2024-03-03

永田町の特権集団

衆院政治倫理審査会が2日間にわたって開かれ、岸田文雄首相と安倍、二階両派の幹部が出席し、自民派閥の政治資金パーティー収入不記載事件について弁明した。主要各紙の社説はいずれも、政府・自民に批判的ではある。ところが、国民にとって最大の問題がなぜか論じられていない。税の問題だ。
たとえば、産経新聞は3月1日の社説で、岸田首相の弁明について「還流資金の政治資金収支報告書への不記載をいつ、だれが、どのような理由で開始したのか、またその使途など、肝心な点は明らかにならなかった」と述べる。政治資金規正法に違反し、収支報告書に記載しなかったことはたしかに問題だが、国民、つまり納税者にとって「肝心な点」はそこではない。数億円単位の裏金を「政治資金」として届ければ課税されない、という制度そのものが問われているのだ。

市民グループの12人が2月1日、東京地検に告発状を提出した。自民党安倍派の議員10人が2018〜22年に、派閥主催のパーティー券の売上金を税務署に申告せずに脱税したとする内容だ。東京新聞は「こちら特報部」(2月2日)でこの件を取り上げ、告発した市民グループ代表の「庶民なら厳罰を科されるのに、政治家なら2000万円を懐に入れても、収支報告書の修正で済まされる」というもっともな怒りの声を紹介。元官僚の政策アナリスト古賀茂明氏の「国民からは1円でも厳しく税を徴収するのに、権力者なら許されるというのは、明らかな差別」という発言を伝えた。

一部の人々は、政治家の税の特権には目もくれず、ありもしない特権を躍起になって糾弾する。いわゆる在日特権だ。在日コリアンへの憎悪をあおるデマとして知られるが、一部の保守派政治家や活動家はいまだに固執する。自民党の杉田水脈衆院議員はX(旧ツイッター)に、在日特権は「実際には存在します」と投稿し、批判を招いた。

2月28日の衆院予算委員会分科会では、日本維新の会の高橋英明議員が在日特権を取り上げ、税制面の優遇措置といった特権はあるのかと質問。国税庁は「対象者の国籍であるとか、特定の団体に所属していることをもって特別な扱いをすることはない」と否定した。

この問題についても東京新聞が「こちら特報部」(3月1日)で扱い、税以外にも在日特権は存在しないと指摘している。たとえば、入国審査時の顔写真の撮影や指紋採取などが免除される「特別永住資格」だ。日本は1910年に日韓併合で朝鮮人を「日本国民」にして、労働力として日本で炭鉱労働などに従事させ、終戦後に日本国籍を剥奪した。韓国政府と議論の結果、子孫を含め、安定的な生活が送れるように整備されたのが特別永住資格だ。出入国在留管理庁は「日本への定住性が強いことや、日本国籍を失わせてしまったことへの配慮は必要で、結果的に一般の永住者と違いが生じた」と説明する。日本の植民地支配という歴史的な背景があるのだ。

日本における最大の特権集団は、永田町にいる政治家たちだ。メディアは日頃、さまざまな差別問題を取り上げ、差別はよくないと叫ぶけれども、政治家の巨大な特権や庶民との差別には、気づかないか、気づかないふりをする。

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