私たちは子供の頃から、お金は政府が発行するから信頼され、通用するのだと教えられてきました。しかしそれは正しくありません。
人類の歴史上、長らくお金として使われた金(きん)は、政府が作ったものではありません。他の金属や布、穀物などもお金として一時使われましたが、金が一番愛用され、最後に残りました。お金は市場が生み、競争によって育まれたのです。
政府・中央銀行が発行する紙幣は、金との引換券にすぎませんでした。この仕組みを金本位制といいます。金本位制は1971年のニクソン・ショックまで続きました。つまり、お金が政府の権威以外に何の裏付けもない紙切れ(不換紙幣)になってから、まだ50年も経っていません。
そして今、市場がお金を育む時代が、再びやって来ようとしています。仮想通貨の隆盛です。民間で発行されたさまざまなお金がしのぎを削る姿は、少し前まで想像もしなかったものです。記事が伝える激しい値動きや、発行方針の対立による分裂の危機に不安を感じる人も少なくないでしょう。
しかしだからといって、政府に仮想通貨の規制や「ルール」の整備を求めるのは正しくないでしょう。政府が市場経済を規制してうまくいったためしはないからです。政府自身、わずか半世紀足らずの不換紙幣の時代に大量のお金を刷りまくり、その価値をおとしめたことを思えばなおさらです。
経済学者ハイエクはニクソン・ショックの5年後、市場競争は「政府がこれまで生みだしてきたよりも良い貨幣を生みだすように思われる」(『貨幣論集』春秋社)と述べています。仮想通貨の時代は始まったばかり。目先の動きに一喜一憂せず、その進化を見守りたいものです。(2017/07/15)
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