。他の5部門がダイナマイトの発明者アルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて創設され、1901年に始まったのに対し、経済学賞のスタートは20世紀も後半の1968年。スウェーデン国立銀行が設立300周年を記念してノーベル財団に働きかけ、創設された。だからその名が賞に付けられているわけだ。

経済学賞は、賞金の出所も他の部門とは違う。他の部門はノーベルの遺産をノーベル財団が運用して得た利益を充てるのに対し、経済学賞はスウェーデン国立銀行が拠出している。

経済学賞の受賞者選考は、物理学賞、化学賞と同じく、スウェーデン王立科学アカデミーが行う。ノーベルの遺志にない賞の新設に同アカデミーは当初あまり乗り気ではなく、ノーベルの子孫は今でも賛成していないといわれる。

2020-06-28

高まる現金廃止論は危険思想!国民の財産毀損やプライバシー侵害横行のおそれ

2月20日付本連載記事で、世界的な金融緩和策の「次の一手」として、現金が廃止されるおそれがあると述べた。その心配は的外れではなかったようだ。政治にも影響力のあるエリート経済学者が近著で、現金をなくせば税逃れや犯罪の防止、マイナス金利政策の効果強化などに役立つと主張し、現金廃止に向けた世論の喚起に動いた。

その経済学者は、同記事でも触れたケネス・ロゴフ氏。米ハーバード大学教授で、国際通貨基金(IMF)エコノミストを務めた経験もある。8月に上梓した著書の題名はずばり、『現金の呪い(The Curse of Cash)』という。ロゴフ教授は同書で、硬貨や小額紙幣を除く現金の廃止を提言する。理由は大きく2つある。


1番目は犯罪防止である。同教授によれば、世界に出回る現金の80~90%を占めるのは高額紙幣で、おもに地下経済で流通し、租税回避、犯罪、汚職に利用される。現金の使用を制限すれば、犯罪やテロをなくすことはできなくても、大きな一撃を与えることができるという。

2番目は、中央銀行によるマイナス金利政策の効果を高めることである。ロゴフ教授は、マイナス金利は総需要を一時的に高め、銀行が融資を増やすきっかけになると評価する。そのうえで、マイナス金利が十分に効果を発揮するには、現金をため込ませないようにしなければならないと主張する。

米ブルームバーグの報道によると、同教授は出版記念の会見で、自分の意見には政府関係者も賛同していると述べた。中央銀行関係者にも関心を示す人々がいる。同書のカバーにはバーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が推薦文を寄せ、「非常に興味深い、重要な書籍」と称える。

2020-06-27

お金という商品

あらゆる社会で、最も売り買いしやすい商品がしだいに交換手段として選ばれていく。交換手段として選ばれると、その利便性から需要が高まり、さらに売り買いしやすくなる。結局、1〜2種類の商品がほとんどすべての交換に使われるようになる。これをお金と呼ぶ。
Murray N. Rothbard, What Has Government Done to Our Money? Case for the 100 Percent Gold Dollar

歴史上、多くの異なる物が交換手段として使われた。植民地時代のバージニア州ではタバコ。西インド諸島では砂糖。エチオピアでは塩。古代ギリシャでは牛。スコットランドでは釘。古代エジプトでは銅。数百年かけて金と銀が自由競争でお金となり、他の商品に取って代わった。
Murray N. Rothbard, What Has Government Done to Our Money? Case for the 100 Percent Gold Dollar

自由な市場で、交換手段として利用される実績を積み上げていくこと。お金が生まれる方法はこれしかない。他の方法で生み出すことはできない。皆が突然思い立ち、役に立たない物質からお金をつくることはできないし、政府が紙切れをお金と呼べばお金になるわけでもない。
Murray N. Rothbard, What Has Government Done to Our Money? Case for the 100 Percent Gold Dollar

お金は、主に交換手段として需要される点で、他の商品とは違う。そうではあっても、お金は商品である。あらゆる商品と同じく、お金の価格(購買力)は供給と需要で決まる。人々は財やサービスを売ってお金を「買う」。その一方で、財やサービスを買ってお金を「売る」。
Murray N. Rothbard, What Has Government Done to Our Money? Case for the 100 Percent Gold Dollar

ダフ屋の合法化と隆盛は、音楽文化を必ず活性化させる…ファンに多大な恩恵

コンサートのチケットを、インターネットを通じて定価より高値で転売する個人や業者が増えるなか、日本音楽制作者連盟(音制連)などの業界団体が中心となって8月、高額転売に反対する共同声明を出し、議論を呼んでいる。

この声明に対しては、すでに経済学者やエコノミストが的確に批判している。たとえば大阪大学教授の大竹文雄氏は、業界側が「チケット転売のために、本当にチケットが欲しいファンに行き渡らない」と主張するのに対し、転売はむしろ「本当にチケットが欲しいファン」にチケットが行き渡るのに役立つと指摘する。


大竹氏は説明する。抽選制度の場合だと、抽選に外れた熱烈なファンは転売業者に高い価格を払ってでも、コンサートチケットを手に入れることで便益を受け、抽選に当たったそれほど熱烈ではないファンは転売業者にチケットを売ることで、コンサートに行くよりも便益を受ける。転売業者は両者の願いを叶える。

「アーティストにとっても、大したファンでもないのに、偶然チケットの抽選に当たった人たちがコンサート会場に交ざっているよりも、熱烈なファンでコンサート会場が埋め尽くされている方がうれしいのではないだろうか」(大竹氏)

この指摘は正しい。これに対し、熱烈なファンではない人々がライブを見てファンになる機会をつくるためにも、チケット転売は規制されるべきとの反論もあるが、もし業界側がそのような意図を持っているのであれば、もっとスマートな方法を工夫すべきだろう。チケット転売を規制し、不便を強いることがファンを大切にする態度だとは思えない。

大竹氏は転売規制の代案として、コンサートチケットのうち一定枚数を主催者が直接ネットオークションで売るよう提案する。嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、主催者みずから転売市場に乗り出すよう促す。
 
これらの案は悪くないが、ここではもっと大胆な改善策を提案したい。それは「ダフ屋」の合法化である。

2020-06-26

ナチスと生存圏

あらゆる全体主義の根底には、ある信条が存在する。それは、支配者は国民よりも賢くて気高く、したがって何が国民の利益になるか、国民自身よりもよく知っているという信条である。
Mises, Ludwig von, Omnipotent Government: The Rise of the Total State and Total War

ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)に不可欠な政策は、ドイツ人のために生存圏を征服することだった。生存圏とは経済的な自給自足によって他国よりも高い生活水準を維持できる、広大で天然資源の豊かな領土である。それはドイツの世界覇権の確立なしには実現不可能だった。
Mises, Ludwig von, Omnipotent Government: The Rise of the Total State and Total War

国は政府による統制を強めるほど、国際経済において孤立を深める。国際的な分業は国家主権の完全な行使を阻むものとして不信の対象となる。自給自足経済は、政府が経済問題で最高の権限を握ろうとすれば、必ず行き着く先である。
Mises, Ludwig von, Omnipotent Government: The Rise of the Total State and Total War

反自由主義は真の自由主義のふりをして大衆の心をつかんだ。今日、リベラルを自称する人々が支持する政策は、古い自由主義の信条とは正反対である。彼らは生産手段の私有と市場経済を非難し、全体主義的手法による経済運営を熱心に支持する。
Mises, Ludwig von, Omnipotent Government: The Rise of the Total State and Total War

経済再生、政府頼みの脱却カギ


  • 新型コロナウイルスは世界経済悪化の原因ではなく、きっかけにすぎない
  • 経済回復へのリスクは長期の財政・金融政策がもたらした過剰債務
  • 政府に頼らず、規制のない市場で活躍する企業がコロナ後の経済再生の主役に

政府は25日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が最後まで続いていた東京など首都圏1都3県と北海道について、解除を決定した。感染拡大が収束したか予断を許さないものの、今後は打撃を受けた経済の回復が焦点になる。経済再生のために、何が必要だろうか。


経済への打撃は深刻だ。国際通貨基金(IMF)は4月、今年の世界経済成長率がマイナス3.0%となり、1930年代の大恐慌以降で最悪の景気後退になるとの見通しを発表。さらに5月12日、同基金のゲオルギエバ専務理事は、コロナのパンデミック(世界的大流行)が各国経済に想像以上の打撃を及ぼしていることから、世界経済見通しをさらに下方修正する公算が極めて大きいと表明した。

しかし、忘れてならないのは世界経済の悪化がコロナ拡大の前から進行していた事実だ。パンデミックは経済悪化の直接の原因ではなく、それを加速したきっかけにすぎない。

2020-06-25

共同体の変容

米社会学者ロバート・ニスベットによれば、政府は特に20世紀に入り、非常時のみならず日常生活においても、市民社会に取って代わるようになった。共同体の真の意味は自発的で協力的、市場に基づくものだったのに、政治的で命令・統制に基づくものに取って代わられてしまった。
Tragedies of Our Time: Pandemic, Planning, and Racial Politics – The Future of Freedom Foundation

1980年代末、米国の著名な経済学者ポール・サミュエルソンが示していたソ連経済の強さに関する楽観的な予測は、夢物語であることが明らかになった。予測は間違った経済データに基づき、西側の経済学者や外交担当者は嘘のデータをそのまま信じていた。ソ連は1991年に崩壊する。
Fifty Years of Statist Policies and Economic Fallacies – The Future of Freedom Foundation

米経済学者で黒人のトマス・ソーウェルによれば、過去数十年、エリート主義の社会工学者らは、様々な社会問題の幻影を生み出した。それらは元来存在しなかったか、通常の市場経済で改善中だった。彼らは解決に政府の介入を提案し、失敗すると介入が足りないせいだと主張した。
Thomas Sowell at 90: Understanding Race Relations Around the World – The Future of Freedom Foundation

オーストリアの経済学者ベームバヴェルクが指摘したように、貯蓄する人は現在の財に対する需要を抑えるけれども、財への欲求をすべて抑えるわけではない。貯蓄によって現在の消費を抑える人やその相続人はその分、将来の消費を増やす。現在の消費を無理に刺激する必要はない。
How LockDowns Shattered the Structure of Production – The Future of Freedom Foundation

ここ最近の公取委の「活躍」に重大な懸念…「市場独占=消費者に不利益」の大嘘

「市場の番人」と呼ばれる公正取引委員会が存在感を強めている。インターネット通販大手、米アマゾンの日本法人に対し、独占禁止法違反(不公正な取引方法)の容疑で立ち入り検査を実施。一方で、大手携帯電話会社によるスマートフォン端末の売り方について、分割払いの総額を指定する行為など独禁法違反の恐れがある事例を示し、是正を求める考えを明らかにした。

公取委のホームページ上では、独占禁止法の目的についてこう説明されている。

「消費者の立場から見ると、市場において企業間の競争がなくなってしまうと、より安い商品やより良い商品を選ぶことができなくなるなど、消費者のメリットが奪われてしまいます」


海外の独禁当局や主流の経済学説とも共通する考えである。しかし、独占が消費者の利益を損なうという通説は、歴史の事実や経済の現実からみて、正しいとはいえない。

現代の独占規制は、19世紀後半の米国にさかのぼる。当時独占が消費者の利益を損ねたとされる例として最も悪名高いのは、石油王ジョン・ロックフェラーが興したスタンダード石油である。同社による独占の「弊害」は、今でも独禁政策を正当化する事例としてしばしば言及される。

だが、スタンダード石油が消費者の利益を損ねたという説は、事実の裏づけに乏しい神話にすぎない。ロックフェラーは1839年、行商人の息子として生まれる。高校を卒業後、簿記の助手を手始めに、セールスの仕事をいくつか経験する。信仰深く、勤勉で倹約に努めたロックフェラーは、23歳までに十分な資金を蓄えると、仲間と共同でオハイオ州クリーヴランドの製油所に投資する(1870年にスタンダード石油に改組)。

ロックフェラーは、ときには肉体労働者に交わって事業を細部まで理解し、コストの低減と製品の改善・拡充に努めた。そのおかげで、同社の精油市場におけるシェアは1870年の4%から1874年には25%、1880年には85%に上昇する。

一方、販売拡大に伴い、1ガロンあたりの製造コストは1869年の3セントから1885年には0.5セント未満に低下した。ロックフェラーはコストの低下分を消費者に還元し、1ガロンあたりの価格を1869年の30セント強から1874年には10セント、1885年には8セントに引き下げる。 従業員にも競合他社を大きく上回る賃金を支払った。このため、ストライキや労働争議で事業が滞ることはめったになかったという。

2020-06-24

政府の正しい役割(ベンサム)

英哲学者ベンサムによれば、政府の正しい役割とは、「黙っている」ことだ。働く市民が政府に求めるのは、アレキサンダー大王から「お前の望みは何か」と尋ねられ、樽に住む哲学者ディオゲネスが答えた中身と同じだ。彼はこう答えた。「日が当たらないから、そこをどいてくれ」
Bentham on the proper role of government: “Be Quiet” and “Stand out of my sunshine” (1843) - Online Library of Liberty

仏哲学者デステュット・ド・トラシーが言う通り、互いに自発的な取引では売り手と買い手の両方が得をする。私が労働を売って賃金を受け取るのは、その労働で自分のために物を作るよりも、得だと思うからだ。相手は私の労働には賃金以上の価値があると思うから、賃金を支払う。
Destutt de Tracy on the mutually beneficial nature of exchange (1817) - Online Library of Liberty

英哲学者スペンサーいわく、社会・経済の構造は自然に進化する。それをもたらすのは、私的な目的を追求する人々の自発的な協力である。これは政治家が創造しようとする、人為的に製造された秩序とは対照的である。人為的な秩序はたいてい、大きな成功を収めることはできない。
Spencer on spontaneous order produced by “the beneficent working of social forces” (1879) - Online Library of Liberty

オーストリアの経済学者ミーゼスによれば、政治的自由は自由な市場経済の繁栄の上に成り立つ。成文憲法が保護するものは、市場活動によって生み出され、存在する慣習にすぎない。もし自由な市場経済の慣習が過度に弱められれば、その上に築かれた政治制度は崩れ落ちるだろう。
Mises on the interconnection between economic and political freedom (1949) - Online Library of Liberty

トランプの共和党で真剣議論&話題沸騰!金本位制、復活待望論が世界的に高まる

政治・経済報道で、「金本位制」について目にする機会が増えている。

7月に行われた米共和党全国大会では、一部から金本位制への回帰について委員会で調査することを求める声が上がった。同党の大統領候補指名でドナルド・トランプ氏の対抗馬だったテッド・クルーズ上院議員は昨年、予備選の討論会で「理想的には金本位制が望ましい」と発言し、話題となった。

後述するように、米国の著名な作家や学者からも、金本位制復活を主張する声が出ている。


金本位制とは、金(きん)をお金の裏付けとする制度である。今のお札は発行元である中央銀行(日本の場合は日本銀行)に持ち込んでも何にも換えてもらえないが、金本位制なら、金貨や金の延べ棒と一定の割合で交換してもらえる。

中央銀行は、お札がいつ持ち込まれても大丈夫なように、裏付けとなる分の金をいつも手元に準備しておく必要がある。逆にいえば、手元にある金の量を上回るお札を刷ることはできない。中央銀行がお札を野放図に刷りまくらないよう、金で歯止めをかけるわけだ。

金本位制のメリットは、ここにある。今の通貨制度では、中央銀行が事実上無制限にお金の量を増やすことができる。そのお金を頼りに政府が国債を発行すれば、政府の借金も天井知らずで積み上がることになる。これが現在、先進各国が直面する財政危機の構図だ。

金本位制であれば、政府・中央銀行が好き勝手にお金を発行し、借金を増やし、国民にツケを回す無責任な金融・財政政策はできなくなる。無駄な公共事業や非効率な福祉政策、軍事支出にも歯止めがかかる。

財政危機に直面する米国で、あくまで少数意見とはいえ、金本位制が注目される背景には、こうした金本位制への期待がある。米国以上に財政状況が深刻な日本でも、十分検討に値するはずである。

金本位制復活論に対しては、たいていの経済学者やジャーナリストはもちろん反対で、異口同音に「非現実的」「とんでもない暴論」といった批判を浴びせる。しかし、それらの批判は本当に正しいだろうか。

2020-06-23

分業は文明

分業とは単に生産性を高めるための手段ではなく、文明そのものだ。社会的な協力関係であり、相互依存である。争いと暴力の対極にある。分業は個人間の平和な関係に基づくと同時に、平和な関係を築く。米国でコロナ対策の都市封鎖は分業を破壊し、争いと社会不安をもたらした。
COVID Lockdowns Crippled the Division of Labor, Setting the Stage for Civil Unrest | Mises Wire

都市封鎖は資本を破壊した。今後の課題は資本構造の再建だ。そのためには消費を減らし、貯蓄と投資を増やさなければならない。政府にできるのは経済における役割を縮小し、財政支出を減らし、貯蓄と投資にかかる税を中心に減税することだ。消費刺激策は経済の回復を遅らせる。
After the Lockdowns, Government "Fixes" for the Economy Will Make Things Even Worse | Mises Wire

新型コロナの大流行が終わっても、それは株式や債権の基本価値が元の水準まで戻ることを意味しない。長く続いた悪性の資産バブルはすでに下り坂だった。シェールオイル、航空産業、中国と新興市場、欧州の輸出産業、商業用不動産—。どれもピークからの厳しい下げがありうる。
Even if COVID-19 Goes Away, the Economy Isn't Going Back to "Normal" | Mises Wire

ケインズとその直接の弟子たちはまだ昔流の経済学的思考の訓練を受けていたが、今のケインズ派はマクロ経済学しか知らない。人間の行為自体の分析ではなく、行為の結果の量的関係をモデル化することに全精力を注ぐ。経済科学とは名ばかりで、当て推量と作りごとの寄せ集めだ。
Why the New Economics Just Boils Down to Printing More Money | Mises Wire

為替の変動相場制、失敗が決定的…企業の多大な損失や国家間紛争が生まれる理由

英国の欧州連合(EU)離脱問題などをきっかけに、外国為替相場が乱高下する場面が増えている。そのたびに、政府・中央銀行の要人は「為替相場は安定して推移することが望ましい」と繰り返す。あまりにも見慣れた光景で、特に不思議に感じる人もいないだろう。

しかし、そもそも為替相場が変動するのは、変動相場制を採っているからである。為替の急激な変動がそれほど嫌ならば、なぜ変動相場制でなく、昔のような固定相場制に戻さないのだろうか。

この問題について考えるため、まず第2次世界大戦後の為替制度の歴史を簡単に振り返ってみよう。


戦後の国際通貨体制は、まだ戦中だった1944年7月、米国のニューハンプシャー州ブレトンウッズで連合国が開いた会議で決定された。これをブレトンウッズ体制と呼ぶ。金との交換を保証された米ドルが基軸通貨とされ、他通貨と一定レートで交換する固定相場制が採用される。円は1ドル=360円となった。

しかし唯一の基軸通貨国となった米国は、ベトナム戦争の軍事費や国内福祉政策の支出増大に充てるため、多額のドルを増発。交換する手持ちの金が不足する事態に陥る。

ついに71年8月15日、当時のニクソン大統領が金とドルの交換停止を宣言する(ニクソン・ショック)。ニクソン・ショック直後は交換レートを1ドル=308円に切り上げるなど固定相場制を維持する試みもあったが、長続きしなかった。結局、73年に日本、欧州主要国などがドルとの変動相場制に移行し、現在に至る。

2020-06-22

老子の自由放任思想

老子によれば、世の中に禁令が多くなればなるほど、人民は離反する。法なるものが明らかになればなるほど、盗賊はたくさん現われる。そこで君主が何もしないと、人民はおのずとよく治まる。君主が事を起こさないと、人民はおのずと豊かになる。古代中国の自由放任思想である。
Lao Tzu and the Tao of laissez-faire (6thC BC) - Online Library of Liberty

仏哲学者デステュット・ド・トラシーによれば、社会とは取引の連続だ。人は一定の条件で暴力の行使を放棄する代わりに、他の人にも同じようにしてもらう。これは取引だ。そこから多様な相互関係を築く。サービス提供の代わりに賃金を得る。商品を交換する。仕事を共同で行う。
Destutt de Tracy on society as “nothing but a succession of exchanges” (1817) - Online Library of Liberty

米法哲学者スプーナーが言うとおり、営業の自由は、契約の自由がなければほとんど無意味だ。それが一定の賃金で人を雇う自由であれ、一定の値段で製品を買う自由であれ。営業と契約の自由に対する最大の障害は、一部の者に特権を与えるため他の人々を犠牲にする政府の法律だ。
Spooner on the “natural right to labor” and to acquire all one honestly can (1846) - Online Library of Liberty

経済学者ミーゼスによれば、資本主義における真の支配者は消費者だ。買い物によって資本家や経営者の座を左右する。移り気で気まぐれ。自分の満足しか考えない。資本家の利益など気にかけないし、自分が昔買っていた物を買わなくなるせいで労働者が職を失おうと、気にしない。
Mises on the consumer as the “captain” of the economic ship (1944) - Online Library of Liberty

最低賃金「引き上げ」は失業の増大を招き、弱者をより苦境に追い込む…経済学の常識

7月10日に投開票される参院選に向け、ほぼすべての主要政党がそろって公約に掲げた政策がある。最低賃金の引き上げだ。

自民党は現在全国平均で時給798円の最低賃金を1000円に引き上げることを目指すと公約に盛り込んだ。公明党が1000円、民進党は1000円以上、共産党は1500円を最低賃金で掲げた。メディアや言論人は、リベラル派を中心におおむね歓迎している。


最低賃金の引き上げは一見、貧困に苦しむ人々を助ける人道的な政策のように見える。しかし残念ながら実際には、貧しい人々を助けることはできない。むしろ職を見つけられなかったり失業したりする人が増える。以下、説明しよう。

最低賃金の引き上げは、失業の増大をもたらす。これはたいていの経済学の教科書に載っている、経済学のイロハである。念のため、簡単におさらいしておこう。

2020-06-21

見えるものと見えないもの

仏経済学者バスティアは、ある出来事が経済に直接すぐに及ぼす影響を「見えるもの」、間接に時間をかけて及ぼす影響を「見えないもの」と呼んだ。知性と探究心があり、健全な経済学の訓練を受けた人は「見えないもの」に気づく。そのような訓練を受けていない人は気づかない。
Bastiat Word Cluster Seen and Unseen

アダム・スミスの「見えざる手」は、市場の過程を重視する古典経済学の思考を理解していれば、市場秩序のたとえとしてきわめて有益だ。しかしその理解を欠いていると、「神の手」として戯画化され、まるで市場があらゆる問題を解決するという主張であるかのように中傷される。
The Struggle Over “Basic Economics” – AIER

米国では1100種もの職業に何らかの資格が必要だ。ニュージャージー州でかつらを合法的に販売するには、1200時間の訓練を受けて美容師の免許を取らなければならない。ルイジアナ州では園芸委員会によって花屋への参入を規制。コロナで失業しても、庭の花を売ることもできない。
To Help Americans Suffering During the COVID-19 Pandemic, Policymakers Need to Reduce Barriers to Employment ASAP - Foundation for Economic Education

米連銀は企業、個人、政府にさえも低利での融資を命令はできない。原油安が響き、原油を担保としたシェール業者への融資には誰もが尻込みしている。幸いにも連銀は万能ではない。それは社会主義がみじめに失敗したのと似ている。連銀の実力は信じられているよりずっと小さい。
The Fed Can't Revive the Dead, But It Can Delay Their Recovery | RealClearMarkets

巨額税金で一部企業を救済し便宜受ける政治家、自国貿易保護…世界を覆う新国家主義

人びとのための資本主義―市場と自由を取り戻す 

数年前からはやり始めた「新自由主義」という言葉が、最近ますます多用されるようになってきた。リベラル派、保守派を問わずこの言葉を使い、政府の経済政策や政治家の主張を盛んに非難する。

しかし、ここで素朴な問いかけをしてみたい。今の経済政策のあり方に大きな問題があるのは確かである。だがそれは果たして、「自由」という言葉を使って呼ぶことが適切だろうか。

新自由主義が注目される火付け役となった本を読み返してみよう。英国出身の経済地理学者、デヴィッド・ハーヴェイの『新自由主義』(邦訳2007年刊、渡辺治監訳/作品社)である。すると意外な事実が明らかになる。

ハーヴェイは新自由主義を次のように定義する。

「新自由主義とは何よりも、強力な知的所有権、自由主義、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制約に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治経済的実践の理論である」

「強力な知的所有権」は表現の自由と衝突する面があるからひとまず除外するとしても、それ以外の「自由主義」「自由貿易」「企業活動の自由」などの部分は、文字どおり「自由」という言葉にふさわしい。別の言い方をすれば、「市場原理主義」と呼んでもいいだろう。

しかし今の経済政策が、とてもこのような自由や市場原理にあふれているとは思えない。

たとえば貿易である。政府や大手メディアは、環太平洋経済連携協定(TPP)が自由貿易であるかのように喧伝するが、以前この連載で述べたように、その実態は複雑な制限だらけの管理貿易にすぎない。

ハーヴェイは共産主義の祖であるマルクスを信奉しており、それにふさわしく、新自由主義が理念として掲げる自由貿易や企業活動の自由を批判する。しかし同時に、新自由主義のもう一つの側面も批判する。むしろ力点はこちらにあるといっていい。

2020-06-20

大恐慌を招いたもの

米国では19世紀から20世紀初めまで、政府は経済恐慌に対しほぼ無関心で、むしろそのおかげで経済は回復した。一方、1930年代には政府・中央銀行が真剣に景気回復策を行うようになり、そのせいで、単なる株価暴落で済んだはずのものが、いつまでも終わらない大恐慌へ悪化した。
Keynesians on the Cause of, and Cure for, Depressions | Mises Wire

米国では1890年代から1920年代にかけての進歩主義時代に、独占の規制、製品の安全確保、労働条件の改善などを名目に、多くの経済規制が導入された。独占禁止法の制定、商務労働省や連邦取引委員会の創設などだ。それによって新規参入が制限され、生産が減り、物価が上昇した。
Are We on the Cusp of a New Progressive Era? | Mises Wire

欧州では淘汰するべき業界が支援策で助けられ、資金や政治力に乏しい多数の小企業が潰れる。革新的企業が成長できないのは、規制のせいで資金調達の80%(米国では30%未満)を銀行に依存することと無縁ではない。アップルやネットフリックスが銀行融資で成長できるはずがない。
Why the European Recovery Plan Will Likely Fail | Mises Wire

お金を刷って経済を成長させることはできない。中央銀行が無からお金を作り、それと交換で物を消費できるようになると、物が浪費され、商品の生産に必要な物が足りなくなる。その結果、商品の生産を妨げ、他の商品に対する需要を弱めてしまう。需要の裏付けとなるのは生産だ。
Savings Are Critical to a Prosperous Economy | Mises Wire

タックス・ヘイヴン規制で、税当局の恣意的な徴税横行の恐れ…リベラル派のデタラメ主張

「パナマ文書」の公開以降、タックスヘイブン(租税回避地)への非難や規制強化の機運は強まる一方だ。本連載前回記事で述べたように、タックス・ヘイヴン潰しは民間経済の活力を奪い、庶民や社会的弱者の生活水準を下げる。

それだけではない。法的な問題も大きい。タックス・ヘイヴン批判の理由として脱税以外によく持ち出されるのは、資金洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金の隠し場所として悪用されるおそれがあるというものだ。しかし、これは針小棒大な非難といわざるを得ない。


スイスの独立系シンクタンク、バーゼル統治研究所は世界各国を対象に、資金洗浄やテロリストの資金調達に利用されるリスクを数値化し、ランキングしている。2015年版でみると、ワースト10カ国(イラン、アフガニスタン、タジキスタン、ギニアビサウ、マリ、カンボジア、モザンビーク、ウガンダ、スワジランド、ミャンマー)の中に、経済開発協力機構(OECD)が挙げるタックスヘイブンはひとつもない。

タックスヘイブンは企業や富裕層を顧客として引きつけようと互いにしのぎを削っている。犯罪への関与が明らかになれば、まっとうな顧客が寄りつかなくなるから、もともと法令順守には敏感なのだ。悪用されるケースがないとは言わないが、政府が本当に資金洗浄やテロ資金をなくしたいのであれば、タックスヘイブン潰しが効率的な方法とは思えない。

2020-06-19

国家資本主義なんか怖くない


  • 中国の急成長などを背景に「国家資本主義」に警戒感
  • 強力に見える国家資本主義には政府の経済支配ゆえのもろさ
  • 本当にたくましいのは価格メカニズムを持つ自由な資本主義


中国流の「国家資本主義」に世界経済が席巻されてしまうのではーー。ここ数年、自由な資本主義陣営とされる日米欧で、警戒する声が増えている。おびえる声、と言ったほうがいいかもしれない。

■国家が産業に積極介入


国家資本主義とは、国家が産業に積極的に介入する経済体制をいう。個人の自由を前提とし、政府が経済活動への介入を控える本来の資本主義とは大きく性格が異なる。

国家資本主義が注目を集めた背景には近年、中国が急速な経済成長を遂げ、国内総生産(GDP)で世界一の米国に迫ってきたことがある。


あらゆる産業でデータ分析が重要になる人工知能(AI)の時代には、国民を統制・監視するためにプライバシー情報を含む大量のデータを収集している中国が優位に立つとの見方もある。

今回の新型コロナウイルス感染拡大では、中国の強権的な対応に驚きながらも称賛する声が聞かれた。中国政府は震源地となった湖北省武漢市を即座に封鎖し、国民の移動を厳しく制限。感染者数を一時、抑え込んだ。

経済成長や公衆衛生という目的を達成するうえで、個人や企業の自由を尊重する本来の資本主義は、政府が強力なリーダーシップを発揮する国家資本主義に太刀打ちできないのだろうか。

心配しなくていい。国家資本主義は強靭(きょうじん)に見えても、内部にもろさを抱える。本当の意味でたくましいのは、本来の自由な資本主義だ。

国家資本主義の強みである政府の強力なリーダシップは、同時に弱点でもある。ある問題に関する政府の判断と対応が正しければ良い結果につながるけれども、逆に間違っていた場合、悪い結果をもたらす。

政府が正しい場合も間違った場合も、その影響は国全体に及ぶ。政府による経済支配の程度が強いほど、失敗した場合のダメージも大きい。

しかも、政府が間違う可能性は小さくない。その理由は「情報」にある。政府が経済を思うように運営するには、政府の下に必要な経済情報を集めなければならない。ところがここで政府は、深刻なジレンマに直面する。

2020-06-18

タックス・ヘイヴン批判は間違っている…庶民に多大な恩恵、なくなれば生活が苦しくなる

世界のタックスヘイブン(租税回避地)の実態を明らかにした「パナマ文書」をきっかけに、課税逃れやタックス・ヘイヴンへの批判が国内外で高まっている。「税逃れはけしからん」という感情はわかる。しかし冷静に考えて、タックス・ヘイヴンの利用を許さず企業や株主への課税を強めることは、一般市民や日本経済にとって賢明だろうか。

今月相次いで開催された先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は、タックス・ヘイヴンを利用した課税逃れに結束して監視を強化することで一致した。


憲法や安全保障など他の問題では対立する大手新聞も、この件に関しては一斉に税逃れを非難。インターネット上の世論も大半が同意見で、ツイッターや匿名掲示板は「タックス・ヘイヴン企業に対して逃れた分を追徴収しろ!」「タックス・ヘイヴンなければ教育の完全無償化が可能」などと憤慨する声であふれた。まさにタックスヘイブン憎し、税逃れ許すなの大合唱だ。

しかし、こんなときこそ頭を冷やして考えてみたい。タックス・ヘイヴン叩きは、一般市民にとって本当に望ましい結果をもたらすだろうか。

パナマ文書の報道で、かなりの人はタックス・ヘイヴンに対し、一部の欲深い人間が利用する怪しい場所というイメージを抱いたことだろう。しかし、そんなことはない。むしろビジネスの世界では欠かせない存在といってもいい。

そもそも租税回避は、違法な行為ではない。合法である。それを踏まえ、たとえば金融の世界では、投資ファンドの組成などに広く使われている。投資ファンドといっても、超富裕層を顧客とするヘッジファンドなどだけではない。ごく一般的な投資信託も、ケイマン諸島や英領バミューダといったタックスヘイブンを登録地として多く利用する。投信の販売資料で目にしたことのある人も多いはずだ。

事業会社でも、タックス・ヘイヴンに海外子会社やその統括会社を設立するなど、広く活用されている。大企業に限らず、中小企業も海外事業を営む機会が増えるにつれ、タックスヘイブンの利用は珍しくなくなっている。

2020-06-17

ナチズムの起源

ドイツの哲学者は、自由な市場経済における取引と協力の利益を理解できなかった。だから国家が国民を生かし、繁栄させるには、他国から資源と領土を奪い取らなければならないと考えた。ヒトラーはこの政策を容赦なく徹底して実行し、多くのドイツ人はそれを支持したのである。
Mises versus Rand on the Origins of Nazism | Mises Wire

戦後生まれのドイツ人でも、ナチス時代の国民が犯した罪の道徳的責任を負うという主張がある。だが他人の罪や功績を分け合うことはできない。それは他人の決断と行動によって自分が直接、道徳的に良い人間になったり悪い人間になったりすることを意味する。明らかに不条理だ。
Individual Responsibility and Guilt | Mises Wire

外敵の侵略から家庭を守ることが戦争の目的ならば、市民は政府に徴兵されても問題ないだろうか。そうは言えない。敵が勝てば耐えがたい状態になるかどうかは、各個人が判断するべきことである。政府が判断するべきことではない。だから自衛戦争でも徴兵が正しいとは言えない。
A Puzzle about Mises and Conscription | Mises Wire

富や所得の平等が道徳的に必要というなら、奇妙なことになる。社会の全員が貧しい状態は、社会の一部が豊かになった状態よりも道徳的に優れているということになるからだ。たとえ誰も今より貧しくならず、一部が豊かになるだけだとしても、独善的な平等主義はそれを許さない。
Equality and Levelling Down | Mises Wire

消費増税、国が詐欺的な虚偽説明…中小企業に甚大な危害とコスト、価格転嫁できない例多数

熊本の震災をきっかけに、来年4月に予定どおり消費税率10%への引き上げを実施するかどうかが議論を呼んでいる。安倍晋三首相や麻生太郎財務相は今のところ、予定どおり実施する考えを強調している。

さて、政府は常日頃、ほかの税金でなく消費税の増税にこだわる理由として、現役世代への負担集中を避ける狙いを挙げる。たとえば財務省はホームページでこう説明する。

「社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます」


しかし、消費税は本当に現役世代への負担が相対的に軽い税金なのだろうか。そのことを考える前提として、まず消費税の仕組みについて正しく理解する必要がある。というのも政府自身、正しい理解を妨げるような説明をしているからだ。

たとえば国税庁は「消費税のあらまし」というパンフレットで、「消費税は、消費一般に広く公平に課税する間接税です」と述べる。ところがこの短い文章に、読者をミスリードしかねない部分が3つもある。

まず、「消費一般」に課税するという部分である。消費税は名称にも「消費」という言葉が使われているし、消費者だけが払う税金だと思い込んでいる人は少なくないだろう。しかし意外に知られていないことだが、消費税は一部の例外を除き、原則あらゆる商品・サービスのすべての流通段階にかかる。消費者に売る最終段階より、その前段階で企業(事業者)どうしが行う多数の取引がむしろ課税の中心とすらいえる。

次に、「間接税」という部分である。税金のうち、納める人(納税義務者)と負担する人(税負担者)が同じものを直接税、異なるものを間接税と呼ぶ。消費税の場合、納めるのは事業者、負担するのは消費者というのが建前で、だから間接税ということになっている。だが現実には、直接税の側面も強い。後述するように、建前どおりに消費者が負担するとは限らず、自腹を切る事業者が少なくないからだ。

3つめは、「公平に」という部分である。政府として不公平とはいえないだろうが、消費税は所得の低い消費者に相対的に負担が重く公平でないと指摘されるほか、事業者からみても不公平な点がある。

消費税は価格への転嫁が法律で保証されていない。転嫁できるかできないかは、事業者の交渉力・競争力次第である。力が強ければ転嫁できるが、力のない事業者は、販売先や消費者から消費税分を取れず、自腹を切らざるを得ない。

原材料の値上がりなど、市場で起こったコスト高なら力関係に左右されても仕方ない。だが、政府自身が押しつけた税を自力で転嫁しろ、できない者は自腹を切れとは、とても公平とはいえない。

以上の点から、消費税のあまり知られていない問題点が浮き彫りになる。すなわち、現役世代への負担が軽いという政府の宣伝とは裏腹に、現役そのものである事業者、とくに中小企業や自営業者を直撃し、弊害をもたらす税金だということである。

2020-06-16

分業の驚異(マンデビル)

著作家マンデビルいわく、商品を作るには驚くほど多くの協力関係が必要だ。真紅のドレスを作るには紡績工、染物屋、梱包業者らのほか水車大工、化学者ら。無用の贅沢品に見えても多くの人に価値をもたらす。アダム・スミスが『国富論』で分業の意義を説くより50年前のことだ。
Mandeville on the social cooperation which is required to produce a piece of scarlet cloth (1723) - Online Library of Liberty

英経済学者ジェームズ・ミルが説明するように、市場で商品を買うためには、その代金を払う財源がなければならない。その財源となるのは自分が作り出す商品だ。商品を多く作り出すほど、商品を多く買うことができる。これが「供給は自らの需要を作り出す」というセイの法則だ。
James Mill’s formulation of “Say’s Law” (1808) - Online Library of Liberty

米法哲学者スプーナーによれば、政府は民間企業と違い、利益を生む意欲がないから、安くて便利なサービスで顧客をつなぎ止めようとしない。代わりに求めるのは快適な職場、公務員の名誉、権力、大統領の笑顔だ。スプーナーは郵便会社を設立し政府に挑戦し、撤退を強いられた。
Lysander Spooner on why government monopolies like the post office are inherently inefficient (1844) - Online Library of Liberty

米社会学者サムナーによれば、平和な生産活動による資本の蓄積は、人間を野蛮な貧困から救い、文明を創り出した。そこでは単に十分な食べ物を見つけたり、捕食者・略奪者を避けたりする以上のことに打ち込めるようになった。やがて奴隷制やカースト制、ギルドから解放された。
Sumner on the industrial system as an example of social co-operation (c. 1900) - Online Library of Liberty

【熊本地震】行政のお粗末対応で被災者飢餓&震災拡大…救援物資を滞留、救援の妨げに

今月、熊本県を中心に九州を襲った大地震は、エコノミークラス症候群などの震災関連死を含め数十人もの死者と1000人以上のけが人を出したほか、9万人を超える人々を避難生活に追い込んだ。こうしたなかで、救援に責任を負うはずの行政に対応の遅れやまずさが目立つ。民間企業が東日本大震災などの経験を生かし、すばやく的確に行動しているのと対照的だ。これでは一刻を争う救援活動を主導するどころか、足を引っ張ることになりかねない。

今月14日に起こった最初の大地震後、民間企業は迅速に行動した。まず注目されたのは、日常生活に密着し人々の命綱ともいえるコンビニエンスストアだ。大手コンビニ3社の店舗は、震災発生から1週間もたたないうちに熊本県内で大半が営業を再開。飲料水や食料品を優先的に出荷し、全国から応援社員を集めるなど、過去の震災で培ったノウハウを生かした。


コンビニ以外でも、過去の経験に学んだ企業の活躍が目立つ。イオンは、被災者に風雨をしのげる避難場所を提供しようと、2004年の新潟県中越地震で使用した大型テントを提供。三井化学は、ストローで膨らますと枕やマットレスとしても使える「エア・ざぶとん」1000枚を届けた。11年の東日本大震災の際、取引先企業が、段ボールを敷いて寝ていた被災者の「床に敷くものがほしい」という声を聞いて開発したものだ。

2020-06-15

「個人消費は経済のエンジン役」はデタラメ!GDPは経済の実像を表していない?

政府が個人消費の刺激に躍起になっている。今月開いた経済財政諮問会議では、民間議員がいくつかの施策を提示した。プレミアム付き商品券・旅行券を発行するほか、子育てサービスに使えるバウチャー(クーポン券)の導入などを提言。米国で定着する年末商戦「ブラック・フライデー(黒字の金曜日)」の日本版となる大規模セールを始めることも示した。

いずれも、低迷する消費を刺激し、政府の掲げる「国内総生産(GDP)600兆円」を実現するための策という。


政府が個人消費の喚起に懸命になるひとつの根拠は、GDPに占める割合が高いことにある。確かに統計上はそうなっており、そのため個人消費は「経済のエンジン」と呼ばれることもある。しかし経済の現実に照らして、個人消費は本当にそう呼ぶにふさわしい重みを持っているのだろうか。

2020-06-14

電力自由化で供給不安&停電の危険、はまったく的外れである

4月にスタートする電力自由化まであとわずか。電力購入先の選択肢が広がることへの期待が高まるなかで、メディアでは「自由化で電力の安定供給が確保できなくなる」と脅かす声も聞かれる。その指摘は正しいだろうか。

かつて電力自由化が供給不足をもたらした「証拠」としてあげられるのは、2000年夏から翌年にかけて米カリフォルニア州で発生した電力危機である。同州で電力会社が十分な電力を供給できなくなり、停電が頻発した。自由化に批判的な論者によれば、電力不足の原因は規制緩和だったという。


同州で1996年に電力業界改革法が成立し、電力改革が行われたのは事実である。しかし、この改革で規制が緩和されたのは州内の電力会社が電力を購入する卸売価格だけで、小売り価格は規制されたままだった。電力事業のほかの部分には、より厳しい規制が敷かれた。

これに先立ち同州では、いつ電力供給不足に陥ってもおかしくない構図が強まっていた。一番の問題は、州政府が環境保護団体の圧力を受け、電力会社が供給を増やせないように規制したことである。1990年前後から発電所の建設はストップしていた。原発の新設は許可されなかった。水力発電所もダムの建設で生態系に悪影響を及ぼすと環境団体が懸念したため、新設されなかった。それどころか、すでにあった発電所の一部まで閉鎖された。

一方で、電力需要は急増していた。人口増や同州シリコンバレーで急成長したコンピューター産業による電力利用の増加が主因である。通常の自由な市場であれば、需要が増えて供給が変わらなければ価格は上昇するから、電力会社は利益獲得を狙って供給を増やす。だから長期の電力不足は起こらないし、供給が増えれば価格は下がる。しかし実際には、規制で供給を増やせなかった。

こうしたなか、前述の電力改革で電力不足は確実になる。州政府が小売価格の規制を維持したうえ、有権者の反感を買わないよう、その価格を市場実勢よりも安く維持したからである。価格を人為的に低く抑えれば、需要が過度に刺激される半面、供給は減る。これは経済学のイロハである。

2020-06-13

デフレは、不況や経済成長と無関係だという歴史的事実…過度の金融緩和でバブルの兆候

日本銀行は先月、国内初となるマイナス金利の導入に踏み切った。その狙いは、日銀が目標に掲げながらいっこうに達成できずにいる、デフレ脱却である。黒田東彦日銀総裁は、マイナス金利により住宅ローンなどの貸出金利が下がっており、その効果が「今後、実体経済や物価に表れてくる」(2月16日の衆院予算委員会)と脱デフレに自信を見せる。

しかし、ここで今さらながら考えてみたい。デフレとは、物価全般が持続的に下がることである。それは経済や社会にとって本当に害悪なのだろうか。じつは「デフレは悪」という主張は、論理的にも、歴史的にも、確たる裏づけに乏しい。

よくあるデフレ批判は、「デフレになると企業の収入が減って業績が悪化し、不況になる」というものである。

著者 : 小幡績
ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 : 2015-01-31

しかし、少し考えてみればこれはおかしい。デフレで商品の値段が下がっても、販売数量がそれ以上に増えれば、収入は減らない。むしろ多くの企業は、大衆により安く、より多くの商品やサービスを販売することによって成長する。衣料チェーン「ユニクロ」のファーストリテイリングや家具のニトリは、そうした成長企業の代名詞である。

一歩譲って、かりに商品の値下がりを販売数量の伸びで補いきれず、収入が減ったとしても、それだけで業績が苦しくなるとはいえない。企業が儲かるか損をするかは、収入だけで決まるのではなく、収入と費用との差で決まるものだからである。

物価全般が下落しているのであれば、収入だけでなく、費用も減るはずである。とくに企業間の取引の場合、ある会社の収入は別の会社の費用なのだから、一方だけが減るはずはない。収入と費用がそれぞれ同程度だけ減るのであれば、業績は悪化しない。

特定の業種や個々の企業によっては、収入が大幅に減少する割に費用はあまり減らず、経営が苦しくなるケースもあるだろう。しかし、それはすべての企業にあてはまるわけではないから、デフレを非難する理由にはならない。

別のデフレ批判は、上記の説明に対し「費用のうち、人件費はすぐには減らせないから、やはり企業業績の悪化につながる」と反論する。しかし、人件費が減りにくい大きな要因は、最低賃金や解雇制限といった政府の労働規制であり、デフレが悪いのではない。

2020-06-12

警察の目的

第2次大戦後、米軍は日独を占領した際、現地の警察を改革し共産主義の監視に役立てた。日本から米国に戻ったバイロン・エングルは公安庁を指揮し、アフリカ、アジア、中南米52カ国に銃や催涙ガス、指紋技術を提供。米国の警察は昔から、政治的反乱の鎮圧に注意を向けてきた。
Yes, American police act like occupying armies. They literally studied their tactics | Stuart Schrader | Opinion | The Guardian

警察は独占であり、独占の結果として通常知られる欠点をすべて伴っている。保守派が警察を大好きなのは理解できない。保守派は「制限された政府」を支持し、政府の命令のうち90%以上が嫌いだという。でも武装した政府の警察とその命令は好きだって? そりゃすごい、恐れ入る。
Rioting: Everyone Has Lost Their Minds - LewRockwell

黒人暴行死への抗議デモに対する政治家やメディアの態度でわかったのは、抗議が左翼の好む内容であれば、外出禁止とソーシャルディスタンシングは必須ではないということだ。だから左翼の好まない宗教的な集まりは許されない。ある集団には集会の自由を認め、他には認めない。
The Moral Authority of the Lockdown Fetishists Is Gone. Thank the Protestors and Rioters. | Mises Institute

中国がコロナウイルスの発生源だとして、米国が中国を訴えたら、やぶへびになる。多くの国には米政府の行いを訴える理由がある。イラクは戦争で米国による爆撃と経済封鎖に苦しみ、それは今では過ちだったと広く認められている。米国が各国に与えた兵器で多くの人が殺された。
War for Hong Kong? | Mises Wire

見えざる手、非常時こそ真価


  • 民間企業はコロナ危機克服に役立つ商品・サービスを提供
  • 「見えざる手」という市場経済の力は非常時こそ真価を発揮
  • 政府に重要なのは市場経済の働きを妨げない大胆な規制緩和

新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の株式相場が急落する中、逆に上昇する銘柄群が注目された。感染拡大に伴うさまざまなニーズに応えることで業績拡大が見込まれる、新型コロナ関連銘柄だ。

代表例はヘルスケア。米ギリアド・サイエンシズは「レムデシビル」、日本の富士フイルムホールディングスは「アビガン」の治療効果が期待されている。医療関連では、遠隔医療サービスを提供する米テラドック・ヘルス、LINEと共同出資し医師への健康相談サービスを行う日本のエムスリーの株価も上がった。


在宅勤務を支援する企業や、巣ごもり消費の恩恵を受ける企業への注目度も高い。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズは、ビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」の利用者が急増している。任天堂はゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」が世界的なヒットとなった。ビデオチャットサービスを手がけるリンクバルは、オンライン飲み会の需要が増えているという。

これ以外にも関連銘柄は多い。勝手な憶測で買われたものもあるかもしれないが、基本は業績拡大の見通しが裏付けとなっている。

2020-06-11

警察を民営化しよう

警察を民営化して警備会社にし、利益を目的に経営させよう。生命と財産を守り、警官による人種差別を防止するために大きな効果を発揮するだろう。民間企業には差別を避ける動機が自ずから備わっている。どんな人種であれ顧客を殴ったり殺したりするのは、うまい商売ではない。
Privatize the Government Police Monopoly - LewRockwell

米国で警官はあらゆる年齢層の人を射殺してきた。その多くは丸腰だった。撃たれた理由は、立ち方とか動き方とか、銃に見えるものを持っていたとか、実際には何の危険もないのに警官に恐怖を感じさせたとか…。百万人を超す警官が、すべての個人を武装した脅威とみなしている。
Riots—Not Fun Nor Profit for the Rest of Us - LewRockwell

米国で警官による暴行死の犠牲者は、人種の割合からは黒人が多いけれど、絶対数は白人のほうが多い。だが御用メディアは白人への暴行を報じない。暴行は白人による人種差別だという説明に合わないからだ。白人自身、自分に対する暴行を差別として抗議する教育を受けていない。
All Races Suffer From Police Violence - LewRockwell

昨日まで大人数で集まるなと言っていたコロナウイルスの専門家が、黒人暴動死の抗議デモを支持。トランプ大統領が飲んでいる抗マラリア薬はリスク高めるとの論文を執筆者が取り下げ。政治と医療が結びつくと、ろくなことにはならない。医療は宗教と同様、政府から分離しよう。
Coronavirus Shows Why We Need Separation of Medicine and State! - LewRockwell

マイナス金利の次は現金廃止?個人預金が実質マイナス金利になる可能性も?

日銀が突然導入を決めたマイナス金利政策が、2月16日から実際に始まった。金利水準を全般に引き下げることで物価を押し上げ、デフレ脱却をめざす。しかし日銀に限らず、マイナス金利の効果を上げたい中央銀行にとって、おそらく目障りでたまらないものがある。それは現金である。

今回日銀が導入したマイナス金利政策は、銀行などが日銀に預ける当座預金を3つに分け、それぞれプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。マイナス金利の幅はとりあえず0.1%だが、これを拡大させていく可能性について日銀は「否定しない」(黒田東彦総裁)としている。



マイナス金利の効果について、日銀は「イールドカーブ(利回り曲線)の起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」(1月29日発表資料)とだけ述べ、具体的にどのような経路で金利全般の低下につながるかまでは説明していない。だが、いずれにせよ間違いないのは、個人を中心とする現金の使用が、マイナス金利の効果を削ぐことである。

現在、銀行の預金金利はマイナスにはなっていない。日本に先駆けてマイナス金利を導入したスウェーデンやデンマークでも、個人の預金金利はマイナスにはなっていない。企業向け預金に比べ、個人向けは政治的影響が大きいことなどが背景にあるとみられる。

しかし今後、貸出金利や国債利回りの低下で銀行の収益が圧迫されるかもしれない。そうなると苦しくなった銀行は、資金の調達コストを下げるため、個人預金の金利をマイナスにはしないまでも、口座手数料などの名目で事実上のマイナス金利を適用する可能性がある。

2020-06-10

職の略奪

米オレゴン州ポートランドでは暴徒がショッピングモールに押し入り、ルイヴィトンを略奪。一方、同州のブラウン知事は都市封鎖で40万人近くを失業させた。ミシガン州グランドラピッズでは暴徒が靴などを略奪。一方、同州のウィットマー知事は都市封鎖で失業率を24%に上げた。
The Real Looters are the Politicians – AIER

コロナ感染やそれに伴う経済の痛みはやがて終わる。終わらないかもしれないのは国家主義の勝利だ。国家主義という思想は、通常のやり方よりも国家による強制が常に良いと考える。パリではパン屋が中世以来、規制されている。パリの家賃は第一次世界大戦以来、統制されている。
The Immoral Equivalent of War | Mercatus Center

黒人暴行死で声明を発表し、メディアが好意的に報じたブッシュ(子)元米大統領。だが彼はかつて米国民に嘘をついてイラク戦争に引きずり込んだ。イラクに大量破壊兵器があるといって232回嘘をつき、イラクは国際テロ組織アルカイダにつながりがあるといって28回嘘をついた。
The Media Has Conveniently Forgotten George W. Bush's Many Atrocities | Mises Wire

米FBIがニクソン政権時代、ジョン・エドガー・フーヴァー長官の下で行った過剰なスパイ防止活動のうち、特に卑劣だったのは、コインテルプロである。情報収集や犯罪者逮捕の職分を超え、人を貶める偽情報を盛んに広め、政治的に気に入らない集団を分断・崩壊させようとした。
How the FBI and the L.A. Times destroyed Jean Seberg's life - Los Angeles Times

政府、国民の目を欺き「税をかすめ取る」憲法違反行為…人々のお金が目減り、国は利益

1000兆円を超す日本政府の膨大な借金(大部分は国債)がニュースで報じられるたびに、一部のエコノミストや経済学者は「危機感を煽りすぎ」「増税をもくろむ財務省の意図を感じる」などと批判する。

彼らによれば、政府の借金の負担は、増税以外のある方法によって軽くすることが可能だという。それは「インフレ税」である。

仕組みはこうだ。政府はお金を発行する特権を持っているから、お金を大量に発行して国債の利子や元本の返済に充てればよい。



ただし、お金を大量に発行すれば、他の条件が同じなら物価は上昇する。これは国民が保有するお金の価値が、実質目減りすることを意味する。同じ額のお金で買える物が少なくなってしまうからだ。

国民からみれば、インフレ(物価上昇)によって、税金を取られたのと実質同じことになる。だからインフレ税と呼ぶのである。

実はこのインフレ税、すでに始まっている。中央銀行である日本銀行が金融緩和政策の一環として、民間金融機関を通して年間80兆円規模の国債を買い入れているからである。

日銀は自分でお金を発行でき、お金に利子を払う必要はないから、資金調達のコストはゼロだ。一方、国債には利子がつくから、それがまるまる利益になる。日銀はこの利益を「国庫納付金」として政府に納めている。

日銀は政府と別組織になってはいるが、結局は政府の一部である。だから全体でみれば、政府はお金を発行することにより、濡れ手で粟で国債利子分の利益を手に入れたことになる。この利益がインフレ税であり、通貨発行益(シニョリッジ)とも呼ばれる。

インフレ税で国債の利払いは相殺されて実質ゼロになるから、少なくとも短期では一部エコノミストの言うとおり、普通の増税に頼らず借金の負担を軽くできる。

たとえば元財務官僚でエコノミストの髙橋洋一氏は「短期間での猛烈なインフレは困るが、それを生活に支障がないマイルドインフレに直せば、財政再建ができる」とインフレ税を推奨する。お金を刷るだけで済むのだから、やらない手はないと賛同する人も少なくない。

2020-06-09

奴隷と納税者の搾取(セイ)

仏経済学者セイは植民地制度を厳しく批判した。そこで示したのは、古典的自由主義に基づく階級分析だ。一方の階級は搾取される奴隷と、植民地のコストを負担する国内の消費者・納税者。他方の階級は有力な農園主と商人で、彼らは議会を支配し、奴隷貿易などの利益を享受する。
Jean-Baptiste Say argues that home-consumers bear the brunt of the cost of maintaining overseas colonies and that they also help support the lavish lifestyles of the planter and merchant classes (1817) - Online Library of Liberty

仏経済学者セイは、奴隷制を「残酷な生産制度」と非難した。植民地の奴隷制は奴隷主にとって非常に儲かる。奴隷主が奴隷に作らせた本国への輸出品は関税で保護され、コストの多くを本国の消費者と納税者に転嫁できるからだ。奴隷は奴隷主に利益の大半を奪われ、貧困にあえぐ。
J.B. Say argues that colonial slave labor is really quite profitable for the slave owners at the expense of the slaves and the home consumers (1817) - Online Library of Liberty

英哲学者ジョン・ミラーによれば、経済の発展に伴い、前近代社会の柱が土台からぐらつき始める。それは奴隷制だ。奴隷制のような非常に古い制度でさえ、産業・経済の価値観が世界中に否応なく広がるにつれ、崩れていく。諸国が商業で豊かになるにつれ、徐々に廃止されていく。
John Millar argues that as a society becomes wealthier domestic freedom increases, even to the point where slavery is thought to be pernicious and economically inefficient (1771) - Online Library of Liberty

経済学者ミーゼスによれば、欧米の経済発展の要因は、略奪的な軍国主義の精神の抑制にある。軍国主義は伝統的にあらゆる国で富の蓄積を妨げてきた。途上国が経済発展を望むなら、軍国主義の抑制が必要だ。それが植民地支配国のものであれ、自国の左翼・右翼政権のものであれ。
Mises on wealth creation and stopping the spirit of predatory militarism (1949) - Online Library of Liberty

「ベーシックインカム=小さな政府を実現」の虚妄…現実的にデタラメだと証明

本連載前回記事で、「ベーシックインカムが貧困層を救う」という考えは誤りであることを指摘した。ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策のことだが、この利点として流布されている誤った主張はこれだけではない。

それは、ベーシックインカムが政府の規模・権限を小さくして「小さな政府」につながる、という主張である。



これは、ベーシックインカムの原型である「負の所得税」を提唱した米国の経済学者、ミルトン・フリードマンが強調した点でもある。負の所得税とは、一定の収入のない人々は政府に税金を納めず、逆に政府から給付金を受け取るという仕組みである。一定の収入を政府が給付金によって保証するわけで、ベーシックインカムと実質同じといえる。

小さな政府を目指す「新自由主義」の代表的経済学者とされるフリードマンは、1962年に出版した著書『資本主義と自由』(邦訳書は村井章子訳)で、既存の社会保障を負の所得税による最低限の収入保障に置き換えることで、コストが「半分で済む」と推計した。また、社会保障を負の所得税に一本化することにより、「煩雑な行政事務が大幅に簡素化される」とも述べた。

ベーシックインカムが、貧困対策を求める左派勢力だけでなく、小規模で効率的な政府をよしとするエコノミストなどにも受けがいいのは、フリードマンのこれらの主張の影響が大きい。

しかし、ベーシックインカムが小さな政府につながるという考えは、本当に正しいのだろうか。

2020-06-08

収穫の犠牲(マディソン)

米建国の父は、国会議員らの利己的な行動をよく知っていた。マディソンは「収穫」のたとえを使い、事情通で政府にコネのある個人が、規制や法律を利用して利権を得る様子を述べた。抜け目ない一握りの金持ちが政治的な収穫を手にするとき、犠牲になるのは勤勉で無知な大衆だ。
James Madison on the “sagacious and monied few” who are able to “harvest” the benefits of government regulations (1787) - Online Library of Liberty

英経済学者ジェームズ・ミルは、権力者の意図をとことん疑った。政治権力者は監視されないと必ず、「邪な関心」を抱く。見識ある有権者によって適切に選ばれ、厳しく監督されない限り、政治権力者は必ずその地位を利用し、普通の納税者を犠牲にして私利私欲を満たそうとする。
James Mill on the “sinister interests” of those who wield political power (1825) - Online Library of Liberty

英哲学者ベンサムは議会を賭博場に例えた。政治家はばくち打ち、市民の財産は賭けの賞品。不誠実、嘘、偽善、詭弁が勝つための戦術だ。現職者は当面有利で、次を狙う連中は順番が早く来るよう願う。公共の利益という問題について、ばくち打ちたちが考慮することは決してない。
Bentham on how “the ins” and “the outs” lie to the people in order to get into power (1843) - Online Library of Liberty

米政治哲学者ジョン・カルフーンによれば、社会は対立する二つの集団(階級)に分かれる。一方は、税金を支払う人々(納税者)。政府のあらゆる活動は最終的にはその税金を頼りにする。もう一方は、税金に生活を頼る人々(税消費者)。マルクスの混乱した階級論とは大違いだ。
John C. Calhoun notes that taxation divides the community into two great antagonistic classes, those who pay the taxes and those who benefit from them (1850) - Online Library of Liberty

全国民に月額11万支給で話題のベーシックインカムの罠…国民をどんどん貧困に

世界一シンプルな経済学 (日経BPクラシックス)
世界一シンプルな経済学 (日経BPクラシックス)

北欧フィンランドは、約540万人の全国民に月額800ユーロ(約11万円)の「ベーシックインカム」を支給する検討を始めた。2016年11月までに最終決定される見通しで、導入されれば世界初となる。

まだ実際に導入が決まったわけではないが、反響は大きい。日本でも今月このニュースが報じられると、インターネット上で「壮大な社会実験が始まった」「日本も導入を検討してもよい」などと称賛する声が上がった。

ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策である。社会保険など従来の所得保障がなんらかの受給資格を設けているのに対し、無条件で給付するのが最大の特徴だ。

全国民に漏れなく最低限度の収入を保障することで、「ワーキングプアなど従来の社会保障で救えなかった人々も助けることができる」と期待する声がある。

だが、本当にベーシックインカムで貧困層を救うことはできるのだろうか。

ベーシックインカムを支持する人々が、忘れてしまっていることがある。それは、貧しさを救うために本当に必要なのは、お金ではないということだ。必要なのは食品、衣類、住居をはじめとするモノである。お金を食べたり着たりすることはできないのだから。

ベーシックインカム導入後、支給された金額で必要なモノが必要な量だけ買えるのであれば、問題はない。しかし、もしベーシックインカムを導入した影響で国のモノを生産する力(生産力)が落ちてしまうようだと、話は違う。必要なモノが足りなくなり、手に入りにくくなってしまうからだ。

2020-06-07

政府が3万人の国民を殺した仏革命がテロの起源…政府による国民へのテロの恐怖

11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件から1カ月。フランスをはじめとする各国政府は、テロ対策を急ピッチで強化している。そのことを当然と受け止める人々も少なくない。しかし政府の権限強化は国民の自由を奪い、暴走すればテロ以上の脅威となりかねない。テロの起源を知れば、それが理解できるだろう。

パリのテロ事件を受けた各国のテロ対策は、どんどんエスカレートしている。事件の舞台となったフランスでは、オランド大統領が非常事態宣言によらなくても強力な治安対策をとれるよう憲法改正に乗り出す方針を示した。事件後に出した現行の非常事態宣言ではすでに、裁判所の捜索令状なしでの家宅捜索、報道規制、人や車の往来の制限、集会開催や夜間外出の禁止、カフェやレストランの閉店――などを命じることができる。

   

欧米では治安当局が、スマートフォン(スマホ)などによる通信の暗号化技術がテロ組織に悪用されているとして、米アップルと米グーグルに対し、暗号の解読手段を用意するよう改めて要請した。テロの実行犯らは暗号化されていないスマホのショートメールで連絡を取り合っていたにもかかわらず、プライバシーの侵害につながりかねない暗号規制が持ち出されたことで、テロに便乗した規制強化ではないかと議論を呼んでいる。

日本では、共謀罪の新設を求める声が政府・自民党内から出てきた。犯罪を実行せず、準備もしておらず、話し合っただけで処罰の対象にする罪である。戦前、思想の弾圧に使われた治安維持法で、共謀罪に相当する「協議罪」が多用された反省から、戦後日本の刑事法は、ごく一部の例外を除き、犯罪の実行行為があって初めて罰するのを原則としてきた。共謀罪が新設されれば、この原則を根本から崩すことになる。

それでも各国の国民の間には、「テロという非常事態の下では、自由が多少制限されるのはやむを得ない」「政府として当然の対応」といった鷹揚(おうよう)な受け止め方が少なくないようである。国民の安全を守るのは政府の仕事とされているから、多くの人々がそう考えるのも無理はない面はある。

2020-06-06

常備軍の脅威

米建国の父マディソンによれば、常備軍が行政府の拡大と結びつくと、自由を脅かす。外敵の脅威に対する防衛手段はつねに、国内における圧政の道具だ。古代ローマでは反乱を抑えるため戦争を仕掛けるのがつねだったし、欧州では国防を口実に維持された軍隊が人々を隷属させた。
Trump and His Standing Army – The Future of Freedom Foundation

女優ジーン・セバーグは黒人解放を掲げた政治組織ブラックパンサーに傾倒し、FBIに目をつけられた。FBIは彼女が身ごもった子の父親はブラックパンサーだと噂を流し、そのためセバーグは早産する。子供は明らかに白人で、生後数日で死亡。セバーグは40歳で遺書を残し死去した。
Police Bigoted Brutality Isn’t New: The Jean Seberg Story – The Future of Freedom Foundation

米政府の薬物規制は黒人差別の道具だ。差別的な警官に対し、人種隔離時代のような黒人差別の口実を与える。薬物を合法化すれば、人種差別がなくなるわけではないが、差別的な警官から合法的な差別の機会を奪える。警官が民間に転職すれば、差別は不買運動などでできなくなる。
Bigoted Cops and the Drug War – The Future of Freedom Foundation

米国民は、中国が国家の新たな敵だとやみくもに信じ込み、トランプ大統領の貿易戦争で国内の経済の自由が破壊されたことに気づかない。政治支配者が国民に一方的に命令し、他国との貿易を禁じ、違反を罰する。それでどうして国民は自由と言えるだろう。まるで中国ではないか。
Trump Punishes China by Hurting Hong Kong – The Future of Freedom Foundation

米国、規制で自国企業に巨額利益…「薬価55倍へ引き上げ=市場原理主義」批判のデタラメ

米国の製薬会社が今年、エイズやがんなどで免疫力が低下している人の治療に使われる薬剤の価格を一気に約55倍に値上げし、激しく批判された。米国内でも日本など国外でも、この製薬会社の恥ずべき行為や米国での全般的な薬価高騰は「米国に蔓延する市場原理主義がもたらしたもの」とする見方が多い。

しかし、それは本当だろうか。

批判を受けたのは、元ヘッジファンドマネージャーのマーティン・シュクレリ氏が経営する新興製薬会社、チューリング・ファーマシューティカルズ。同社は8月、「ダラプリム」という62年前に開発された感染症治療薬の権利を買い取り、その価格を1錠13.50ドル(約1600円)から750ドル(約9万円)へとつり上げた。命にかかわる病の薬を突然大幅に値上げしたことで、米国では怒りの声が巻き起こった。まだ30代のシュクレリ氏が動画で値上げの理由を軽い口調で説明したことも、火に油を注いだ。



次期大統領選の民主党本命候補、ヒラリー・クリントン前国務長官はこの騒動に乗じ、高騰する薬価に対応するためとして、医療保険の加入者が処方箋薬に払う薬代の上限を月額250ドル(約3万円)に制限する規制案を9月に発表した。
 
米国内外では、シュクレリ氏の行為は市場原理主義の象徴であると受け止める向きが多い。また、米国では薬価が全般に高騰しているが、これは政府が薬価を決める日本などと違い、製薬会社が自由に価格を設定することが原因だとして、やはり市場原理主義が批判の的とされている。

2020-06-05

新たなゾンビ企業

コロナ後に新たなゾンビ企業となるのはクルーズライン、小売り、航空などだろう。本当に自由な市場なら、これらの業界で多くの企業が淘汰されるはずだが、金融緩和策のおかげでそうはならない。これは実体経済にとって最悪だ。資本が非生産的な企業に割り当てられるのだから。
There's No End in Sight to the Zombie Economy | Mises Wire

過去の経済危機では、景気が悪化する中でも業績好調な企業があったものだ。だがコロナ危機ではほぼあらゆる業種で打撃を受け、未曾有の失業が生じている。短期間での失業急増は経済回復を難しくする。消費者への衝撃が大きく、復職できても以前並みの出費に戻りにくいからだ。
An L-Shaped Recovery Is Not an Anomaly, It Is the Norm. | Mises Wire

社会主義の定義とは、政府による生産手段の支配である。社会主義の支持者ですら、この定義を知らない人は多い。マルクスら創始者はこの定義を堅く信じた。ただし社会主義は資本主義に対抗し、民主的な性格がなければならないと考えた。労働者が集団で生産手段を支配するのだ。
Why Socialists Love the Phrase "It's Not Real Socialism" | Mises Wire

米経済学会会長への就任直前に死去した経済学者マルシャックは、ロシア社民党に入党経験のあるソ連シンパだった。計量経済学の創始者の1人で、エールやUCLAなど米国の大学に影響力を及ぼす。計量経済学は主流経済学のいわば業界標準となるが、人間行動への理解を欠いていた。
Progressives and the Origins of the Economic "Consensus" | Mises Wire

TPPは複雑で巨大な管理貿易圏である 一部業界の利益を優先し、国民に高いコスト強いる

今月、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意し、メディアでは「巨大な自由貿易圏が誕生する」と歓迎する論調が目立つ。域内でのモノや人材、サービスのやりとりが盛んになり、経済が大きく活性化することが期待できるという。一方で、TPPを批判する側も「自由貿易で日本の農業は壊滅する」などと指摘している。

しかしTPPとは、ほんとうに自由貿易なのだろうか。

TPPを本来の自由貿易のあり方と比較すると、とてもそうはいえない。そもそも自由貿易をやりたければ、多くの国がわざわざ集まり、多国間交渉で協定をつくる必要などない。それぞれの国が一方的に「わが国では貿易は自由とする」と宣言し、関税や輸入規制を縮小・撤廃すれば済む。



ほかの国が自由貿易に反対で、関税や規制をそのままにしているのに、自分の国だけが関税を引き下げたり規制をなくしたりするのは不利だと考えるのは、間違っている。消費者や輸入品を利用する事業者からみれば、他国がどうしようと関係なく、自国が輸入障壁を低くすれば、海外の商品を安く買えるというメリットを享受できる。

イタリアの経済学者パレートは、「もし自由貿易を正しいとみなすなら、貿易協定をつくる理由はなくなる」と述べている。「なぜなら、協定で解決すべき問題がなくなるからだ。各国が商品を国に自由に出入りさせるのだから」。

ところがTPPは周知のように、多くの政府関係者が税金を費やして集まり、協定案をつくった。その内容も、本来の自由貿易ならば上記のように「貿易は自由とする」とシンプルなもので済むはずなのに、複雑極まるものとなっている。関税の引き下げを何年もかけて小刻みに行う、国別の輸入枠を設ける、これまでの輸入枠と別に「TPP枠」を新設する、そのTPP枠を品目ごとに設定する……。新聞などで解説を読んでも、すんなり理解できる人がどれくらいいるだろうか。

2020-06-04

都市封鎖と暴動

米国で都市封鎖が暴動をもたらした3つの要因。(1)在宅・休業命令によって3000万人を超す大恐慌以来の大量失業を招いた(2)学校、教会、カフェ、バー、図書館、理髪店など市民交流の場を破壊した(3)都市封鎖に違反するささいな行為が犯罪とみなされ警察と市民の対立が強まった。
Three Ways Lockdowns Paved the Way for These Riots | Mises Wire

黒人暴行死を契機とした暴動では、警官は暴徒の数を大きく上回っていても、市民を暴行や略奪から守らなかった。市民と政府は「社会契約」を結んでいると言われるが、実際には一方通行だ。市民は警察の「サービス」に税金を払うが、警察が見返りをくれるかどうかはわからない。
Minneapolis Riots Are a Reminder That Police Don't Protect You or Your Property | Mises Wire

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は都市封鎖の緩和に反対していたが、その主張を放棄した。CNBCのインタビューに答え、このまま封鎖を続けると、「取り返しのつかない損害」をもたらすと認めた。彼のような官僚には、富が健康のカギだと理解できない。
The Cost of Lockdowns in Human Health and Human Lives Is Becoming Increasingly Clear | Mises Institute

米国で州や都市が経済封鎖の解除を迫られる理由。(1)失業。多くの州で失業率が過去最高に。石油・ガス産業は市況悪化で深刻(2)税収。多くの州や町で税収が20%以上減。年金財源の不足も(3)学校。秋学期まで休校が続くと、共働き家庭中心に保育所などの出費。税金と二重の負担。
3 reasons states will reopen regardless of what Trump says | TheHill

GDPは経済の実力を反映しない 膨大な防衛費と無駄な公共事業でかさ上げし放題

代表的な経済指標である国内総生産(GDP)が、あらためて関心を集めている。安倍晋三首相が9月24日の記者会見で、アベノミクス第2ステージの目標として、「GDP600兆円の達成」を掲げたからである。

GDPとは、国内で1年間に新たに加わった物やサービスの価値の総和を計算したもの。GDPが1年間で伸びた率は、経済成長率と呼ばれる。政府やメディアはいつも、GDPが増えれば日本の経済は明るいとはしゃぎ、GDPが減れば深刻な顔をして景気対策を打つべきだと叫ぶ。



しかし、そもそもGDPとは、どれほど信頼できるものなのだろうか。本当に経済の豊かさを測る物差しとしてふさわしいのだろうか。

2020-06-03

警察の軍隊化

米国では伝統的に軍隊による法執行が禁じられてきた。だから欧州のような憲兵が存在しない。1878年の民警団法で、国内の治安維持に陸軍・空軍を動員することを禁止。しかし1920年代の禁酒法以降、伝統は崩れていく。酒密売で成長した暴力団に対抗し、警察の軍隊化が始まった。
Weapons of War on our Streets: A Guide to the Militarization of Police | | Tenth Amendment Center

1967年、米連邦最高裁は「適格免責」の考えを初めて示した。ミシシッピ州での公民権運動のデモに警察が暴力を振るったことについて、警官が「誠意と相当な理由」をもって法を執行したのであれば、法的責任に問われるべきではないとの判断を示した。今では殺人さえ免責される。
Opinion | George Floyd, Police Accountability and the Supreme Court - The New York Times

白人警察官による米ミネソタ州の黒人暴行死事件に抗議する人々は、放火や略奪をやめ、警官の免責を促進してきた議員や裁判官に怒りを向けるべきだ。1982年、連邦最高裁は公務員に対し、はっきりと確立された憲法・法令上の権利を侵害しない限り、免責されるとの判断を示した。
Cops Kill Because We Gave Them The Legal Framework to Do It | The American Conservative

米国防総省が余った軍備を国内各地の警察に譲渡する1033計画によって、手榴弾発射器、装甲兵員輸送車、M16自動小銃、ヘリコプターなどが警察に渡った。警察はしだいに軍隊化が進んだ。警官が黒人男性の首を膝で押さえただけで死に至らしめたのなら、手榴弾など必要だろうか。
Maybe We Should Stop Giving the Minneapolis Police Military Equipment | The American Conservative

短期利益志向と株主優先主義が企業を滅ぼす、はデタラメである 真犯人とは?

資本主義の下では企業の短期志向(ショートターミズム)が強まる。目先の株価上昇や配当増加のことしか考えない株主が、四半期ごとに多くの利益をあげるよう経営者に求めるからである。これでは長期の判断にもとづく投資ができず、国の経済は衰退してしまう――。

こんな意見をよく耳にする。しかし、短期志向の「犯人」はほんとうに資本主義なのだろうか。



ショートターミズムに対する批判で最近注目を集めたのは、米民主党の次期有力大統領候補、ヒラリー・クリントン氏の発言である。同氏は7月、ニューヨーク大学での講演で、企業経営者が株主からの圧力によって短期的な好業績を求められる傾向を「四半期資本主義」と批判。上場企業は技術革新、資本、労働者の訓練、賃金などにお金を回さず、自社株買いや配当に費やしていると指摘した。同氏は「資本主義はバランスを失っている。修復が必要」と強調。長期的な成長を促すため、株式のキャピタルゲイン(譲渡益)課税を見直し、税率が安くなる長期保有の期間を現行の1年以上から、2年以上に厳格化するなどの提案を行った。

課税強化で実際に短期志向が是正されるかどうかはともかく、クリントン氏によるショートターミズム批判そのものには、共感する人が多いかもしれない。しかし、短期志向が資本主義の行きすぎのせいだという同氏の主張は、ほんとうに正しいだろうか。

2020-06-02

ステイホームの前提

コロナ流行が20年前だったら「ステイホーム」はどんな様子だったろう。アイフォーンもウーバーイーツもネットフリックスもズームもなく、アマゾンには本、CD、DVDしかなかった。都市封鎖は富豪が生んだこれらサービスの存在を前提としている。富の格差を非難してはいけない。
Dear Nail-Biting Lockdown Lovers, You Can't Love the Lockdowns and Hate the Rich | RealClearMarkets

どんなレストランにもお構いなしに持ち帰り対応を求めるコロナ対策は、料理人たちの才能に対する侮辱だ。彼らの仕事への愛は、金の問題ではない。政治家は、自分だけのやり方でお客に尽くすことに命をかけてきた人々に対し、才能をプラスチックに包んで売れと言っているのだ。
Politicians Have Forced Chefs to Wrap Their Genius In Plastic | RealClearMarkets

1957-58年に流行したアジアインフルエンザで、米国人は100万人あたり660人超が死亡した。新型コロナによるこれまでの死者の2倍以上だ。ところが経済への影響は非常に小さかった。現在の経済への打撃は、ウイルスそのものよりウイルス対策によるものであることを物語っている。
Why Didn't the 1958 and 1918 Pandemics Destroy the Economy? Hint: It's the Lockdowns | Mises Wire

新型コロナウイルスに対する政府の対応は、南北戦争時の素人軍医に似ている。5万人以上の兵士が戦闘後に手術で手足を切除された。手足はしばしば銃弾で打ち砕かれ、間に合わせの軍医が知っている唯一の手当てが、切除だった。衛生管理はずさんで多くの不要の死をもたらした。
Hacksawing the Economy: How Lockdowns Are in the Tradition of Civil War Surgeons | Mises Wire

「戦争は経済を活性化させる」は、デタラメである なぜ戦争が終わると不況になる?

今月16日、安全保障関連法案が衆議院で可決された。これは、自衛隊法などの改正を一括して行う「平和安全法制整備法案」と、自衛隊による米軍などの後方支援を可能とする「国際平和支援法案」の2本立てである。法案成立をめぐっては、国会周辺で人々が「戦争反対」のプラカードを掲げて演説を行ったり、一部のメディアや識者から「日本が戦争をしやすくなる環境が整いつつある」といった指摘もなされるなど、国民的な議論が起こっている。

このように「戦争」という言葉がにわかにクローズアップされつつある中で、「戦争は経済に利益をもたらす」という主張をよく耳にする。戦時には武器や弾薬、兵士の食糧などが大量に必要になり、それらを扱う企業が儲かる。さまざまな技術が戦争をきっかけに開発される。戦争が終わると、戦時中に破壊された多くの住宅やビルが建て直され、経済活動を刺激する――。だから戦争は悲惨であっても、国を経済的に豊かにする、というのである。

しかし、これは本当だろうか。

   

米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは、第二次世界大戦終結直後の1946年に出版して以来ロングセラーとなっている著書『世界一シンプルな経済学』(村井章子訳/日経BP社)で、戦争が経済にプラスに働くというこの説を取り上げ、それが間違っていることを明らかにしている。

ハズリットはまず、「割れた窓ガラス」という寓話を紹介する。悪童がパン屋の窓ガラスを割る。それを見た近所の人が「窓を割られたのは不運だったが、悪いことばかりでもない」と言い合う。「例えば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」。代金を得たガラス屋は、その分かそれ以上を別の店で使うだろう。その店の主人はまたその分を……という具合で、割れた窓ガラスは、次第に大きな範囲で収益と雇用を生むことになる。すると、この寓話の結論はこうなる。「ガラスを割った悪童は、町に損害を与えるどころか、利益をもたらしたのだ」

さて、この結論は正しいだろうか。ハズリットは次のように異を唱える。たしかに悪童のいたずらは、とりあえずガラス屋の仕事を増やす。だが実はパン屋の主人は、窓ガラスの修理代金で礼服を買うつもりだった。それが250ドルだとすると、パン屋の主人は、以前は窓ガラスと250ドルの両方を持っていたのに、今では窓ガラスしかない。窓ガラスと礼服の両方を手にする代わりに、窓ガラスのみで満足し、礼服は諦めざるを得なくなったのである。

「パン屋の主人を地域共同体の一員と考えれば、この共同体は仕立てられるはずだった礼服を失い、貧しくなったことになる」

つまり窓ガラスを割ったことで共同体が豊かになるという考えは間違いなのだ。しかし世間の人々の多くは、寓話に登場した近所の人のように、破壊が社会を豊かにするという錯覚に陥りがちである。

なぜか。

それは「人は、直接目に映るものしか見ない」からだとハズリットは指摘する。「人々は、翌日か翌々日にもパン屋に真新しい窓ガラスが輝くのを見るだろう。だが注文されずに終わった礼服を見ることはない」。だから目の前の新しい窓ガラスだけに気を取られて、手に入るはずだった礼服を失ったことに気づかない。パン屋の主人は、やむを得ず窓ガラスを修理するという選択をしたために、礼服で得られる満足を失った。

2020-06-01

ビザンツ帝国と「中世のドル」

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、米ドル相場の下落が加速している。3月9日の東京外国為替市場では約3年4か月ぶりに1ドル=101円台まで円高ドル安が進んだ。ドルはユーロなど他の通貨に対しても下落し、全面安の様相を示している。

金融市場では、コロナウイルスの感染拡大によって米国が景気後退局面に突入する可能性が高まり、ドル安を招いたとの見方が多い。けれども、より根の深い問題を無視できない。それはドルの信認を揺るがしかねない、巨額の政府債務である。

米国の連邦政府債務は23兆ドルを突破している。同国の中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2月、議会上院銀行委員会での証言で、債務残高の増加ペースが経済成長率を上回れば返済が困難になる恐れがあると憂慮を示した。

ところで、米ドルの略号「$」は、ソリドゥス金貨(Solidus)のSに由来するといわれる。ソリドゥス金貨はローマ皇帝のコンスタンティヌス帝によって創設され、その後長い間、信頼の高い通貨として広範な地域で用いられた。このため「中世のドル」とも呼ばれる。流通の中心地となったのはビザンツ帝国(東ローマ帝国)である。

コンスタンティヌス帝は330年、ビザンティウムに遷都し、コンスタンティノープル(現イスタンブール)と改称した。コンスタンティノープルは、アジアと欧州を結ぶ陸の交易路と、国会と地中海を結ぶ海の交易路との交点に位置したために、繁栄の条件を備えていた。


首都をはじめとして、都市は交易活動でにぎわった。ソリドゥス金貨は地中海周辺で使われるだけでなく、イランやエチオピアの商人によって、遠くインドにまで運ばれた。

現代のドルは米政府が発行している点を除けばただの紙切れだが、ソリドゥス金貨の場合、その信用は貨幣自体が含有する黄金にあった。4世紀の創設以来、11世紀頃までほぼ純金という高品位を保った。ソリドゥスとは「完全な純度をもつ」という意味だが、その名にふさわしい。

ソリドゥス金貨が高い品質を保ったのは、ビザンツ帝国の政府が無駄な支出を抑え、健全な財政を維持したことの反映である。

ビザンツ帝国の政府は「小さな政府」だった。たとえば官僚制である。ビザンツの官僚制と言えば、膨大な数の役人がおり、手続きやしきたりにうるさく、非能率で、賄賂やコネがまかりとおり、国の富を食いつぶす魔物のような存在、というイメージが流布されてきた。

しかし「このイメージは、少なくとも8世紀から10世紀の発展期に関する限りあてはまらない。まったく逆である」と、歴史学者の井上浩一氏は指摘する。9~10世紀の中央各官庁の定員を調べると、その数は想像されるよりはるかに少なく、下級の書吏を除けば、わずか600人余りだという。井上氏によれば、今日「小さな政府」とか「安上がりの政府」などと呼ばれるものを、発展期のビザンツ帝国はもっていた(『生き残った帝国ビザンティン』)。

たしかに高級官僚は驚くほどの高給をもらっていた。だが、その人数は限られていたから、官僚に支払われる給料の総額もたかが知れていた。井上氏の別の著書によれば、下級の書吏や使い走りは定められた手数料を受け取るか、高級官僚によって私的に雇われていたので、国家財政の負担とはならなかった(『ビザンツとスラヴ』)。