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2025-12-10

国家統制・保護主義・生存圏

この抜粋は、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが1944年に発表した著書『万能政府:全体国家と全体戦争の台頭』からのものです。

ミーゼスは、国家統制主義 (Etatism)、すなわち介入主義社会主義といった国家による経済への干渉政策が、必然的に経済的ナショナリズム保護主義につながり、最終的に戦争を引き起こすという論点を展開しています。

1. 国家統制主義と経済的ナショナリズム

  • 国家統制主義の性質: 国家統制主義は、自国の利益のみを考慮し、外国人の運命や幸福には関心を持ちません。

  • 国際自由貿易との非互換性: いかなる形の国家統制主義も、国際的な自由貿易の世界では機能しません。国家の介入政策を維持するためには、必然的に国内市場を外国市場から切り離す措置(現代の保護主義)が必要になります。

  • 保護主義の原因: 現代の保護主義は、過去の誤った経済的議論から生じたものではなく、政府による国内ビジネスへの干渉(介入主義)の避けられない結果です。介入主義は生産コストを上昇させるため、輸入品の競争から国内産業を保護せざるを得なくなります。

  • 自由貿易の前提: 国際的な自由貿易は、国内の自由貿易を必要とします。

2. 労働政策と保護主義の必要性

  • 国内コストの上昇: 労働時間の短縮やその他の「親労働」的な法制は、他の条件が変わらなければ生産コストを上昇させます。

  • 競争条件の変化: コストが上昇すると、外国の生産者が国内および海外市場でより有利に競争できるようになります。

  • 保護の要求: そのため、賃金の高い国々の労働者は、より低い賃金で生産された外国製品との競争から身を守るために、輸入関税を要求します(「ダンピング」として非難)。

  • 国際的合意の限界: 国際的な労働法制の平等化(国際労働機関など)は、各国間の天然資源や人口密度による労働生産性の違い(賃金格差)を解消できないため、保護主義に代わる解決策にはなりえません。

3. 関税による独占の発生

  • コスト上昇の隠蔽: 政府の介入による国内生産コストの上昇を相殺し、競争力を維持しようとする保護関税は、新たな問題を引き起こします。

  • 独占の創出: 国内需要を上回る製品を生産している産業では、関税はそれだけではコスト上昇を完全に相殺できません。関税が国内市場を隔離することで、国内生産者はカルテルを結成し、世界市場価格に関税を加えた水準に近い独占価格を国内消費者に請求することが可能になります。

  • 輸出補助: 国内で独占利益を得ることで、彼らは海外ではより低い価格で販売する(輸出補助金を国内消費者が支払う形)ことが可能になります。

  • 政府の目的: 政府は、国内価格を世界市場より高く保つことを目指しており、独占に対する闘いは見せかけに過ぎません。独占は自由放任資本主義の必然的な結果ではなく、政府の政策(関税)によって作られたものです。

4. 経済的自給自足(アウタルキー)への志向

  • 介入主義と自給自足: 介入主義は市場を国家管理下に置くことを目指すため、国境を越えた国際的な経済関係は障害と見なされ、その究極の目標は経済的自給自足 (Autarky) となります。

  • 社会主義の志向: 社会主義政府もまた、市場を排除しようとするため、経済的に自給自足している状態が「完全」なものと見なされます。

  • 生産性の低下: 保護主義と自給自足の追求は、国際分業を阻害し、より生産性の高い資源を未使用のままにし、世界の生産性を低下させ、生活水準を低下させます。

5. 生存圏(レーベンスラウム)の要求

  • 工業国の懸念: 特に工業国では、他国の保護主義によって食料や原材料の輸入代金を輸出で支払えなくなることへの懸念が高まります。

  • ドイツ・ナショナリズムの動機: ドイツの攻撃的ナショナリズムは、この経済的窮状への懸念から生まれています。彼らは、食料と原材料の輸入なしには生き残れないと考え、他国が自国市場を閉ざす中で、この問題の解決策として「生存圏(Lebensraum)」を征服する必要があると主張しました。

  • 戦争の動機: ドイツは戦争をしたがっているから自給自足を目指したのではなく、経済的自給自足(アウタルキー)を達成したいから戦争を目指した、とミーゼスは結論付けています。

この分析は、経済的自由の原則からの逸脱(国家統制主義)が、いかにして国際対立を激化させ、最終的に世界大戦へとつながるかを論じています。


(Geminiを利用)
Etatism, Protectionism, and the Demand for Lebensraum | Mises Institute [LINK]

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