2017年6月25日日曜日

ユダヤ陰謀論の無責任

イデオロギーを優先し、事実を無視した言論――。慰安婦報道の誤りで叩かれている大新聞の話ではない。元外交官が保守系出版社から最近出した本のことである。

元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫は『「反日中韓」を操るのは、じつは同盟国・アメリカだった!』(ワック)で、手垢にまみれたユダヤ陰謀論を縷々述べる。持ち出される数々の「証拠」は、これまで陰謀論者によって散々繰り返されてきたものばかりである。

たとえば、ロシア革命の指導者の多くはユダヤ人であり、革命を資金支援したのも米英のユダヤ系金融機関だったと馬渕はいう。しかしロシアのユダヤ人の多くは共産主義者ではなく、穏健な立憲君主制支持者だったし、共産主義を支持するユダヤ人も、その多数はレーニン率いるボルシェヴィキ側ではなく、対立するメンシェヴィキ側だったので、ソ連政権下では生き残れなかった。

資金については、歴史学者アントニー・サットンが1974年の著書で、モルガン、ロックフェラーといった米国のアングロサクソン系金融財閥が支援していたことを公式文書にもとづいて明らかにし、ユダヤ人陰謀説を否定している。

また馬渕は、米国の中央銀行である連邦準備銀行について、連邦政府の機関ではなく100%の民間銀行だと述べる。たしかに各地の地区連銀はその株式を地元の民間銀行が保有し、形式上は民間銀行といえる。しかしその業務は政府によって厳しく規制されているし、利益の大半は国庫に納めなければならない。地区連銀を統括する連邦準備理事会になると、完全な政府機関である。

馬渕はニューヨーク連銀の株主一覧なるものを掲げ、主要な株主は欧州の金融財閥ロスチャイルド系の銀行だと解説する。そこにはたとえば「ロスチャイルド銀行(ベルリン)」が挙げられているが、ベルリンには昔も今も、ロスチャイルドの銀行は存在しない。ドイツではフランクフルトにあったが、それも米連銀が発足する以前の1901年に廃業している。

前防大教授でもある馬渕はこうした嘘を並べ立てたあげく、ユダヤ人の目的はグローバリズムによって人類を無国籍化することであり、日本はナショナリズムによってこれに対抗せよと主張する。規制や関税に守られ、消費者を犠牲にして不当な利益を得てきた事業者やその代弁者である政治家・官僚にとってまことに都合のよいイデオロギーである。

約二十年前、オウム真理教が国家転覆を企てたのは、ユダヤ陰謀論を信じ、その脅威に対抗するためだった。無責任な陰謀論は、新聞の誤報に劣らず、害悪を及ぼすのである。

(2014年12月、某ミニコミ紙に寄稿)

2017年6月24日土曜日

欧米が生んだイスラム過激派

現在世界を破壊するイスラム過激主義は、欧米の過去の外交政策が生んだものである。「イスラム国」、アルカイダなどサラフィー主義の武装集団の台頭や多くの国における攻撃の理由を理解するには、歴史の記憶を呼び覚まさなければならない。

リベラルを含む言論人の多くによれば、現在の中東は宗教上の過激主義がはびこった西洋の暗黒時代と同じだという。彼らはアルカイダなどの台頭をイスラム教自体や中東の「遅れた」文化のせいにし、自国の卑しむべき政策を都合よく覆い隠す。

過激主義の台頭をイスラム教のせいにする欧米の言論人は、西洋の帝国は根本では善意と人道主義、進歩と文明に根ざすと信じている。欧米はこの同じ論理でイスラム過激派の攻撃に武力と偏見で反応し、かえって火に油を注いでしまっている。

2017年6月23日金曜日

軍事介入で平和は来ない

6月に公表された2017年の「グローバル平和指数」で、最悪グループ10カ国のうち9カ国には一つの共通点がある。米国が中心となって展開した、国家弱体化および体制転換作戦という暴力の標的になったことである。

シリア、イラク、アフガニスタンは米国による政権転覆の標的となり、派閥争いがわざと作り出された。石油埋蔵量がアフリカ最大の南スーダンでは「国家建設」が不首尾に終わった。軍事介入による混乱は国境を超えてスーダンにも及んでいる。

イエメンは米国に支援されたサウジアラビアの侵略で飢餓と戦争犯罪が広がった。ソマリアは軍事介入で無秩序状態が続く。リビアはアフリカ統一通貨構想が米国の逆鱗に触れ、混乱に。ウクライナはガス産業をめぐりクーデターの標的となった。


2017年6月22日木曜日

資本主義は世界を良くする

資本主義は少数を潤し、多数を貧しくするというのは、経済発展に関する最も有害な神話の一つだ。この神話はマルクスにさかのぼる。マルクスによれば、資本主義の下では競争により利潤が減るため、労働者の搾取が拡大するのは必至だという。

マルクスの予言に反し、欧米で労働者の生活水準は改善が続いた。そこでレーニンは、欧米は植民地を搾取して富を吸い上げたという説を唱えた。これに影響されたアフリカの民族主義者たちは、資本主義を拒否し、ソ連の社会主義を採用した。

経済の自由は資本主義国の労働者だけでなく、社会主義国の労働者の生活も改善した。自由はあらゆる人々に恩恵を及ぼす。自由でない人々にもその恩恵は及ぶ。サハラ以南アフリカの平均余命は55年間で40.17歳から59歳にまで延びた。

Marian L. Tupy, Don’t demonise capitalism – it’s making the world a better place (2017.3.2, capx.co)

2017年6月21日水曜日

政府がビットコインに近づく理由

数カ国の政府がビットコインに好意的になり、最高値に押し上げている。国家はビットコインやブロックチェーン技術とどんな関係を築きたいのか。一つの戦略は国家が管理する仮想通貨を作り、その利便性を利用し、現金廃止につなげることだ。

国家が仮想通貨を受け入れるようになった背後には、規制強化の意図があるだろう。実際、規制に賛成する人々はすでに、規制当局が仮想通貨の「理解」を深めるよう求めている。「この破壊的な技術には何らかの規制が必要だ」(WIRED誌)

各国中央銀行は電子通貨を利用しようとしている。日本とロシアの政府がビットコインの使用を支持するのは、市場に対する政府の降伏などではなく、新技術を支配する試みだろう。早い話、どちらの国も特に自由放任主義で名高いわけではない。

Ryan McMaken, What Do Governments Want from Bitcoin? (2017.12.5, mises.org)

2017年6月20日火曜日

私たちは上位1%だ

所得格差や「最も豊かな上位1%」、貧困に関する議論はたいてい、ある一国の中の話だけをしている。だが世界的に見れば、状況はがらりと変わる。年収3万2400ドル(約356万円)以上なら、あなたは世界で最も豊かな上位1%に入る。

さいわい世界は年々豊かになり、格差は縮小している。世界人口が急増しているにもかかわらず、貧しい人の数は減っている。豊かさが広がったおかげで幼児死亡率、非識字率、栄養不良が減少し、寿命が延びた。極貧の撲滅は視野に入った。

繁栄にはもちろん理由がある。工業化と貿易が経済成長をもたらした役割は、強調してもしすぎることはない。誰かが今度、貧困や所得格差の話をしたら、思い出してほしい。グローバルに見れば、私たちはおそらく上位1%なのだ。

Marian Tupy, Chelsea German, Putting Income Inequality in Perspective (2015.11.10, humanprogress.org)

2017年6月19日月曜日

ビットコインと金

各国のゼロ金利、マイナス金利政策現金使用規制を受け、代替投資に乗り出す投資家が増えている。金(ゴールド)とビットコインは政府による操作の圏外にあるため、不換紙幣の価値が大幅に薄まる時期には安全な避難場所の役目を果たす。

ビットコインには金にない長所と短所がある。ビットコインはいつでも誰でも身分証明書なしに口座を作れ、決済が迅速だ。金で決済できる取引はごく少ない。一方、ビットコインはインターネットや機器に依存し、規制強化のリスクも大きい。

ビットコインは「デジタル・ゴールド」と呼ばれるが、金とは資産クラスが異なる。2017年は低金利を背景にともに上昇が見込まれるが、学術研究によれば、運用資産の2〜4%をビットコインに、20%を金に割り振るよう推奨されている。

Demelza Hays, Bitcoin or Gold – Why not Invest in Both? (2017.4.14, forbes.at)

2017年6月18日日曜日

エセ市場主義の害毒

政府が民間のやり方を真似て、それが失敗すると、それ見たことかと言わんばかりに「市場原理主義が悪い」と罵る手合いが後を絶たない。とんだ言いがかりである。政府がどれだけ民間を模倣しようと、それはうわべのことだけにすぎず、市場原理とは何の関係もない。

やや旧い話だが、今年「STAP細胞」にまつわる論文捏造が発覚した折、政治評論家の森田実はこんな見方を開陳した。「米国発の市場原理主義がはびこり、競争が熾烈になったせいで、皆が皆、保身に必死なのです」(4月19日付日刊ゲンダイ電子版)

しかし論文捏造の原因は市場原理主義ではなく、それとは正反対の官僚主義の害毒である。杉晴夫『論文捏造はなぜ起きたのか?』(光文社新書)を読むと、それがよくわかる。

STAP細胞論文のデータ改竄が明らかになり、筆頭著者の小保方晴子理化学研究所(理研)研究員が一転非難を浴びたが、同研究員の研究不正を糾弾した理研の調査委員長も、過去に発表した論文のデータ改竄が判明した。

また日本分子生物学会理事長が会員に対し「実験結果の改変を行なってはならない」という趣旨の声明をわざわざ出したが、これは「現在流行の遺伝子研究に従事している同学会会員の多くが、程度の差はあっても、研究結果の改変を日常的に行なっているということを推認させるに十分であった」と生理学者の杉はいう。

研究者はなぜデータを捏造するのか。その原因は科学行政と研究費交付システムにある、と杉は指摘する。

平成15年、国立大学や理研の独立行政法人化が決まった。これに先立ち文部科学省が示した方針の一つとして、「民間的発想による経営手法の導入」が強調された。

しかしこれは見せかけにすぎない。政府は民間企業と違い、商品・サービスを利用者に強制的に押しつけるだけだから、どのような商品・サービスがどの程度必要とされているか、知ることができない。そのため政府が大学などに支給する研究費は、遺伝子研究など流行の研究分野に極端に偏ることとなった。

この結果、使い切れない研究費を着服する事件も起こったが、より深刻なことに、研究者が期限内に目立った業績をあげる必要上、データ改竄・捏造の誘惑に駆られた。それが一気に露呈したのが今回の捏造騒動だったのである。

理研は大正年間、実業家の高峰譲吉が民間研究所として設立した。自由な発想で研究を発展させるには、官立では駄目だと高峰は知っていた。しかし戦後は政府に所管され、役人の天下り先となり果てた。官僚の似非市場主義の不始末で名誉ある歴史に泥を塗られたうえ、本物の市場主義まで貶められては、地下の高峰は浮かばれまい。

(2014年11月、某ミニコミ紙に寄稿)

2017年6月17日土曜日

不換紙幣制度の解体を

米連邦準備理事会(FRB)によれば、「引き締め」は続けるし、保有資産の圧縮にも着手する。経済が「改善」しているからだという。しかしそれは職探しをあきらめた人を失業者に数えないなど、政府が操作した経済統計を信じればの話だ。

米経済は新たな市場崩壊の危機にある。学生ローン、自動車、住宅はバブルのほんの一部にすぎない。一番大きいのは政府のバブルで、これは海外での軍事行動に対する支出増と雇用対策を狙った国内インフラ事業によって劇的に膨張するだろう。

イエレンFRB議長は単に保有資産を圧縮するのでなく、議会・行政と協力し、〔バブルの元凶である〕不換紙幣制度の解体に取り組むべきだ。手始めとしてふさわしいのは、FRB監査法案を通過させることである。

(FRBの利上げ決定に対するロン・ポールのコメント)

Ron Paul and Norm Singleton react to Fed rate hikes (2017.6.15, campaignforliberty.org)

2017年6月16日金曜日

ベーシックインカムは貧困を増やす

OECDが最近発表した報告によれば、先進国でベーシックインカムを導入すると、むしろ貧困を増やす恐れがある。35加盟国で65歳以下を対象とした現金給付や優遇税制をすべてベーシックインカムに置き換えるものと仮定して、試算した。

OECDによれば、政府は貧困層に的を絞った支援ではほぼ良い成果をあげるものの、ベーシックインカムは対象があいまいになってしまう。フィンランドと仏伊英の4カ国に絞った試算では、伊を除く3カ国で貧困率が少なくとも1%上昇した。

OECDの分析は、貧困層の労働意欲が高まる効果を考慮しないなどの欠点はあるものの、有益である。大規模なベーシックインカムは財源が問題であり、政治的にハードルが高いと理解できるからだ。打ち出の小槌などこの世に存在しないのだ。

2017年6月15日木曜日

劣化ウラン弾使用でNATOを提訴へ

ユーゴスラビア爆撃で劣化ウラン弾を使用した責任を問い、国際法曹団がNATOを相手取った訴訟を準備中だ。「1999年のセルビア爆撃で10~15トンの劣化ウランが使われ、大規模な環境被害を引き起こした」と代表の弁護士は述べる。

訴訟団の弁護士は「セルビアでは劣化ウランが原因で毎年3万3000人が発病している。子供が毎日1人だ」と主張する。爆撃から19年後に訴訟を決めた理由については「国民への恐ろしい影響を考えれば、遅すぎることはない」と話した。

訴訟団の弁護士は、当時のNATO加盟19カ国は、爆撃の結果と証明されたすべての死亡・発病に対し経済的・精神的な被害の賠償をしなければならないと述べた。がん患者の治療やセルビアから劣化ウランを完全に除去する技術支援も求める。

‘Up to 15 tons of depleted uranium used in 1999 Serbia bombing’ – lead lawyer in suit against NATO (2017.6.13, rt.com)

2017年6月14日水曜日

大富豪が金を買う理由

投資銀行家J・ロスチャイルド氏は2016年夏、運用資産の構成を変更した。超低金利やマイナス金利、量的緩和は「金融政策における史上最大の実験」と懸念したためだ。同氏は財産を保全し、将来に向け価値を貯蔵するために金を買った。

大手ヘッジファンドを率いるD・アインホルン氏は、金融政策はどんどん向こう見ずになっており、米トランプ政権の政策とあいまって、いずれ大規模なインフレをもたらすと考えている。2017年2月、同氏は国債を空売りし、金を購入した。

資産家S・ドラッケンミラー氏も最近、金投資に動いている。同氏は強い確信に基づいて多額の取引をすることで知られる。2017年2月、金を購入したが、その理由は「自国通貨を強くしたがっている国がないから」だという。

Why The World's Billionaire Investors Buy Precious Metals (2017.6.12, zerohedge.com)

最も危険な敵

有史以前から、支配者は民に見返りを与えるという神話が語られてきた。民が服従し年貢を納める代わりに、外敵から守ってやるという。しかし約束はよく破られた。領主は城に逃げ込んで農民を城壁の外に置き去りにし、侵略者の蹂躙に任せた。

普通の人々にとって最も危険な敵は、民を守ると称して略奪・虐待する領主自身だった。貴族と呼ばれる領主は、民が生まれた土地を離れることも、望む仕事に就いたり楽しんだりすることも認めなかった。奴隷状態に置いて搾取したのである。

外国の誰が友で誰が敵か、政府の決めたとおりにうのみにするのはばかげている。根本の原因は人々のナショナリズムだ。ナショナリズムのせいで、人々は自国政府という本当の敵に気づかないどころか、激しく歓呼の声を上げさえするのである。

Robert Higgs, I Won't Let the State Choose My Friends or Enemies for Me (2017.4.8, fee.org)

2017年6月13日火曜日

危うい核軍拡

国家は昔から、軍事力が安全を保障するという幻想にしがみついてきた。この発想の問題は、ある国が安全に不可欠とみなす軍事力を持つと、それが他の国の不安感を高める点だ。疑心暗鬼の中で軍拡競争が起こり、しばしば軍事紛争をもたらす。

軍拡競争が戦争を起こした経験からすると、核保有9カ国(米露英仏中印パ・イスラエル・北朝鮮)が1968年の核不拡散条約における核軍縮の義務を無視し、むしろ最近では新たな核軍拡競争に乗り出しているのは、憂慮すべき事態である。

国連で制定準備が進む核兵器禁止条約は、国家の軍事力信仰に直接挑戦するので、大成功はしないかもしれない。しかし、どうなるかはまだわからない。世界は核戦争のかつてない危険に直面し、ついに国家の幻想から目覚め始めるかもしれない。

Lawrence Wittner, National Illusions and Global Realities (2017.6.12, antiwar.com)

ベーシックインカムと政府権力

ベーシックインカムは道徳に反する。ある人々から彼らが作った物を取り上げ、受け取るに値することをしていない他の人々に与えるのだから。それは恨みを生み出す。ただ生きているというだけでは、他の人々に物を要求する権利は生まれない。

最も重要な問題は、ベーシックインカムが技術的に可能かどうかではない。誰がそれを割り振るかだ。政府の権限が強まるのは明らかである。生産の果実全体をどのように配分するか、政府が決めることになる。

ベーシックインカムで平等な社会を作ることはできない。むしろ、より不平等な社会になるだろう。ただしその社会では、生産的な人々が労働と貯蓄で豊かになるから格差が生まれるのではない。政治的コネの有無が所得を左右するのである。

Doug Casey on Universal Basic Income (2017.6.3, caseyresearch.com)

2017年6月12日月曜日

エコノミストの使命

経済学の考え方は、政府の政策の「善意」を超えて考えるよう教える。政策が意図しない影響に焦点を合わせる。エコノミストは政策の影響について市民を教育しなければならない。この考え方はしばしば直感に反し、理解されても不人気である。

エコノミストは、厳しい選択を迫る制約があることを市民に教える。最低賃金を義務づければ、熟練労働者は高い賃金を得られるが、未熟練労働者は労働市場から排除される。一方、最低賃金を廃止すれば、賃金は安くても多くの人が職に就ける。

エコノミストは、市民を市民自身の無知から守らなければならない。それをやるとたいてい市民からひどく嫌われる。タダ飯なんて都合のいいものはない、幻想にすぎないと言われて、喜ぶ人はいない。しかし、それを教えることはとても重要だ。

Alexander Salter, The economist’s real job: to save the public from itself (2017.6.2, learnliberty.org)

自由貿易は平和への道

英マンチェスター自爆攻撃以来、多数の人々が現場近くの聖アン広場で花を供え、祈りを捧げる。訪問者の多くは、それがリチャード・コブデン像の足元だと気づかないようだ。コブデンは19世紀の自由主義者で、平和と自由貿易を擁護した。

コブデンらマンチェスター派の自由主義者が説いたとおり、平和と経済の自由はどちらか一方だけでは長続きしない。政府が国内で経済を規制すると、結果、勝者と敗者の対立を生む。そこで政府は外部の「脅威」に国民の注意をそらそうとする。

保守派は戦争と自由貿易の両方に賛成し、進歩派は両方に反対する。しかしこれはいずれも破綻する。コブデンら自由主義者は、戦争の繰り返しを避けるただ一つの方法は帝国主義に反対し、諸国間の平和な商取引を支持することだと知っていた。

Matthew McCaffrey, Manchester Liberalism is the Answer to Terrorism (2017.6.8, mises.org)

2017年6月11日日曜日

政府が国を滅ぼす

保守派論客は「このままでは日本が滅びる」と悲憤慷慨し、政府によるさまざまな「対策」を提言する。愚かしいにもほどがある。国を滅ぼす最大の元凶は政府だからである。

渡部昇一は本村凌二との対談本『国家の盛衰』(祥伝社新書)で、製造業の弱体化が国家の衰退を招くとして次のように書く。米国では1980年代以降、国外で製品を作るほうが労働賃金が安く上がるため製造業の「国外フライト」が起こった。この結果、工場が米国内にあればそこで働けたはずの国民が働けなくなり、生活水準が下がった。

渡部は続ける。日本でも同じことが起こり始めている。衣料チェーン店のユニクロは安くて高品質な衣料を作り、多くの消費者を獲得して利益を上げているが、儲けているのは商品を開発したユニクロと、工場のある中国、バングラデシュなどだけで、日本国内の製造業で働くべき人たちは「置いてけぼり」を食っている、と。

渡部の主張はいわゆる産業空洞化論であり、それは経済学的に完全に誤っている。なるほど、自動車や衣料の工場が海外に移転すれば、そこで働いていた人々は一時職を失い、生活が苦しくなるかもしれない。しかしその他の大多数の国民にとっては、海外で生産される安い製品を買うことができ、生活は楽になる。

また国内の不採算な工場がなくなれば、その分、他分野の投資に回せる資本が増え、新たな成長産業が育つ。一時増えた失業者も、新産業の成長によって直接・間接に再雇用の機会が広がる。「産業空洞化」は渡部の唱える俗論とは逆に、国民の生活をむしろ豊かにするのである。

渡部は「就業人口の多い製造業を自国にとどめなければ、国の衰退につながる」と力説する。しかし労働コストの高い国内で企業に無理やり製品を作らせても、海外製品に価格競争で太刀打ちできない。だから政府は輸入品に関税をかけたり、国内企業に補助金を出したりして、自由な競争を妨げる。

だがその効果は長続きしない。米国政府の保護に守られてきた自動車大手ビッグスリーは日本車などとの競争に敗れ、GMやクライスラーは破綻してしまった。もし米政府が自動車産業を保護せず、自由競争に任せていれば、産業構造の転換がもっと早く円滑に進んでいただろう。米経済衰退の原因は、こうした政府の余計な介入なのである。

ところが渡部は日本の製造業、とくに自動車と電機を守れといい、そのために「国内の原発産業をさらに発展させなければいけない」と主張する。しかしかりに原発が必要だとしても、それを日本の電機メーカーが作らなければならない理由はない。高い労働コストが電力料金に跳ね返れば、苦しむのは一般国民である。


(2014年10月、某ミニコミ誌に寄稿)

2017年6月10日土曜日

大企業がパリ協定離脱に怒る理由

政治がからむ話になると、一枚岩の「産業界の利益」などというものはない。政府に強いコネのある大企業か、その他大勢かでまったく違う。大企業は企業の成長する権利を守る場合もあるので、その政治的な影響力には良い面と悪い面がある。

大企業は米国で過去百年以上、最大の圧力団体として貿易、企業、労働、財産に対する政府の規制強化を求めてきた。規制は既存の大企業を競争上有利にする。大企業は新たな規制のコストに耐えられる半面、小規模な新興企業には難しいからだ。

温暖化対策に関するパリ協定からの米国離脱を大企業が批判し、中小企業が歓迎する意見の分裂は驚くにあたらない。政治家が「産業界」から「利害関係者」を集め、意見を聞くときは要注意だ。大企業の利益は自由な企業の利益と同じではない。

Jeffrey A. Tucker, Is Industry For or Against the Paris Climate Agreement? (2017.6.4, fee.org)

ロシアの脅威を煽る人々

情報機関や軍産複合体など支配階級のエリートがロシアを米国の敵に仕立て上げたがるのは、十分理解できる。理解できないのは、普通の米国民がそれに引っかかることだ。一般国民がそんな話をうのみにしても損をするばかりで、何の得もない。

国民が信じ込まされたのは、ロシアが大統領選に介入してトランプ候補に加勢したという話だ。しかしその主張には証拠がない。しかもうさんくさい。ロシアは悪魔のようにずる賢いはずなのに、犯行現場の至る所に電子指紋を残しているという。

トランプ陣営は選挙期間中にロシアと協議していたといわれる。軍縮に向けた協議であれば、文武の官僚や受注業者には打撃となりうる。しかし、かりにトランプが軍縮を汚職の種にしようとしていたとしても、米国民と世界にとってはいい話だ。

Sheldon Richman, TGIF: Let’s All Calm Down about Russia (2017.6.9, libertarianinstitute.org)

2017年6月9日金曜日

原発の存廃は市場に任せよ

米ニューヨーク、イリノイ両州は、いかがわしい原発救済計画を受け入れた。働きかけたのは米原発最大手エクセロンだ。同社によれば低コストの天然ガスや風力発電との競争が厳しく、このままでは閉鎖だという。それなら閉鎖した方がいい。

天然ガスが安値安定する一方、原発のコストが今後数年上がるのはほぼ確実だ。2015年以降、6基が閉鎖され、8基が閉鎖計画を発表済みだ。さらに数基が早期閉鎖になるかもしれない。これらはビジネスらしく、てきぱきと片づけるべきだ。

最善のエネルギー源が何かは、ロビー活動で決めるべきではない。政府が勝者と敗者を選ぶと、消費者がツケを払わされる。規制当局が高い料金という形で発電コストを押しつけるからだ。電力会社は政府の助けなしに競争しなければならない。

William F. Shughart II, Why Nuclear Power Subsidies Must End (2017.5.24, independent.org)

対サウジ武器輸出はなぜ誤りか

トランプ米大統領がサウジアラビアとの間で合意した武器輸出は、イエメンで残虐な戦争を行っているサウジとの共犯関係を強めることになる。サウジは3年近くイエメンの内戦に介入し、犠牲者が出るのも構わず同国の大部分を破壊している。

米国のサウジへの武器輸出は、米国がアルカイダを倒す助けにならない。軍事介入はテロ対策には向かない。空爆は建物や兵器の破壊には効果を発揮しても、テロリストを殺すには不向きだ。テロの政治的動機に立ち向かう力はさらに乏しい。

サウジへの武器輸出は、外交よりも軍事的解決を優先させることにつながる。自分の考えを軍事力で押しつけることができると信じる国は、交渉する意欲を失う。武器輸出でサウジのタカ派は元気づき、イエメンなどで戦争をやり続けるだろう。

A. Trevor Thrall, Trump’s No Good Very Bad Arms Deal (2017.6.7, cato.org)

2017年6月8日木曜日

小国になろう

自己決定は究極の政治目標だ。不完全でも自由に通じる道だ。世界70億人の各個人による自己決定が理想だが、それができないなら、まずリヒテンシュタインやルクセンブルクのような小国をめざそう。米国の州の権利、EU解体を支持しよう。

米大統領選でトランプがクリントンに勝つと、リベラルはにわかに中央集権に抵抗し始めた。カリフォルニア州の独立運動、移民に寛容な「聖域都市」擁護、民主党による「抵抗の夏」運動などだ。選挙は神聖と信じてきたリベラルとは思えない。

リベラルは偽善者だが、投票が政府を正当化するわけではないという考えは正しい。20世紀以降で初めて、リベラルは連邦政府の権力を弱めようとしている。これは後押しすべきだ。分権化でリベラル自身、好きな政策を行うチャンスが広がる。

Jeff Deist, Self-Determination, not Universalism, is the Goal (2017.5.29, mises.org)

金密輸事件が教えること

日本の銀行による厳しい取り締まりを受け、ヤクザは伝統的な金融システムを利用できなくなっている。金(ゴールド)を利用すれば、ヤクザは銀行の規制の網にとらわれることなく、シノギを続けることができる。

税制も密輸増加の背景にある。2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられたが、香港では金に消費税はかからない。香港で金を買い、日本に密輸して売れば税の分だけ得をする。税率が10%に上がればさらに需要が高まるだろう。

ギリシャでは経済危機の間、現金引き出しが厳しく制限され、人々は物々交換を強いられた。インド政府は高額紙幣の無効を突然宣言し、深刻な現金不足を招いた。両国で金や銀を持つ人々は、これらの政策の打撃をいくぶん避けることができた。

Peter Schiff, What Can We Learn from Japanese Gangsters? (2017.6.6, schiffgold.com)

2017年6月7日水曜日

介入主義の病理

介入主義者らは米国務省の仲間とともに、ソ連と戦うためイスラム反乱兵を支援したが、当初「穏健」だった反乱兵はアルカイダの一部となり、9/11テロを実行した。介入主義者は立派な教育を受けていても、介入の帰結を予期できなかった。

米国はリビアで体制転換を実行したが、今や同国では奴隷が売買されている。それでも独裁者排除という目的を達し、満足している。まるで患者のコレステロール値を改善するために、「穏健」なガン細胞を注射して殺してしまう医者のようだ。

海外軍事介入で予期せぬしっぺ返しを招く介入主義者の欠点は3つある。(1)物事の二手、三手先が読めない(2)多数の原因と結果が絡み合う複雑な現象を理解できない(3)自分の行動が相手にどのような変化を起こすか予測できない--。

Nassim Nicholas Taleb, On Interventionistas and their Mental Defects (2017.4.22, ronpaulinstitute.org)

うぬぼれた科学者たち

正統とされる気候変動論の大きな問題の一つは、うぬぼれた科学者たちが経済や政治の専門家ではないことだ。一体どうすれば反射能の専門家が、気候変動が現在はおろか、50年後の世界にとって良いか悪いか、意味のあることを言えるのか。

かりに温暖化が本当だとして、最善の策はなんだろう。適応は有力な案だ。何もしないこととは違う。経済の自由化で国々を豊かにし、適応力をつける。オランダでは水位が上昇しても生活するすべを見いだし、香港では岩上に都市国家を築く。

行動が重要だと主張する人は、現在検討されているどの政策も温暖化を和らげるのに不十分だとしても「何か始めなければ」と言う。しかしなぜ効果のない政策を始めるのか。重税を課し、貪欲な政府を養うことを正当化するにはお粗末な論法だ。

Max Borders, Twenty Two Ways to Think about the Climate-Change Debate (2015.4.22, fee.org)

2017年6月6日火曜日

アフガン戦争の末路

カブールでの自爆テロが示したのは、9/11テロ以来15年にわたり数千億ドルを投じ2000人の命を犠牲にしたにもかかわらず、米国は勝利にほど遠いという事実だ。はっきり言えば、アフガニスタンでの戦争にゆっくりと敗北しつつある。

もし米国がアフガンから引き揚げれば、親米的な立場にあった人を中心に、多数の人々が国外へ逃げ出そうとするだろう。米国はどれくらいの難民を受け入れ、どれくらいの人々を置き去りにするかをめぐって、道徳的な危機に直面するだろう。

米国はアフガン、イラク侵攻の後、リビアを攻撃し、シリアに介入し、イエメンの反政府組織フーシに対するサウジアラビアの戦争を支援した。巨額の資金を費やし、多数の生命を犠牲にして、どれだけ米国自身や相手国のためになっただろうか。

Patrick J. Buchanan, Is Afghanistan a Lost Cause? (2017.6.1, theamericanconservative.com)

ベネズエラを称えた有名人たち

ベネズエラのチャベス前大統領について、俳優ショーン・ペンは「極貧だった80%の国民を救った」と述べた。映画監督オリバー・ストーンはチャベスにへつらう映画を撮った。同じくマイケル・ムーアは「極貧の75%を退治した」と称えた。

チャベスを称えた言語学者チョムスキーは述べる。「チャベスの国家資本主義を一度も社会主義と言ったことはない。あれは社会主義にはほど遠い。資本家が大量の資本を国外に移し、経済を害するのだから」。逃げた資本家が悪いとは恐れ入る。

1973年、チリが資本主義に移行した当時、国民所得はベネズエラの36%だったが、今は51%多い。ベネズエラの所得は21%減った。同国の石油備蓄量はサウジアラビアより多いが、社会主義で格差をなくそうとした結果、飢えに苦しむ。

John Stossel, Noam Chomsky's Venezuela Lesson (2017.5.31, reason.com)

2017年6月5日月曜日

科学と政治のあいだ

気候変動が存在し、そのおもな原因が人類にあるということには同意できるかもしれない。しかしだからといって、パリ協定で示された政治的方策にも同意しなければならないということにはならない。両者はまったく別の問題である。

パリ合意が基づく政策上の予測は、当て推量に等しい。何十年も先のグローバル経済を予想し、協定によって世界中の貧困層や労働者に今よりはるかに高いエネルギー費用を押しつける本当のコストを、正直に勘定に入れようとしない。

パリ協定は、協定によってエネルギー費用の増大に直面する家計のコストに触れさえしない。唯一触れているのは、気候変動に適応するためのコストだけだ。つまり協定は、家計に悪い影響はないとみなしている。警戒しないわけにはいかない。

Ryan McMaken, Studying the Climate Doesn't Make You an Expert on Economics and Politics (2017.6.1, mises.org)

ロンドン橋テロの教訓

人々は欧米の外交政策とテロ攻撃増加の関係に気づいていい頃だ。英国がNATOの空爆に参加し2011年にカダフィ政権を倒すまで、「イスラム国」とサラフィー・ジハード主義はリビアに存在しなかった。深い関係を支配層は認めるべきだ。(作家・政治アナリスト、ジョン・ライト)

欧米のテロ対策は明らかにうまくいっていない。それどころかテロは増加・拡大している。一説によれば、欧米は本当はテロと戦わず、テロで一部の国を脅し、特定の外交政策を推進しているという。もし事実なら、当然の結果を招いたといえる。(社会学者、シーフ・デイナ)

欧米政府はシリア、リビア、イエメンのテロリストや武器商人、ボスニア、アルバニア、コソボの麻薬商人を支援してきた。しっぺ返しは当然だ。外交政策で専守防衛に徹していれば、今ごろ独英仏の保安当局はこれほど苦労しなかっただろう。(政治アナリスト、アダム・ギャリー)

#LondonBridge terrorist attack: 'Time to admit Western anti-terrorism policy isn't working' (2017.6.4, rt.com)

2017年6月4日日曜日

敵と味方で割り切る馬鹿

カール・シュミットによれば、政治の本質は敵と味方の峻別にある。これはあくまでも政治の話である。ところが世の中には、政治以外の事柄にまでこの発想を持ち込み、なんでもかんでも敵と味方の関係で割り切ろうとする馬鹿がいる。

元航空幕僚長で評論家の田母神俊雄は、日本を愛するマンガ家やアニメーターが立ち上がり、日本の立場や主張を国内・海外向けに発信する作品を作れば、それは高い娯楽性を持ちながら、同時に大変な影響力のある「情報戦力」になるという。そしてタイムトラベルで過去の竹島に渡り、日本の領有権の正当性を主張するアニメや、日本の権益を脅かす中国の海底ガス田採掘施設を少年海賊が粉々に破壊するマンガがあってもよいと提案する(『ほんとうは危ない日本』)。

もし田母神の御託宣に従ったなら、まともな芸術は生み出しえないだろう。なぜなら優れた芸術が描き出す真の人間関係とは、敵と味方で割り切れるような単純なものではないからである。

歌劇の名作を多数作曲したヴェルディは、イタリアが統一国家となる時代に活躍し、同国の愛国的作家といわれる。しかし小宮正安『名曲誕生』(山川出版社)によれば、最近ではヴェルディを極端な愛国の闘士とする見方に疑念が呈されている。

第二の国歌といわれる合唱「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」を含む『ナブッコ』は初演翌年の1843年、イタリア統一運動を厳しく規制してきたハプスブルク家のお膝元ウィーンで、ヴェルディ本人の指揮により上演され、大成功を収めた。政治的主張だけが目的の作品なら、ウィーンでの上演許可など下りなかったはずである。

13世紀イタリアの島民蜂起を題材とする『シチリア島の夕べの祈り』では、支配者側のフランス人総督と反乱側の幹部がじつはかつて生き別れた父子で、ともに社会的立場と情愛の板挟みで懊悩した末、父は蜂起で殺されてしまう。

つまりこの作品は小宮が指摘するとおり、「フランス人=敵、イタリア人=味方、という単純な図式の上に、イタリア人の愛国心をあおるようなオペラではない」。そもそもイタリアの聴衆向けではなく、パリ・オペラ座の依頼によりフランス語で書かれた。なおヴェルディはイタリア王国誕生にあたり、祝典曲の類を一曲も書かなかったという。

もしヴェルディが生きていて、田母神から作品を依頼されたなら、日本人海賊がガス田採掘施設を攻撃したところ、警備役の中国軍人が死に、それは昔の仲間だったというような筋書きにするだろう。しかし田母神やその追随者は満足できまい。すべてを敵味方で割り切る愚者だからである。

(2014年9月、某ミニコミ誌に寄稿)

2017年6月3日土曜日

侵略の手口

1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、まだ冷戦が終結しきっていない頃、米国はソ連弱体化に乗じてさまざまな国を侵略し始めた。イラク、ソマリア、旧ユーゴスラビアなどだ。しかしリストの最初は1989年12月のパナマ侵攻だった。

侵攻当時パナマは米国の傀儡政権で、ノリエガが国のトップだった。だが米政府の言うことをきかなくなるや、ノリエガは米国の宣伝によって「新しいヒトラー」にされる。人道的介入を名目に、何の脅威でもない小国の侵略を正当化するためだ。

ノリエガ政権の打倒は、その後25年間にわたる米外交政策の見本である。何の脅威でもない外国を標的とし、もっともらしい侵攻の口実をでっち上げる。冷戦終結から今まで、ほとんど何も変わらない。やり口は同じで、登場人物が違うだけだ。

Ryan McMaken, Manuel Noriega Was First in a Long Line of New "Hitlers" (2017.6.1, mises.org)

パリ協定の傲慢

パリ協定に米国ではただ一人の有権者も、労働者も、事業主も、市民も同意していない。上院・下院さえも関わっていない。すべてはエリートの約束ごとである。その約束で他人の財産を右から左に動かし、他人の生活を支配しようというのだ。

パリ協定を進めてきたグローバリストたちは、自分がもたらしたポピュリストの恨みを忘れたふりをしている。地球温暖化の因果関係の分析や選んだ専門家の判断力、高圧的な解決策に対し、まっとうな疑義は何もないかのように振る舞っている。

パリ協定のような非民主的で非経済的な戦略を強制し続ければ、ポピュリストの反乱から国家主義、移民排斥、保護主義の結合という最悪の政策をもたらしかねない。グローバリズムに対する反動は、グローバリズムそのものに劣らず危険である。

Jeffrey A. Tucker, The Amazing Arrogance of the Paris Climate Agreement (2017.6.1, fee.org)

2017年6月2日金曜日

連邦制のすすめ

左派と右派は連邦制度を支持することで、ともに恩恵を享受できる。連邦政府の権力に対する憲法上の制限を強めれば、党派的な憎しみを和らげることもできる。不法移民に寛容な「聖域都市」を大統領令に対し擁護した連邦裁判決は恩恵の例だ。

地方分権によって、人々は「足による投票」のチャンスが広がる。連邦政府レベルの投票よりも良い意思決定につながることが多い。全国民、特に貧困層や恵まれない人が足による投票をしやすくするために、できることはたくさんある。

戦争と大きな政府

文明発展のためには戦争を減らさなければならない。そのためには戦争の本質を包み隠さず、美化をやめることが必要である。戦争の実像を見つめなければならない。死、破壊、重傷、市民の犠牲、経済コスト、国内における自由の喪失などだ。

経済制裁や経済封鎖が侵攻や占領の代わりになりうると信じる人々もいる。だが経済制裁や封鎖もまた戦争行為であり、しかもほとんど降伏につながらない。むしろ制裁を受けた側は憎しみに燃え、通常の戦争で対抗できない場合、テロに走る。

戦争は大きな政府の最良の友だ。福祉を支持するリベラルと軍拡を支持する保守は、有事になれば協力し、大きな政府を支持する。犠牲になるのは個人の自由だ。左派も右派も自由にはリップサービスだけで、福祉・戦争国家と決して対決しない。

2017年6月1日木曜日

難民にプログラミング技術を

プログラミングを教えることは、最も価値ある贈り物の一つだ。人が誰かの助けになり、独立して生きることを可能にするのだから。オランダの難民キャンプでプログラミングを学んだ難民の多くは、再び独立した生き方を求めるようになった。

Gijs Corstens, Why We're Teaching Refugees How to Code (2017.5.27)

「搾取工場」は労働者を救う

グローバル化を巡る議論に欠けているのは、労働者自身の声だ。たしかに中国の工場の労働条件は苛酷で、先進国の我々は決してやりたいと思わないだろう。しかし現地の労働者の考えは違う。彼らはもっと厳しい農村の生活から逃れて来たのだ。

Chelsea Follett, How China's Factories Are Liberating Women (2017.5.27)

「テロとの戦い」がテロを生む

テロというとマンチェスターの自爆攻撃のようなものを考えがちだが、はるかに多数の市民を日常的に殺傷する攻撃は忘れられている。この市民たちはシリア、イエメン、アフガニスタン、ソマリアなどで米国や同盟国の爆撃にさらされている。

伊シチリア島で開いたG7サミットで成果とされたのは、「テロとの戦い」に向けた結束だ。しかしテロとの戦いはすでに16年間続いている。本当の意味は、無実の市民への監視強化、自由な言論とインターネットの取り締まり、爆撃の拡大だ。

米英政府は外国の体制転換に熱心で、しっぺ返しには無頓着だ。「テロとの戦い」を高らかに宣言しても、真の原因を理解しない限りテロはなくせない。テロリストが米欧を憎むのは豊かで自由だからではない。彼らの国で彼らを爆撃するからだ。

Ron Paul, Are We Fighting Terrorism, Or Creating More Terrorism? (2017.5.30)