safeguard という英単語は「保護する」という意味です。経済用語として使われる場合は、「緊急輸入制限」という意味になります。誰を保護するのでしょうか。
経済産業省ホームページによると、セーフガード(緊急輸入制限)とは「特定品目の貨物の輸入の急増が、国内産業に重大な損害を与えていることが認められ、かつ、国民経済上緊急の必要性が認められる場合に、損害を回避するための関税の賦課又は輸入数量制限を行うもの」といいます。
この説明から明らかなように、セーフガードによる保護の対象は「国内産業」です。消費者ではありません。「国民経済上緊急の必要性が認められる場合」という条件は付いていますが、これは要するに「政治的に重要な場合」という意味でしかありませんから、消費者がないがしろにされていることに変わりはありません。
政府は8月1日から冷凍輸入牛肉に対し、22年も前に導入されたセーフガードを発動し、来年3月末までに関税率を引き上げます。記事によれば、冷凍牛肉を使う頻度の高い、牛丼チェーンへの影響が大きいといいます。
牛丼チェーンの利用客の多くは、中間層以下の人々です。政府は何かにつけて庶民の味方だと公言しますが、一部の国内産業の保護を優先し、消費者にツケを押しつける政策は、庶民の味方とは正反対といわざるをえません。
しかも価格帯の高い国内産牛肉と廉価で外食や業務用に使われる輸入牛肉とは市場が競合せず、輸入が増えても国内農家が大きな打撃を被る事態は考えにくいというのですから、いったい何のためのセーフガード発動だかすらわかりません。
政府は「ルールに基づき機械的に発動」(農林水産省幹部)せざるをえないとしているそうです。ルールは秩序をつくるためのものですが、政府の硬直したルールはむしろ社会を混乱させます。(2017/07/28)
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