この記事「On Centralization, Decentralization, and Self-Defense(中央集権化、分権化、そして自衛について)」は、経済学者ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)氏によるものです。
この記事の主要な論点を日本語で要約します。
1. 国家の性質:「定住型強盗」
ホッペ氏は、国家を自発的な取引で成り立つ経済組織ではなく、暴力や脅迫(税金)によって運営される「定住型強盗(stationary bandits)」であると定義します。支配層は生産的な「宿主(国民)」から略奪して生きる寄生的な存在であり、常に略奪量を増やすために領土拡大と中央集権化を目指す性質を持っています。
2. 中央集権化の弊害と「ヨーロッパの奇跡」
世界政府の危険性: 中央集権化が進み、最終的に「世界政府」が誕生すると、人々は略奪から逃れるための「移住(足による投票)」ができなくなります。その結果、搾取は際限なく強まり、文明は衰退します。
分権化の利点: かつてのヨーロッパが繁栄した(ヨーロッパの奇跡)のは、数百もの小さな統治体に分裂していたからです。統治者は有能な国民が隣国へ逃げないよう、税を抑え、自由を認めざるを得ませんでした。これが経済・科学・文化の発展を促しました。
3. 「帝国主義のパラドックス」
相対的に「自由主義的」な国(例:かつてのイギリスやアメリカ)は、国民が生産的であるため、戦争に勝つための資源をより多く持ちます。その結果、国内で自由を重んじる政権ほど、皮肉にも対外的には帝国主義的になり、中央集権化を推し進めるリーダーとなってしまう現象を指摘しています。
4. 小さな単位や独立組織がいかに自衛するか
「小さな国や独立した地域は、大きな軍事大国にすぐ征服されてしまうのではないか?」という疑問に対し、ホッペ氏は以下の2つの指針を提示しています。
指針①:挑発しない(Do not provoke)
独立(分離独立)は、あくまで「相手国の政府(支配層)」からの離脱であり、その国の「国民」との敵対ではないことを強調すべきです。
平和的かつ協調的な態度を保ち、相手の世論を味方につける(あるいは中立に保つ)ことが重要です。
指針②:武装する(Be armed)
武装した市民: 国家による中央集権的な軍隊ではなく、市民自身が武装し、ゲリラ戦やパルチザン戦の訓練を受けた「民兵」組織を持つことが強力な抑止力になります。
社会的結束: 共通の言語や文化、相互の信頼(同質性)があるコミュニティは、侵略者に対して強い抵抗力を発揮します。
非協力(市民的不服従): 征服された後も国民が徹底して非協力的であれば、支配を維持するコストが略奪の利益を上回り、侵略者は撤退せざるを得なくなります。
5. 結論
現在の世界的な中央集権化(グローバリズム)による経済停滞や混乱に対し、ホッペ氏は「数千のリヒテンシュタインやスイスの州」のような、極限まで分権化された社会こそが自由と繁栄を取り戻す唯一の道であると主張しています。
私有財産制に基づいた高度に分権化された社会(私法社会)では、攻撃すべき「中央司令部」が存在しないため、侵略者にとっては征服が極めて困難で割に合わないものになると結論づけています。
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