2018年7月7日土曜日

ベーシックインカムの桃源郷

ベーシックインカムとは、すべての人に無条件に、基本的な生活を営むためのお金を一律に支給する社会政策の構想です。メリットとして、生活保護の対象に含まれないワーキングプアの救済のほか、社会保障の簡素化による行政コストの節約などが主張されています。しかし、そううまくいくのでしょうか。

今週、「やさしい経済学」で連載されている「ベーシックインカムを考える」(萱野稔人・津田塾大学教授)が参考になります。大きな壁は財源です。すべての日本国民に1人当たり毎月15万円を支給すると仮定した場合、15万円×12カ月×1億2000万人で、総額216兆円もの財源が毎年必要となります。

これは現在の社会保障給付費(2016年度予算ベースで118.3兆円)の2倍近い額です。萱野氏が述べるとおり、これだけの財源を今の日本政府が確保するのはほぼ不可能でしょう。あらゆる社会保障の給付をベーシックインカムに一本化し、行政コストを減らしても、せいぜい2兆円程度しか節約できないといいます。

補足すると、貧しい人が本当に必要とするのはお金ではありません。豊かに暮らすために必要なのは、衣食住をはじめとする物やサービスです。お金はそれらを手に入れる手段にすぎません。お金を着たり食べたりはできません。

ベーシックインカムの財源を確保するために企業や個人に対し増税すれば、その分、経済の生産力は落ちます。物やサービスを生み出すのは企業だし、企業に必要な投資資金を直接・間接に提供するのは個人だからです。生産力が落ちれば、物やサービスの供給は減り、物価は上がり、同じ額のお金で買える物やサービスの量が少なくなります。

貧しさをなくすのに必要なのはお金ではなく、物やサービスであり、それを生み出す生産力だということを、ベーシックインカムを推進する論者は忘れています。ベーシックインカムに限った話ではありませんが、お金をばらまいてもユートピアはやって来ないのです。(2017/07/07

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