安倍晋三首相は今月上旬、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意した際、記者会見で「保護主義の動きがある中、自由貿易の旗を掲げる意志を示せた」と強調しました。しかし国内生産者に対する補助金とワンセットなら、自由貿易とは呼べません。
記事によれば、日欧EPA発効に向け、政府・与党は農業対策の策定に入りました。目玉とされるチーズを巡っては、農家に対する現行の交付金にさらに支援額を上乗せする案などが浮上しているそうです。その原資はもちろん国民の税金です。
貿易のメリットとは、安くて品質の良い商品を買う選択肢が広がり、国民の暮らしが豊かになることです。EU産チーズには輸入枠が設定され、そもそもわずかな輸入量しか見込めませんが、国民が享受するそのわずかなメリットさえ、対策費のために税金を取られれば吹き飛んでしまいかねません。
関連記事「未発効TPPは6500億円 」によると、日欧EPAより先にまとまった環太平洋経済連携協定(TPP)は具体的な発効時期が見えていないにもかかわらず、6575億円の対策費が執行段階に入ったそうです。手回しのよさに恐れ入ります。
過去にはもっとすごいのがあります。関連記事にあるように、政府は1993年に合意したウルグアイラウンドによるコメの部分開放などを受け、総事業費6兆100億円もの対策をまとめましたが、全国49カ所の温泉施設の整備費なども紛れ込むという税金のむだ遣いだったのです。
対策費を名目とする税金のばらまきが「自由貿易」の代償だと言われたのでは、自由貿易は立つ瀬がありません。補助金とセットの貿易政策は自由貿易ではありません。自由貿易の名をかたる保護主義です。(2017/07/20)
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