先日、日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)で大枠合意した際、「政治的事情に基づいて、政府が関税や輸入制限など多数の規制をかけるようでは、とても胸を張って自由貿易とは呼べません」と辛口のコメントをしました。その見方は間違っていなかったようです。
今回の記事にあるように、EU産チーズは主に29.8~40%の関税がかかっていますが、大枠合意では低関税輸入枠をつくります。税率を段階的に引き下げて16年目にゼロにし、枠の数量は2万トンから16年目に3万1千トンまで引き上げます。対象はモッツァレラなどソフト系チーズです。
しかし消費者への恩恵は限られそうだと記事は指摘します。枠を超えた分は今の高関税が残るうえ、そもそも3万1千トンという輸入枠自体、チーズ全体の消費量の7%(想定ベース)にすぎないからです。安くふんだんに手に入ると思っていた欧州産チーズがどこに行っても見当たらず、困惑する消費者の姿が目に浮かびます。
今回の大枠合意は、チェダーなどハード系チーズの関税撤廃に応じる代わりにソフト系の関税を一定程度残した環太平洋経済連携協定(TPP)との「バランス」も考慮されたそうです。本当の自由貿易なら、消費者はそのような政治判断に基づいてチーズを選んだりしません。
日欧EPAの目玉とされるチーズですら、その実情はこうなのですから、他は推して知るべしでしょう。とても米国の保護主義を上から目線で批判する資格はありません。もっと立派な「自由貿易の旗」を掲げてもらいたいものです。(2017/07/18)
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