2018年7月12日木曜日

転売ヤーは許せない?

歴史上、商人はしばしば不当に軽蔑・差別されました。アリストテレスは利潤目的の商業を非難に値する職業と述べましたし、荻生徂徠は商人を「骨折らずして、坐して利を儲(もうく)る者」と批判しました。農民と違い、商品を右から左に動かすだけで労せずして利益を得る、非生産的な存在として憎まれたのです。

今でもこの時代錯誤な偏見は消えていません。よく非難の対象になるのは、「転売屋」「転売ヤー」とさげすまれる、コンサートやイベントのチケットを転売する企業や個人です。記事によると、総務省とぴあは2018年にも、マイナンバーカードの認証機能を使ってチケットの高額転売を防ぐ新システムを稼働するそうです。このニュースに対し、SNSでは人々が「転売屋完全終了」「転売屋ざまぁ」などと快哉を叫んでいます。

とても市場経済の国とは思えません。チケットの転売は、それがいくら高値であろうとも、違法ではありません。違法でない限り、当事者の自由に委ねるのが市場経済の鉄則です。コンサートなどの主催者が正規の購入者以外の入場を禁止するのは勝手ですが、それに政府が肩入れするのはおかしなことです。

音楽業界の中には「チケットはアーティストがかかわる特殊な商品」と言い、だから高値転売は許せないと憤る人がいます。しかしゴッホやモディリアーニの絵画だって、「発売」当初をはるかに上回る値段で取引されています。それが画家をおとしめることにはならないでしょう。

安く入手した商品を高く転売することは、いつの時代も一定の人々にとって不道徳で許しがたい行為なのかもしれません。しかしもしそうなら、自分が転売を利用しなければいいだけの話です。自由を許さない、不寛容で息苦しい社会では、やがて文化そのものがやせ細ってしまうでしょう。(2017/07/12

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