2018年7月26日木曜日

寡占は悪か

市場に商品やサービスを供給する企業が少数しかない状態を寡占といい、特に企業が1社しかない場合を独占といいます。今の経済学の通説によると、寡占・独占が進むと企業間の競争がなくなって価格上昇や品質低下などの問題が起こるとされ、その考えを背景に、独占禁止法で寡占・独占が制限されます。しかし、この考えは本当に正しいのでしょうか。

長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(FG)と同県最大手の十八銀行は25日、10月予定だった経営統合を未定として延期すると発表しました。公正取引委員会の審査をクリアできなかったためです。当初予定の4月から再度の延期です。

公取委が統合に待ったをかけたのは、統合で競争が阻害されるとみているためです。十八銀と親和銀が合併すると、県内の融資シェアが7割にのぼります。公取委によれば、他県の地銀が長崎まで越境して展開している事業性融資の規模が小さく、今後進出を計画している金融機関も見当たらないことなどから「競争圧力が極めて低い」。寡占が進めば貸出金利の上昇などを招きかねないといいます。

けれどもこの考えは、価格と需要・供給が互いに影響し合ってつねに変化することを忘れています。今は長崎県内の貸出金利が低いので、他県の地銀や金融機関はわざわざ進出してこないかもしれません。しかし、もし寡占で貸出金利が上昇すれば、それより低い貸出金利で融資を伸ばす商機が生まれます。参入が規制されていない限り、インターネット銀行を含め、県外からの進出・融資は増えるでしょう。そうなれば貸出金利はまた下がります。

寡占は市場経済にとって悪という考えを支えるのは、市場で完全な競争が成り立つには「買い手と売り手が多数存在し、どちらも価格に影響力を持たない」などの条件を満たさなければならないという、今の経済学の通説です。しかしこの条件は現実離れしていますし、そのような条件を満たさなくても、参入の自由さえあれば競争は成り立ちます。

そうだとすれば、寡占を無理に制限しなくてもよいのではないでしょうか。米経済学者のイスラエル・カーズナーは「競争プロセスの自発的なダイナミズムを促進するために必要なのは、必ずしも同じやり方で同じ生産物を生産しているたくさんの小規模な生産者ではない」として、「必要なのは、企業家的参入の自由」だと強調します(『企業家と市場とはなにか』、日本経済評論社)。(2017/07/26

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