コラムニスト、レイチェル・マースデン
(2022年5月5日)
バイデン米大統領が4月27日に発表した、国土安全保障省での偽情報統制委員会の新設は、自由に対する新たな追い打ちだった。今回は、多様な情報を得る市民の権利への冒涜だ。
ウクライナ外務省の元広報顧問、ヤンコビッチ氏が率いる同委員会の初任務は「ロシアからの偽情報と、米・メキシコ国境に関する誤解を招く情報」への対処だという。移民と外交というこの二つの問題が現在、米政府の重大な失敗とみなされているのは興味深い。最終的に統制の標的になるのは反対意見だ。
ヤンコビッチ氏が2020年に出した本『情報戦争の敗れ方〜ロシア、偽ニュース、紛争の未来』の題名は、米欧のシナリオは真実でロシアのシナリオは「偽ニュース」だと描く。米欧主流メディアが、偽ニュースや戦争プロパガンダとみなされかねない政府製の物語の宣伝と無縁ではなかった事実が見えなくなる。
操作した情報だけを、政府やその補助を受けた少数メディアを通じて国民に与えようとする米欧諸国の欲望は、より貪欲になっている。おそらく政府の目的が専制的になるほど、ポピュリスト的な感情が高まり、英国のEU離脱やトランプの大統領選出、米国が支援する紛争への反対などが起こるからだろう。
国内安全保障と偽情報統制の融合が明らかになったのは2016年、欧州議会がイスラム系テロリストのプロパガンダとロシアのメディアを同一視し、ロシアのメディアを貶めるプロパガンダ工作とみられる行為を行なったときだ。その後、欧米政府は次々と言論の自由を国家安全保障の管理下に置くようになった。
たとえばフランスでは、ネット上の情報のやり取りの責任を国内情報機関(DGSI)に委ね、この取り組みに防衛予算の提供を受けた新興企業を巻き込むことを検討していると報じられている。
カナダの電子スパイ機関である通信安全保障機構は、ウクライナ紛争について真偽の定まらない出来事に関する自分の解釈を事実としてツイートし、一方でロシアの解釈は無効だと日常的に非難してきた。
それ以前にもカナダ軍はトルドー首相の下、数カ月に及ぶ軍事級のプロパガンダ作戦を展開した。アフガニスタン戦争で磨かれた戦術を用い、同首相の描いた新型コロナウイルスの物語を、無防備なカナダ国民に信じ込ませようとしたのだ。
英国はコロナやロシアに関する「偽情報」に対抗するため、軍の心理戦の専門家をNATOに派遣した。「市民が自らを守るための正しい情報を持ち、悪意のある偽情報作戦から民主主義が守られるように、助言し支援する」とウォレス国防相は昨年述べている。
テロ、健康、そして今では偽情報はすべて、私たちの自由を急速に侵食するための口実として役立っている。しかし、私たちは本当に安全なのだろうか。それとも、ますます自由が失われていくだけなのだろうか。
(次より抄訳)
Is the West at war with disinformation or dissent? — RT World News [LINK]
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