2018年7月16日月曜日

経済統計は政府の仕事か?

国内総生産(GDP)、失業率、物価指数--。政府はさまざまな経済統計を定期的に集計・公表し、世間はそれを当然のように受け止めています。しかし経済統計の作成とは、そもそも政府がやるべき仕事なのでしょうか。

経済統計というと、政治的に中立な無味乾燥なデータというイメージがあるかもしれません。しかしそれは違います。いずれもはっきりした政治の意図によって生み出されたものです。一言でいえば、経済政策の正当化です。

経済統計の歴史はそれほど古くありません。GDPの前身である国民所得が米国で普及したきっかけは、1930年代の大恐慌でした。のちにノーベル賞を受賞する経済学者クズネッツがルーズベルト政権の求めで国民所得を試算し、報告書にまとめたところ、大恐慌の始まった1929年から1932年までの間に半減したことが明らかになったのです。

この衝撃的な報告書は市販され、不況にもかかわらずベストセラーになりました。ルーズベルト大統領はこのデータを追い風に、公共事業を柱とするニューディール政策を推し進めたのです。しかし、公共事業が不況克服に役立ったかどうかは、経済学者の間で議論が分かれます。

政府にとって、統計は政策を正当化する口実にすぎません。だから定義を自分に都合よく変えることもあります。

クズネッツは国民所得に政府支出を含めませんでした。軍事費や経済活動の前提にすぎないインフラ整備費は、国民の豊かさを測るにはふさわしくないと考えたからです。しかし公共事業を拡大し、第二次世界大戦に向けて軍備を強化していたルーズベルト政権は、それでは都合が悪いので、政府支出を加えました(ダイアン・コイル『GDP』、みすず書房)。

この名残で、今でもGDPには政府支出が含まれます。だからどう見ても無駄な公共事業でも、GDPに計上されて経済成長率が高まったことになるのです。

記事によると、GDPを集計する内閣府ではエコノミスト不足に悩んでいるそうです。しかし最近は民間に膨大なビッグデータが蓄積され、政府の統計よりも役立つ分析がいくらでもできます。政府がわざわざ税金を使って経済統計を作成すること自体、考え直すときではないでしょうか。(2017/07/16

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