この記事でミーゼスは、賃金、失業、インフレの相互関係をオーストリア学派の視点から分析し、現代の経済政策が抱える誤解を鋭く指摘しています。主な論点は以下の通りです。
1. 賃金を決定するのは消費者である
ミーゼスによれば、賃金の最終的な支払者は雇用主ではなく「消費者」です。雇用主は消費者の代理人に過ぎず、消費者が製品に対して支払う意志のある金額を超えて賃金を支払うことはできません。もし無理に高い賃金を支払えば、企業は破産してしまいます。
2. 賃金上昇の真の要因は「資本の蓄積」
賃金が上がる唯一の道は、労働者一人あたりの「投資資本量」を増やすことです。
より良い道具や機械(資本財)があれば、労働者の生産性が向上します。
生産性が向上して初めて、実質的な賃金が上昇します。
労働組合や法律が賃金を上げているという通説は「幻想」であり、資本蓄積を妨げる政策は逆に労働者を貧しくすると主張しています。
3. 失業の原因は「市場価格を超えた賃金設定」
自由な労働市場では、働きたい人が全員職を得られる「均衡賃金」に向かう傾向があります。
失業が発生する理由: 労働組合の圧力や政府の介入によって、市場価格(生産性に見合った価格)よりも高い水準に賃金が据え置かれるためです。
無理に引き上げられた賃金の下では、雇用主は全員を雇うことができず、結果として恒久的な失業が生じます。
4. インフレは失業を隠すための「姑息な手段」
政府は、賃金が高すぎて発生した失業を解消するために、信用拡大(インフレ政策)を行います。
通貨供給量を増やして物価を上げることで、労働者の「実質賃金」をこっそり引き下げ、雇用を維持しようとします。
しかし、労働組合が物価上昇に合わせてさらなる賃上げを要求するため、際限のないインフレの連鎖(賃金・物価スパイラル)に陥ります。
5. 結論:インフレは解決策ではない
ミーゼスは、インフレは永続的な解決策にはならず、最終的には通貨制度の崩壊を招くと警告しています。
購買力理論の否定: 「労働者の手元に金を増やせば景気が良くなる」という主張は、単に通貨価値を下げて物価を上げるだけのペテンであると断じています。
真の繁栄には、インフレをやめ、健全な通貨制度に戻り、資本の蓄積を促進する(貯蓄と投資を奨励する)しかないと結論づけています。
まとめ:
ミーゼスは、「賃金の引き上げは資本投資による生産性向上によってのみ達成されるべきであり、労働組合や政府が人為的に賃金を吊り上げれば失業が生じ、その失業をインフレで解決しようとすれば経済破綻を招く」と警告しています。
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