この記事「The Idea of a Private Law Society: The Case of Karl Ludwig von Haller(私法社会という理念:カール・ルートヴィヒ・フォン・ハラーの事例)」について解説します。
ハンス=ヘルマン・ホッペ氏はこの記事で、19世紀のスイスの政治学者カール・ルートヴィヒ・フォン・ハラー(Karl Ludwig von Haller)を「忘れ去られた反国家主義の英雄」として再評価しています。ハラーは、現代の私たちが当然視している「国家」の概念を根底から覆す視点を持っていました。
1. 「社会契約」という虚構の否定
ハラーの主著『政治学の復興』において、彼はホッブズやルソーが唱えた「社会契約説」を真っ向から否定しました。「国民が合意して国家を作った」という物語は歴史的事実ではなく、国家を正当化するための「作り話」に過ぎないと考えたのです。
ハラーに言えば、人間関係の基本は「契約」ではなく、「事実としての力の差」と「私有財産」にあります。
2. 「私法社会(Patrimonial State)」の理念
ハラーが理想としたのは、国家を「公共の組織」としてではなく、「私的な財産関係の集積」として捉える社会です。
君主は「地主」である: 王や君主は「国民の公僕」ではなく、広大な土地を持つ「筆頭地主(大所有者)」です。
国民は「契約相手」である: 住民はその土地に住むために君主と契約を結んでいる「店借人」や「従業員」、「同盟者」に過ぎません。
公共料金ではなくサービス料: 税金は「義務」ではなく、保護や土地利用に対する「対価(サービス料)」となります。
3. 現代国家との対比
ホッペ氏は、ハラーの視点を用いることで、現代の「公共国家」がいかに異常であるかを浮き彫りにしています。
| 比較項目 | 現代の「公共」国家 | ハラーの「私法」社会 |
| 統治者の地位 | 抽象的な「国家」の代理人(公僕) | 土地の具体的な所有者(地主) |
| 法律の性質 | 国家が一方的に作る「公法」 | 合意に基づく「私法・契約」 |
| 税金 | 拒否できない略奪(徴税) | サービスや土地使用への対価 |
| 離脱の権利 | 事実上困難(国籍離脱) | 契約終了による退去・移住 |
| 責任 | 誰も責任を取らない「公共物」 | 所有者が自身の財産価値を守る責任 |
4. なぜホッペはハラーを支持するのか
ホッペ氏がハラーを重視するのは、ハラーの「世襲国家・家産国家(パトリモニアル・ステート)」の概念が、現代のリバタリアンが目指す「無政府資本主義(私法社会)」に驚くほど近いからです。
国家を「神聖な公共物」というベールから剥ぎ取り、単なる「大きな私有地と、そこでの契約関係」として再定義することで、国家が持つ「法の独占権」を解体できると考えています。もし国家がただの地主であれば、他の地主との競争にさらされ、横暴な振る舞いはできなくなる(=国民が隣の土地へ逃げてしまうため)からです。
まとめ
この記事を通じて、ホッペ氏は「国家を『公共』のものと考えるのをやめ、すべてを『私的な契約』に戻せば、自由は回復される」というハラーの教訓を現代に投げかけています。
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