クインシー研究所主任研究員、アナトール・リーベン
(2022年5月13日)
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請には、悲しくも哀れな皮肉がある。冷戦時代、ソ連は軍事大国で中欧の大部分を占領し、少なくとも当面は、西側の民主資本主義諸国に対する真の脅威かと思われた。しかしフィンランドとスウェーデンはその数十年間、公式には中立を保っていた。
フィンランドの場合、中立はソ連と戦争を終結させる条約の条件だった。スウェーデンの場合は、事実上米国の安全保障の傘の下にありながら、何の貢献もリスクも負わずに済むという現実的利点があった。帝国主義的で人種差別的な米国に対して、道徳的な優位を誇れることも大きな心理的利点だった。
冷戦終結後、ロシアは東に1000マイル後退し、NATOとEUは大きく拡大した。冷戦時代もその後も、ロシアがフィンランドを脅かしたことは一度もない。ソ連はフィンランドとの条約を厳守し、さらに40年間保持することができたフィンランドの軍事基地から撤退した。
フィンランドはソ連軍に対する英雄的な戦いによって、潰すには手強い相手だとソ連に確信させた。NATOに加盟しなくても、フィンランドは手強いし、手強くあり続けるだろう。自国を守ろうと決意しているからだ。
ロシアが方針を転換しフィンランドを攻撃すると考える理由はなかった。一方、ウクライナを攻撃した理由は明白だ。1990年代にNATOの拡大が始まって以来、ロシア政府関係者も3人の元駐ロシア大使や現CIA長官を含む西側の専門家も、ウクライナが反露同盟に加われば戦争の引き金になると警告してきた。
スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟することは、両国の安全保障にとって必要ない。フィンランドはNATOに加盟することで、ロシアと西側諸国の仲介役としてウクライナの戦争を終わらせたり、和解を促したりする可能性を捨て去る。むしろ欧州を横断する新たな冷戦の境界線を築くことになる。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、欧州全体が自分の大陸に責任を持つという夢を捨て、米国への完全な依存に身を委ねた象徴的な瞬間だったと見ることもできるだろう。
米国やNATOが長い間公然と目指してきた、欧州からロシアを完全に排除することは、長期にはロシアを戦略的に完全に中国に依存させ、中国を欧州の東の境界線まで連れてくるかもしれない。それは欧州の戦略的過ちに対する報いと言えなくもない。欧州人でなければ、愉快にさえ感じるかもしれない。
(次より抄訳)
Finland and Sweden will join NATO at the expense of everything - Responsible Statecraft [LINK]
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