2018年7月19日木曜日

政府の「市場ごっこ」

政府の「市場ごっこ」
官僚が定める価格や手数料は、実際の市場価格と違い、人を慎重に行動させる強い動機にならないし、〔市場から〕多くの情報を得ることもできない。税や公定手数料を巡る政治的争いは避けられず、結果は経済合理性(economic rationality)からかけ離れたものになる。
Why Environmentalists Need to Understand Economics

民間人登用の限界
官庁の部門の長にビジネスマンを任命し、改革を唱えるのは無駄である。企業家の素質が本来備わるのは、人格(personality)ではなく、市場社会の枠組みに占める地位である。政府機関で働く元企業家は、もはやビジネスマンではなく、官僚である。
Why Businessmen Fail at Government

政府に「顧客サービス」は無理
政府の運営方法は企業とは違う。政府機関は、事業にとどまれるよう消費者の需要(consumer demand)を満足させるという難しいテストを受けなくてよい。競争は禁止されている。消費者が満足しているかどうかを判断する手段がない。
Government Agencies Don’t Offer “Customer Service”

社会保険は保険ではない
一部の加入者が保険をかけたくない状況、それどころか決して適用されない一定の偶発事象(男性の妊娠費用など)まで広くカバーするよう保険に求めると、保険制度を過大な保険料と相互補助(cross-subsidies)の複雑なシステム、つまり福祉制度に変えてしまう。
Whatever You Call This Health Care Mess, It's Not Insurance

社会主義という不正義

社会主義という不正義
社会主義の最大の売り、それは経済的平等(economic equality)の約束。イデオロギーにうぶな多くの人々は、それをすばらしい正義だと信じる。しかし現実には、個人の才能や環境は千差万別。この違いを無視して政府の力で経済的平等を実現するという思想ほど、不公正で罪作りなものなはい。
Economic Equality—Socialism’s Unattainable, Undesirable Pie in the Sky

社会主義は道徳を破壊する
社会主義は暴力によって支えられているだけでなく、道徳的に腐敗している。 嘘、盗み、監視が横行し、人間どうしの信頼は消え失せる。 人々の絆(brotherhood)を育むどころか、あらゆる人々を疑い深く、怒りっぽくする。
Under Socialism, Morality Is Scarcer than Bread

人にやさしい政策
独占企業の国有化。小売大手の公有化。福祉目的の土地収用。不動産投機の禁止。教育制度の拡大。学校の無料化と奨学金・教育補助金の充実。環境保護と国民の健康増進。いいね! 政府の新しい政策パッケージ? いいや、国家社会主義ドイツ労働者党、別名ナチ党(Nazi Party)の1941年綱領。
The Demands of Antifa and the Original Fascists Have a Lot in Common - Foundation for Economic Education

ベネズエラの教訓
若者はひどく理想主義的で、社会主義の甘いささやき(siren call)にとらわれやすい。米国の不完全な市場経済と民主主義を見て、ベネズエラのような社会主義国はより良い生活を送らせてくれると思い込む。しかしそれは誤りだとベネズエラの人々は気づいた。
What Venezuela Can Teach Young Socialists

2018年7月18日水曜日

雇用の強制

雇用の強制
政府、骨太方針で「65歳以上を一律に高齢者と見るのは、もはや現実的ではない」。企業が本当に自らの意思で高齢者を雇うのなら結構。しかし事実上の強制は明らか。企業は代わりに若者を雇わなくなり、世代間の感情対立が激化。生産性が落ちて高齢者自身も貧しくなるでしょう。
浮上する「70歳定年制」: 日本経済新聞

誰が小学生を殺したか
大阪北部地震で女児らが犠牲になった小学校のブロック塀倒壊。異様に高かった道路からの高さ。耐震規制の対象は校舎や体育館のみ。学校は安全のためブロック塀下の通路を通るよう指導。これは危険な公道という欠陥商品を放置した行政のしわ寄せ。民間なら即アウトの案件続々。
倒壊のブロック塀「通学路から非常に高く危険」 | NHKニュース

仮想通貨の暗鬱な未来
仮想通貨で自主規制案。匿名性の高い通貨を排除。仮想通貨の魅力の一つである財産のプライバシーが消滅。交換会社は人員増やシステム投資が必要に。財務が強固な大手でなければ事実上操業困難で、スタートアップは参入できず。輝かしく見えた仮想通貨は一転平凡な規制業種に。
仮想通貨 顧客保護へ一歩 自主規制案 追跡不能な通貨排除 交換会社淘汰へ:日本経済新聞

公正は不公正
企業に投資する目的の一つは技術の習得であるはず。ところが米トランプ政権は中国企業による投資を「不公正(unfair)」と非難し規制へ。政府は言葉の意味など気にしません。シェイクスピア「マクベス」の魔女のように、公正(fair)なものも違反(foul)と呼んで平気です。
対中制裁「次は投資規制」 米通商代表、月内に発表:日本経済新聞

チーズはどこへ消えた?

先日、日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)で大枠合意した際、「政治的事情に基づいて、政府が関税や輸入制限など多数の規制をかけるようでは、とても胸を張って自由貿易とは呼べません」と辛口のコメントをしました。その見方は間違っていなかったようです。

今回の記事にあるように、EU産チーズは主に29.8~40%の関税がかかっていますが、大枠合意では低関税輸入枠をつくります。税率を段階的に引き下げて16年目にゼロにし、枠の数量は2万トンから16年目に3万1千トンまで引き上げます。対象はモッツァレラなどソフト系チーズです。

しかし消費者への恩恵は限られそうだと記事は指摘します。枠を超えた分は今の高関税が残るうえ、そもそも3万1千トンという輸入枠自体、チーズ全体の消費量の7%(想定ベース)にすぎないからです。安くふんだんに手に入ると思っていた欧州産チーズがどこに行っても見当たらず、困惑する消費者の姿が目に浮かびます。

今回の大枠合意は、チェダーなどハード系チーズの関税撤廃に応じる代わりにソフト系の関税を一定程度残した環太平洋経済連携協定(TPP)との「バランス」も考慮されたそうです。本当の自由貿易なら、消費者はそのような政治判断に基づいてチーズを選んだりしません。

日欧EPAの目玉とされるチーズですら、その実情はこうなのですから、他は推して知るべしでしょう。とても米国の保護主義を上から目線で批判する資格はありません。もっと立派な「自由貿易の旗」を掲げてもらいたいものです。(2017/07/18

政対官の八百長

政対官の八百長
首相周辺に仕える官邸官僚の力増す。各省が競って人員を送り、内閣官房の定員は2001年3月末の約370人から18年3月末には約3倍の約1120人に膨張。「政治家対官僚」という対立の構図はしょせん八百長。政治家も官僚も権限と予算の拡大が大好きで、ぐるになり国民の自由を奪う。
(政と官 ゆがむ統治)(2)官邸官僚増殖、しぼむ改革論:日本経済新聞

政府は未来を予測できるか
東京都、マンション規制が議論に。これまで本格的な規制に踏み込めなかったのは、都心で住宅がどの程度必要なのか目標が定まらなかったためだとか。それはそうでしょう。どんなに優れた官僚集団も、消費者が将来何をどれだけ必要とするか、正しく予測することはできません。
東京都心、手探りのマンション規制(真相深層):日本経済新聞

税金でキャッシュレス
政府、中小小売店や飲食店のキャッシュレス化支援へ端末配布やポイント補助案。消費増税による消費者の負担を和らげる狙い。でも端末やポイント補助の原資は結局税金。店舗側も税務署に売上が筒抜けになる脱現金をどこまで進めたいか疑問。蜘蛛の巣の張った端末が目に浮かぶ。
中小の小売店や飲食店、キャッシュレス化支援 政府:日本経済新聞

シェア禁止の世界
通信の自由侵害の懸念をよそに、政府有識者会議が海賊版サイト規制へ検討着手。家や車は所有者が自由にシェアできるのに、著作権の名の下に許されない本の世界。いつもは反権力を気取る出版業界から「早く規制を」と期待の声。海賊たちの冒険物語が許されるのは漫画の中だけ。
海賊版サイト遮断に期待と懸念 法整備の議論始動:日本経済新聞

規制は暴政

規制は暴政
収入を補助するだけでは貧困対策にならない。政府の規制は生活コストを押し上げる。都市計画(zoning laws and urban growth boundaries)で住宅は値上がりする。規制で保育費が高くなる。農業政策で食料が値上がりする。再生可能エネルギーへの補助政策は物価を押し上げる。ライドシェアへの規制で移動コストが高くなる。
The War On The Poor Has Many Fronts And Armies, Professor Krugman | Cato @ Liberty

移民規制は地方に任せよ
米議会で審議中の新移民法案は、就労ビザの規制を各州に委ねる。連邦政府は引き続き入国審査と保安検査を担当するものの、州が移民の身元を確認し、州内での活動を規制する。全米共通で画一的な移民法は役に立っていない。連邦政府は各州に就労ビザの規制を任せてみるべきだ。連邦制度で現在各州は教育、福祉、麻薬政策を実験的に委ねられ、成功を収めている。新移民法案はそれらの実験に移民政策を加えるものだ。
Alex Nowrasteh, The States Should Decide Who Gets a Visa

次はナイフ規制?
ロンドンの1〜3月殺人件数、ニューヨークに並ぶ。銃規制で殺人が減るという通説が正しいなら、ありえない事態。英国は1920年代以前、銃規制がなかったにもかかわらず、殺人発生率は低かった。最近はナイフによる殺人事件が増加。ついにキッチンナイフ(kitchen knives)の規制を求める声も。
London Homicides Now Matching Those in NYC | Mises Institute

規制より厳しい措置を
「規制(regulations)を歓迎」とフェイスブックのザッカーバーグCEO。それは政府への迎合でなく本音。市場で会社の地位を守るには競争を制限するほうが楽だから。挑戦するベンチャーは資本力が弱く、規制の重荷に耐えきれない。フェイスブックの支配を許したくないなら、自由競争が最善。
Don't Regulate Facebook — That's What Zuckerberg Wants | Mises Wire

2018年7月17日火曜日

民泊新法で民泊滅ぶ

民泊新法で民泊滅ぶ
民泊撤退ビジネスにぎわう。民泊をやめた物件を借り上げ月決め賃貸マンションにする「撤退110番」。中古家具がまとめて出品された個人間売買サイトの「民泊撤退セール」。民泊新法による煩雑な手続きやコスト増で継続断念相次ぐ。「透明な市場づくり」が招いた皮肉な光景。
民泊「撤退」ビジネスにぎわう 会議室転用や家具処分:日本経済新聞

自由なき解禁
民泊新法の施行でエアビーの掲載停止相次ぐ。掲載中の約2万件に対し停止中が約12万件。要件満たさないと刑事罰もあり、副業解禁のかけ声と裏腹にサラリーマンの民泊経営は困難に。料金トラブルや近隣住民とのトラブルなど民間で解決可能な問題にかこつけた規制がつぶす未来。
民泊で小遣い稼ぎ 要件満たさないと刑事罰も|マネー研究所|NIKKEI STYLE

民泊規制の町
個人の民泊断念相次ぐ。「家主不在は1時間まで」など自治体の厳しい規制が障害に。それでも中央政府による全国規制よりはましです。人は規制のメリットとデメリットを比べ、差し引きでメリットの大きな町に住むことを選び、デメリットの大きな町を敬遠し、立ち去るでしょう。
個人の民泊、規制が障壁 「家主不在は1時間まで」: 日本経済新聞

価格競争は善
民泊、6月解禁でホテルの価格競争促す。営業日数など制約は多いものの、既存ホテルの足元を揺るがす。価格競争はホテル従業員に低賃金を強いる? 人々の宿泊費が下がれば、節約したお金が投資から生産に回り、生活コストを安く。それは賃金の下がったホテル従業員も助けます。
民泊、価格競争促す ホテル宿泊料9%減:日本経済新聞

著作権は何のため

著作権法第1条には同法の目的がこううたわれています。「この法律は〔略〕文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」。しかし本当に「文化の発展に寄与」しているのか、疑問に思うときがあります。

著作権を法律で定める理由として、こんな説明がされます。音楽や小説、絵画といった著作物は自然に生まれるものではなく、著作者が労力をかけて創作するものである。創作した著作物が利用されるときに正当な対価を得られることは、創作に携わる人の創作活動や暮らしを支えるために大切だ。次の世代が創作を志す意欲にもつながる--。

一見もっともらしいのですが、考えてみると奇妙です。著作権の保護に関する法律が欧州で初めて作られたのは、せいぜい18世紀から19世紀にかけてのことです。つまり、それ以前の芸術家や文学者は著作権法で保護してもらえませんでした。

アイスキュロス、シェイクスピア、ミルトンといった文学者も、バッハ、モーツァルト、ベートーベンなどの作曲家も、ダ・ビンチ、レンブラント、ゴッホといった画家も、その創作物は著作権法で守ってはもらえませんでした。それにもかかわらず、旺盛な創作意欲で、後世の私たちにすばらしい作品の数々を遺してくれたのです。

芸術家には貧しさに苦しんだ人もいますが、誰もがそうだったわけではありません。シェイクスピアは故郷で大きな屋敷を買うほど金持ちになりました。戯曲を出版して稼いだからではありません。人気劇団の株主だったからです(河合祥一郎『シェイクスピアの正体』、新潮文庫)。

ひるがえって現代。記事にあるように、音楽教室での先生や生徒の演奏について著作権使用料を徴収するという日本音楽著作権協会(JASRAC)の決定が波紋を広げています。同協会の運営方針の是非だけでなく、著作権制度そのものを問い直すときに来ているのかもしれません。(2017/07/17

学校が子供を苦しめる

学校が子供を苦しめる
ある研究者によると、注意欠如・多動性障害(ADHD)と呼ばれた子供たちの行動、気分、学習は、旧来型の通学をやめると全般に改善した。アンスクーリング(unschooling)のように子供が自分の学習をコントロールできる場合、結果は特に良好だった。
Is School Driving Kids Literally Crazy?

学習の自由、学校の不自由
写真家アンセル・アダムスの父は息子が12歳のとき、なじめない学校をやめさせ、自宅学習に変更。好きなことを自由に学ばせた。国際博覧会のパスを渡し、「お前の学校だ」。息子は家族で訪れたヨセミテ渓谷(Yosemite Valley)に魅せられ、写真を撮り始める。創造力は自由で花開き、強制でしぼむ。
Ansel Adams Was Unschooled (How to Solve America's Creativity Crisis) - Foundation for Economic Education

さらば学歴競争
労働市場における大卒者の価値は、仕事に役立たない専攻科目ではなく、辛抱して卒業した事実にある。経済学者のいうシグナリング(signaling)効果だ。これは果てしない学歴競争につながり、社会にとって大いなる浪費である。学校教育中心の社会はもういらない。職業現場の訓練を見直そう。
What’s College Good For? - The Atlantic

大学以外の選択
経営者はたしかに大学の序列を気にするが、それは企業価値を生む人材の目安として便利だからにすぎない。知的職業に就く準備をするため、大人として最初の4年を大学で過ごすのが最善とは限らないし、価値創造能力を示す唯一の道でもない。まずは自分のウェブサイトを作ろう。
Best Alternative to College: Launch Your Career Now - Foundation for Economic Education

2018年7月16日月曜日

物価安を素直に喜ぼう

物が安く買えるのは、うれしいものです。ところが今の日本は、この素直な気持ちを口に出すのがはばかられるような空気があります。「デフレ脱却」がお国の目標として掲げられているからです。物価安を無邪気に喜ぶのは、経済に無知な証拠なのでしょうか。

政府・日銀はデフレから早く脱却しなければならないと主張してきました。デフレとは物価が持続的に下がることです。日銀は4年前に物価2%上昇の目標を掲げ、量的金融緩和やマイナス金利など前例のない政策を動員してきましたが、当初期限としていた2年を大幅に過ぎた今も、達成のメドすら立っていません。

そもそもデフレはなぜ良くないのでしょう。政府・日銀によれば、経済成長を妨げるからだといいます。たしかに1930年代米国の大恐慌など、デフレと経済の縮小が同時に起こったこともあります。しかし他の国や時期を見ると、むしろそうでない場合が多いのです。

国際決済銀行(BIS)が2015年3月に公表した報告書によれば、38カ国・地域について1870年までさかのぼって調査した結果、デフレ時に経済成長率が大きく低下したのは大恐慌のときだけだったそうです。

もしそうだとすれば、これまでさまざまな副作用を伴いながら推し進めてきたデフレ対策はいったい何だったのかという話になりますが、それはここでは立ち入りません。少なくとも、物を安く買うことに後ろめたさを感じなくてよいことは確かです。

記事によると、ガソリンや航空機の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)に原油安の恩恵が広がり、値下がりしているそうです。あなたが日銀総裁でなければ、渋い顔などする必要はありません。物価安を素直に喜び、夏を思い切り楽しみましょう。(2017/07/16

経済統計は政府の仕事か?

国内総生産(GDP)、失業率、物価指数--。政府はさまざまな経済統計を定期的に集計・公表し、世間はそれを当然のように受け止めています。しかし経済統計の作成とは、そもそも政府がやるべき仕事なのでしょうか。

経済統計というと、政治的に中立な無味乾燥なデータというイメージがあるかもしれません。しかしそれは違います。いずれもはっきりした政治の意図によって生み出されたものです。一言でいえば、経済政策の正当化です。

経済統計の歴史はそれほど古くありません。GDPの前身である国民所得が米国で普及したきっかけは、1930年代の大恐慌でした。のちにノーベル賞を受賞する経済学者クズネッツがルーズベルト政権の求めで国民所得を試算し、報告書にまとめたところ、大恐慌の始まった1929年から1932年までの間に半減したことが明らかになったのです。

この衝撃的な報告書は市販され、不況にもかかわらずベストセラーになりました。ルーズベルト大統領はこのデータを追い風に、公共事業を柱とするニューディール政策を推し進めたのです。しかし、公共事業が不況克服に役立ったかどうかは、経済学者の間で議論が分かれます。

政府にとって、統計は政策を正当化する口実にすぎません。だから定義を自分に都合よく変えることもあります。

クズネッツは国民所得に政府支出を含めませんでした。軍事費や経済活動の前提にすぎないインフラ整備費は、国民の豊かさを測るにはふさわしくないと考えたからです。しかし公共事業を拡大し、第二次世界大戦に向けて軍備を強化していたルーズベルト政権は、それでは都合が悪いので、政府支出を加えました(ダイアン・コイル『GDP』、みすず書房)。

この名残で、今でもGDPには政府支出が含まれます。だからどう見ても無駄な公共事業でも、GDPに計上されて経済成長率が高まったことになるのです。

記事によると、GDPを集計する内閣府ではエコノミスト不足に悩んでいるそうです。しかし最近は民間に膨大なビッグデータが蓄積され、政府の統計よりも役立つ分析がいくらでもできます。政府がわざわざ税金を使って経済統計を作成すること自体、考え直すときではないでしょうか。(2017/07/16

現金廃止論の矛盾

現金廃止論の矛盾
現金は犯罪者が利用するから廃止せよといわれる。しかし紙クリップや歩道、弁護士だって犯罪者に使われるが、誰も廃止せよとはいわない。資金洗浄(money laundering)やテロ支援に一番利用されるのは銀行で、二番目は会計事務所。現金は三番目にすぎない。なぜ銀行や会計事務所を廃止しないのか。
The War on Cash Is Even Worse than It Seems | Mises Wire

現金放逐への懐疑
キャッシュレス先進国のスウェーデンで懐疑論。世論調査で70%近くが現金を選択肢に残すのに賛成。「通貨が完全にデジタル化されたら、システムを止められたとき自分を守る術がない」と反対派。他国に侵略されるリスクに加え、自国政府がいつも割合善良(benign)である保証はない。
'Being cash-free puts us at risk of attack': Swedes turn against cashlessness | World news | The Guardian

現金は監視されない
日本とともに現金使用率の高いドイツ。キャッシュレス化に反対する議員(緑の党)は「現金は監視されないから」。ナチスと東ドイツの恐怖政治の記憶が背景に。資金洗浄に悪用されるとの意見には、だからといって現金を廃止するのは「小鳥を撃つのに大砲(cannon)を使うようなもの」。
Germany Is Still Obsessed With Cash - Bloomberg

現金廃止で起こること
現金廃止で起こること。⑴経済のプライバシーが危うくなる。政府が銀行に顧客の身元確認や取引記録の提供を求めれば、丸裸にされる⑵マイナス金利による法に基づかない課税から逃れられなくなる⑶現金取引に頼る中小事業者に不便を強い、取引コストの上昇で貧困層を苦しめる。
The Curse of the War on Cash | Cato Institute

2018年7月15日日曜日

お金は市場が育む

私たちは子供の頃から、お金は政府が発行するから信頼され、通用するのだと教えられてきました。しかしそれは正しくありません。

人類の歴史上、長らくお金として使われた金(きん)は、政府が作ったものではありません。他の金属や布、穀物などもお金として一時使われましたが、金が一番愛用され、最後に残りました。お金は市場が生み、競争によって育まれたのです。

政府・中央銀行が発行する紙幣は、金との引換券にすぎませんでした。この仕組みを金本位制といいます。金本位制は1971年のニクソン・ショックまで続きました。つまり、お金が政府の権威以外に何の裏付けもない紙切れ(不換紙幣)になってから、まだ50年も経っていません。

そして今、市場がお金を育む時代が、再びやって来ようとしています。仮想通貨の隆盛です。民間で発行されたさまざまなお金がしのぎを削る姿は、少し前まで想像もしなかったものです。記事が伝える激しい値動きや、発行方針の対立による分裂の危機に不安を感じる人も少なくないでしょう。

しかしだからといって、政府に仮想通貨の規制や「ルール」の整備を求めるのは正しくないでしょう。政府が市場経済を規制してうまくいったためしはないからです。政府自身、わずか半世紀足らずの不換紙幣の時代に大量のお金を刷りまくり、その価値をおとしめたことを思えばなおさらです。

経済学者ハイエクはニクソン・ショックの5年後、市場競争は「政府がこれまで生みだしてきたよりも良い貨幣を生みだすように思われる」(『貨幣論集』春秋社)と述べています。仮想通貨の時代は始まったばかり。目先の動きに一喜一憂せず、その進化を見守りたいものです。(2017/07/15

2018年7月14日土曜日

資本主義は女性にやさしい

資本主義は女性にやさしい
フェミニズムは男性上位(patriarchy)を資本主義や欧米社会と結びつけたがる。実際には資本主義の発達した国ほど女性差別は少ない。女性差別の少ない上位20カ国のうち19カ国は欧米諸国(1カ国はシンガポール)。女性差別の多い20カ国のうち15カ国はイスラム諸国、5カ国はアフリカ諸国だ。
Western Capitalist Countries are the Best Places to be Born a Woman | Mises Wire

女性を解放する資本主義
世界中のどの個人も他人と同じではない。この違いのおかげで、人はそれぞれ最も素質と関心のある分野に専念できる。資本主義の下ではこの分業が高度に発達する。その結果、女性は伝統的な家事から解放された。男女の心身の違いを法律で否定しようとせず、違うことを楽しもう。
The Liberation of Women | Mises Wire

資本主義は共感を育む
資本主義は弱肉強食ではない。むしろ共産主義社会のほうが他人を気にかけない。資本主義は共感の範囲を他人に広げる。誰もがある日、友人になりうる。ビジネスを行うにはよそ者を信用しなければならない。だから資本主義が発達するほど見知らぬ人への共感と利他主義が強まる。
https://fee.org/articles/people-are-less-selfish-under-capitalism/

愛される資本主義
マクドナルドは世界で毎日6800万人のお客があり、200万人近い従業員が働く。英国で従業員の平均年齢は20歳で、うち43%は21歳以下。多くの人々が初めて働く職場の一つだ。大きな富をもたらし、若者には次の仕事への足がかり(stepping stones)ともなっている。自由な資本主義が若い起業家を生む。
Millennial entrepreneurs understand the power of profit - CapX

2018年7月13日金曜日

庶民を苦しめる安売り規制

政治家はよく、政治は庶民や貧しい人の味方だと大見得を切ります。しかしもしそれが本当なら、どうして安売りを禁じ、庶民や貧しい人を苦しめるような規制を行うのでしょうか。

記事によれば、1~6月のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の課税済み出荷量は、前年同期比1.3%減の1億9025万ケースでした。原因は、6月に施行された酒類の安売り規制でビール系飲料の小売価格が大幅に上昇したことです。

今回の規制は、大手量販店などの安売り攻勢に苦しむ中小の酒店を守るため、自民党の「街の酒屋さんを守る国会議員の会」が中心となり、昨年の参院選直前に議員立法で実現させたものです。つまりは選挙対策です。

量販店などとの競争で中小の酒店の多くが経営不振に陥っていることは事実でしょう。しかしだからといって、政府が市場に介入し、量販店などに安売りをやめさせれば、安価な発泡酒や第三のビールを楽しむ庶民や貧困層の暮らしが苦しくなります。

中小酒店の経営も苦しいかもしれません。しかし自分が苦しいからといって、他人を犠牲にして自分が救われていいということにはなりません。

政治家はよく、市場原理は庶民や貧しい人を不幸にすると言います。しかし不幸にするのは市場原理ではありません。市場原理を無視した政治です。(2017/07/13

人道的介入の偽善

人道的介入の偽善
シリアのアサド政権に対する攻撃が人道的に不可欠なら、なぜ米国はサウジアラビアがイエメンの子供を飢えさせるのを助けるのか。人道的介入という善意はリビアを混乱に陥れ、イスラム原理主義をはびこらせた。ウクライナへの介入の結果内戦となり、米ロの不吉な対立を招いた。
The Humanitarian Trap | The American Conservative

軍事行動のコスト
トランプ米大統領は、化学兵器の使用に「何かしたい」と考え、シリアの空軍基地に巡航ミサイルを59発打ち込んだ(費用は8900万ドル)。空爆はせいぜい象徴的な意味しかなかったが、確かなことが一つ。軍事行動のコストは膨大だ。
The American Way of War Is a Budget-Breaker

意図とは逆の結果
アフガン、イラク、シリアなどでの壮絶な軍事行動は、意図とは逆の結果をもたらしている。「テロとの戦い」の目的が欧米でテロをなくすことだったとすれば、完全な失敗とみなさなければならない。英仏独など欧州全域でテロは拡大している。
The ‘War On Terrorism’ Isn’t Working

軍事介入政策の帰結
欧米は中東で他国民を攻撃し、血生臭い混乱を起こしている。自業自得の事態(blowback)を招いてもおかしくない。欧米は自分の外交政策についてよく考えなければならない。シリア、リビア、イラク、アフガニスタンなどの争乱になぜ関わる必要があるのか。
Manchester Arena attack: ‘We caused bloody chaos, not surprising there’s blowback’

2018年7月12日木曜日

ロボットは仕事を奪わない

ロボットは仕事を奪わない
今ある職業の半分以上は、20年前には知られてさえいなかった。140年間以上のデータによれば、技術は破壊するより多くの雇用を生み出す。高い技能を必要としない仕事が消え去るとは嘘で、他の仕事が生まれる。技術が取って代わるのは、最もつまらなくて危険できつい仕事だ。
Robots Do Not Destroy Employment, Politicians Do | Mises Wire

知識人の本音
知識人(intellectuals)は進歩が嫌いだ。自称「進歩派」の知識人ほどそうだ。進歩の成果が嫌いなわけではない。その証拠に、大半の評論家やその支持者は筆と墨ではなくPCを使うし、麻酔抜きの手術など望まない。彼ら口舌の徒が嫌いなのは、人間は自分で世界を理解し良くできるという考えだ。
Quotation of the Day... - Cafe Hayek

再分配はいらない
機械の所有者が富の再分配(redistribution)に反対すれば、ほとんどの人がひどい貧困に陥るだろうと述べた、故ホーキング博士。しかし機械の所有者が富を手にするのは、人々が求める物を機械によって安く作り、売るから。だとすれば人々は貧困に陥るのでなく、むしろ豊かになるはず。
It Doesn't Take a Genius to Understand Economics | Mises Institute

国家の嘘
政府の言葉に要注意。企業は商品を「投げ売り(dump)」しない。消費者が欲しい値段で売る。品不足の際、企業は「便乗値上げ(price gouge)」しない。需給に応じた値を付ける。公共事業は「雇用創出(create jobs)」しない。民間で生まれるはずだった雇用を減らす。ニーチェいわく、国家が何を語ってもそれは嘘だ。
Statism’s First Casualty Is the Truthful Use of Language

転売ヤーは許せない?

歴史上、商人はしばしば不当に軽蔑・差別されました。アリストテレスは利潤目的の商業を非難に値する職業と述べましたし、荻生徂徠は商人を「骨折らずして、坐して利を儲(もうく)る者」と批判しました。農民と違い、商品を右から左に動かすだけで労せずして利益を得る、非生産的な存在として憎まれたのです。

今でもこの時代錯誤な偏見は消えていません。よく非難の対象になるのは、「転売屋」「転売ヤー」とさげすまれる、コンサートやイベントのチケットを転売する企業や個人です。記事によると、総務省とぴあは2018年にも、マイナンバーカードの認証機能を使ってチケットの高額転売を防ぐ新システムを稼働するそうです。このニュースに対し、SNSでは人々が「転売屋完全終了」「転売屋ざまぁ」などと快哉を叫んでいます。

とても市場経済の国とは思えません。チケットの転売は、それがいくら高値であろうとも、違法ではありません。違法でない限り、当事者の自由に委ねるのが市場経済の鉄則です。コンサートなどの主催者が正規の購入者以外の入場を禁止するのは勝手ですが、それに政府が肩入れするのはおかしなことです。

音楽業界の中には「チケットはアーティストがかかわる特殊な商品」と言い、だから高値転売は許せないと憤る人がいます。しかしゴッホやモディリアーニの絵画だって、「発売」当初をはるかに上回る値段で取引されています。それが画家をおとしめることにはならないでしょう。

安く入手した商品を高く転売することは、いつの時代も一定の人々にとって不道徳で許しがたい行為なのかもしれません。しかしもしそうなら、自分が転売を利用しなければいいだけの話です。自由を許さない、不寛容で息苦しい社会では、やがて文化そのものがやせ細ってしまうでしょう。(2017/07/12

経済はグラフで表せない

経済はグラフで表せない
現実の経済はあまりに複雑で、単純な需給曲線では正しく表現できない。グラフは不確実性や起業家の思惑、市場の絶え間ない変化を考慮しない。ところが政府や中央銀行はその単純な枠組みに基づき、さまざまな政策を立案する。そしていつも現実の経済が予想外の動きをして驚く。

主流経済学の落とし穴
現在主流の新古典派経済学は19世紀物理学の模倣である。エネルギーの概念を効用に置き換え、浪費の最小化という同じ原理を当てはめる。そして資本主義の「無駄」をなくそうとする。しかし現実には経済を取り巻く資源や技術は一定ではなく、起業家の創造により絶えず変化する。
Four Hundred Years of Dynamic Efficiency | Mises Institute

経済学と物理学
人間はロケットを宇宙に送ることに成功したが、経済政策は有害無益のまま。人間は分子と違い経験から学ぶので、政策に対する反応は時とともに変化する。経済学は物理学とは異なる。人間はロケットを操作できても、人間を操作することはできない。それが経済学の教える原理だ。
Economics Is Not Rocket Science — It's Even More Complicated | Mises Wire

迷走する擬似科学
主流のマクロ経済学には深い欠陥があり、〔ポール・ローマーなど〕マクロ経済学者の一部ですらそれを認め始めている。その特徴は非常識なほど過度の集計、とっぴな政策提言、現実の人間に関係あるとは思えない高度な数学モデルなどだ。
3 Ways the Critics Get Praxeology Wrong