2019-05-27

真の階級闘争

市場経済といふ安全保障
もし米国が鉄鋼生産をすべて外国に頼つてゐて、戦争の恐れのために輸入が完全にストップしても心配はいらない。投機家が事前に鉄鋼価格の高騰を見込んで、安い値段で買ひ集めておいてくれる。戦争が長引きさうなら、国内の他の企業が鉄鋼業に参入しても十分元が取れるだらう。
3 Modern Arguments for Tariffs, Debunked | Mises Wire

真の階級闘争
社会には本来、階級闘争は存在しない。自由な市場経済によつて、あらゆる経済的利益に調和がもたらされるからだ。しかし政府が特権を与へる社会では、政府の力で実入りを得る者とそれ以外の人々との間に闘争が生まれる。この事実は、特権階級の利益を守るために隠されてゐる。
The Regulatory-Industrial Complex | Mises Institute

見下されるブルーカラー
先進国でホワイトカラー労働の比重が高まつたために、それが豊かになる唯一の道だといふ間違つた考へが広まり、政府もそれを後押しする。だから教育費が高騰する。しかし実際には、政治エリートが見くだすブルーカラー労働で学んだ知識を生かして起業し、富を築く人々もゐる。
Why the Elites Look Down on Manual Labor | Mises Wire

取引の効用
自発的な取引の決断はすべて、関係者全員の尊厳を大切にする人間関係の実現を意味する。その関係は知り合ひ同士の場合もあるが、さらに見事なのは、赤の他人同士がきはめて複雑な関係を結び、グローバルな取引のネットワークで私たちの生活をすばらしいものにすることである。
The Love the Market Gives | AIER

2019-05-19

ロボットは怖くない

ロボットは怖くない
市場経済において起業家の意思決定を左右するのは、単なる効率アップやコスト削減ではなく、消費者の好みを満足させるかどうかだ。だからたとへ機械が人より効率良く安価に同じ仕事をできたとしても、消費者が人によるサービスを望めば、人が機械に置き換えられることはない。
The Scaremongers Are Wrong about Robots and AI | Mises Wire

旧東西ドイツの教訓
戦後、旧東西ドイツの1人当たりGDPは劇的に差がついた。西独が資本主義を選び、東独が社会主義に苦しんだからだ。西独の経済自由度は1950〜75年の間、世界10位以内を保つた。経済理論では国の所得格差は縮小するとされるが、それは政府が成長を過度に妨害しないときだけだ。
A History Lesson: Comparing Socialist East Germany vs Capitalist West Germany | Mises Institute

共産主義と社会主義
経済学的にみて、共産主義と欧州諸国の社会主義に本質的な違ひはない。どちらも資本家から土地や機械、原材料などの生産手段を奪ひ、政府に所有または支配させようとする。両者のおもな違ひは、政府が経済を解体し、個人の自由を奪ひ、富を破壊するスピードの違ひにすぎない。
Why Social Democracy is Failing Europe | Mises Wire

政府が生む対立
第一次世界大戦後に政治の介入が強まるまで長年、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒はパレスチナ、レバノン、北アフリカで平和に共存してゐた。生ひ立ちや信仰は単に個人の特質で、戦争の口実にならなかつた。政府は今より無害で、税金の取り立てにいそしむだけだつた。
Do We Need The State? - International Man

2019-05-11

政治の過大評価

労働組合員も聖人も
本来経済学では、人間が高い収入と安い値段だけを求めるとみなしたりはしない。どのやうな価値判断に基づいて行動するかは、経済学の関心外だ。高い賃金を求める労働組合員だらうと、宗教上の勤めに最善を尽くさうとする聖人だろうと、経済学はその行動を論じることができる。
The Rejection of Economics | Mises Institute

政治の過大評価
アリストテレスの哲学は、政治の過大評価、経済の過小評価をもたらした。彼や師プラトンのやうな貴族階級にとつて、農民や商人は生計のためにあくせくする俗物でしかなかつた。今でも知識人の間では、政治に携はる人間を経済に携はる人間より優れてゐるとみなす傾向が根強い。
Against the Primacy of Politics — Against the Overestimation of Majority Principle | Mises Wire

価値は主観的
ビジネスの成功を左右するのは、顧客が商品・サービスを高く評価するかどうかだ。この価値判断は顧客自身の観点から行ふのであつて、企業側の観点からではない。その意味で、価値とは純粋に主観的である。この事実は1871年、経済学者カール・メンガーによつて明らかにされた。
4 Ways to Make Value Creation Core to Your Business

社会保障といふ偽保険
本当の保険では、人々は今多く払ふことによつて、将来多くの資産を得ようとする。しかし社会保障の場合、お金の流れは逆だ。将来世代の犠牲によつて、今の高齢者に多くのお金を与へる。社会的な視野から見れば、社会保障は逆保険として作用し、将来得られる資産を少なくする。
Unlike Real Insurance, Social Security "Insurance" Creates Greater Risk for the Future | Mises Wire

2019-05-04

税は会費ではない

コンテナを住居に
世界のミレニアル世代に中古コンテナが住居として人気だ。単なる流行ではなく、高騰する住宅市場から締め出された低所得層にマイホームの可能性をもたらしてゐる。米国では市や郡の建築基準を満たした。鉄製の箱なので、普通の家よりむしろ構造的に頑丈。建築家も興味津々だ。
Why Shipping Containers Are Becoming a Trendy Option for Home Buyers - Foundation for Economic Education

見えない増税
政府が資金調達する方法は⑴課税⑵国債⑶インフレ−−の三つだ。しかしインフレは実質収入がなぜ減つたかわかりにくい。家計が増税のせゐで苦しくなれば政府に文句を言へばいい。だが物価高のせゐだと、中央銀行が真犯人とわからず、「強欲な」資本家や労働組合などを責める。
MMT Is Even More Dubious Than AOC's Green New Deal | Mises Wire

税は会費ではない
市場取引の本質は自発性にある。税は違ふ。税を任意団体の会費に例へることはできない。退会の自由がないからだ。取引を拒めば儲けそこなふかもしれないが、税を拒めば待つてゐるのは監獄だ。払つた税の対価に何かを得ても、それは欲しいからではなく、押し付けられたからだ。
Taxation Is Robbery | Mises Institute

信頼の喪失
インフレの見通しが確たるものになると、政府は普通の債務者と変はらなくなり、借金を返せると信じてもらへるかだけが信頼のカギになる。貨幣の唯一の発行者であることによる特権はなくなる。「信頼の喪失」だ。投資家はもはや国債を通貨と同等の安全資産とはみなさなくなる。
Austerity Works — When the Market Is Freed | Mises Wire

2019-05-01

仏像はグローバル文化

フランスで開催中の「ジャポニスム2018」の一環として、2019年2月23日から3月18日まで、パリのギメ東洋美術館で興福寺(奈良市)の仏像展が開催された。展示されたのは同寺の木造金剛力士立像(国宝)と木造地蔵菩薩立像(重要文化財)である。

「ジャポニスム2018」は日仏友好160年を記念し、フランスで日本文化を紹介する複合型イベント。公式サイトには「世界はふたたび、日本文化に驚く」というキャッチコピーとともに、「世界にまだ知られていない日本文化の魅力」を紹介するという狙いが掲げられている。

仏像が日本を代表する文化の一つであることは間違いない。しかし同時に、古代以降のグローバルな交流から生まれ育った文化であることも、忘れないようにしたい。

仏教は紀元前5世紀頃、ガウタマ・シッダールタ(釈尊、のちにブッダ)によって開かれた。現在のインドとネパールの国境周辺で王国を形成していたシャーキャ(釈迦)族の王子として生まれた釈尊は、極端な苦行を否定して中道を説き、王侯や商人を信者にもつ。仏教は交易の拡大とともに大商人の保護を受け、信者を急速に増やしていった。


前1世紀頃、二つの大きな変化が訪れる。一つは、それまでの伝統的仏教に対する革新運動として、大乗仏教が起こったことである。

伝統的な仏教の特徴は、一言でいえば出家が鉄則という点にある。釈尊がそうであったように、家も富も捨て、妻子とも縁を切って修行に励んでこそ、この世の苦悩から解放され、解脱の境地に至ることができると説く。

これに対し、出家せずに在俗のまま仏教に帰依した在家の信者たちが、仏教は出家した僧だけではなく、民衆を救済するものであるべきだと主張するようになる。彼らは伝統的な仏教(上座仏教)を小乗(一部の人しか救わない小さな乗り物)と蔑称で呼び、自分たちの立場を大乗(すべての人を救う大きな乗り物)と称した。

大乗仏教は交易路を通じて北インドから西域を経て後漢時代に中国に伝播し、いわゆる北伝仏教として、朝鮮半島を経て6世紀に日本に伝えられることになる。

仏教に起こったもう一つの変化は、初めて仏像がつくられるようになったことである。