資本主義は少数を潤し、多数を貧しくするというのは、経済発展に関する最も有害な神話の一つだ。この神話はマルクスにさかのぼる。マルクスによれば、資本主義の下では競争により利潤が減るため、労働者の搾取が拡大するのは必至だという。
マルクスの予言に反し、欧米で労働者の生活水準は改善が続いた。そこでレーニンは、欧米は植民地を搾取して富を吸い上げたという説を唱えた。これに影響されたアフリカの民族主義者たちは、資本主義を拒否し、ソ連の社会主義を採用した。
経済の自由は資本主義国の労働者だけでなく、社会主義国の労働者の生活も改善した。自由はあらゆる人々に恩恵を及ぼす。自由でない人々にもその恩恵は及ぶ。サハラ以南アフリカの平均余命は55年間で40.17歳から59歳にまで延びた。
Marian L. Tupy, Don’t demonise capitalism – it’s making the world a better place (2017.3.2, capx.co)
2 件のコメント:
記事の趣旨に賛同。ただ、立場の異なる人にとって、記事の内容は理解されにくいと感じる。
個人的には資本主義という訳語より資本制と訳すほうがいいかなと思う。
それはさておき、誰もが認める資本主義の核心は、私有財産制とお金を仲立ちとした取り引きだろう。ところ、共産主義者と社会主義者(=いずれも左翼)、権威主義者(=右翼)が考える資本主義と自由主義者の考える資本主義は異なる。
右翼や左翼の言う資本主義とは、社会が資本家と労働者に分断され、資本家を非情な守銭奴に見立てる。労働者は資本家にも経営者にも成れない一般人と決めつけられる。さらに己だけは絶対的政治権力者として資本家を懲らしめ労働者を支配する権威ある立場とする制度。右翼または左翼の国では、政治権力者の序列に加わらなければ生き残れない、金を稼げば稼ぐ程、権力者に賄賂を渡して媚びないと抹殺される。
自由主義者にとっての資本主義とは、暴力と不正を犯罪として取り締まり国民の人権を平等に守る法治国家が必須で、資本家に成りたければ自由に株式を買えばよし、経営者に成りたければ自由に起業すればよし、労働者に成りたければ自由に職に応募できる制度。自由主義者の国では金がないと自由を行使できないから、自分の知恵で金を稼ぐしかない。自由主義でも、それなりに生き残るのは厳しい。さらに、自由主義者でも政治権力者に成ったとき、公正さを維持できるかどうか。公正であるとは、極めて難しく困難な行為だ。権力は必ず腐敗すると言われる。だから、選挙制度と任期の制限が腐敗を取り除くために必要だ。
国民の私有財産を否定し自由な値付けを否定した社会主義の極限の共産主義より、自由な社会の方が発展して全員がより幸福になれることは、20世紀に世界各国で実験検証済みだ。
日本、韓国、ソビエト・ロシア、中国、中東の現代史から、右翼と左翼の資本主義は、後進国や敗戦国が先進国に追い付くまでは機能するが、その先は発展が止まり苦しい時代になると言えそうだ。
アメリカ合衆国が自由主義者の資本主義に最も近い国だろう、しかし、アメリカに不正が全くないわけではない。
生きた人間の現実の欲望をわきまえて、自由の理想を追求して行きたい。
コメントを投稿