経済学者、ハンス・ヘルマン・ホッペ
(2025年3月21日)
*米アラバマ州オーバーンのミーゼス研究所で開催された「オーストリア学派経済研究会議 2025」での講演より抜粋。
(ミレイ・アルゼンチン大統領に)妥協が必要なのはわかる。しかし、最終的な目標に反するような妥協をしてはならない。
もちろん彼(ミレイ大統領)のやったことのいくつかが改善だったことは否定しない。けれど一方で、アルゼンチンはあまりに悲惨な状況で、何の改善もしないのは難しい。(会場笑)
彼(同)は、中央銀行を廃止すると言いながら、しなかった。そればかりか、金融担当の政権幹部は中央銀行出身者ばかりだ。
彼(同)は、中央銀行をなくしたら前より大幅なインフレになるといった。それを聞いて、私は心中、彼は経済学について何も知らないなと思った。
彼(同)の就任以来、マネーサプライは2倍になった。経済に無知な彼のファンにとってはまったくどうでもいいことだろう。1年間に増やした債務は前任者の誰よりも多い。
彼(同)は増税はしないと言った。増税するくらいなら腕を切り落とすと言った。今、いくつかの税を引き上げ、そこらを走り回っているが、腕はついている。(会場笑)
オーストリア派リバタリアンの外交方針は、中立と不干渉だ。しかしミレイ氏が就任して最初に言ったのは、NATO(北大西洋条約機構)にぜひ入りたい、だった。たとえアルゼンチンが北大西洋になくてもだ。(会場笑)
*東アジアにあるのにNATOに入りたがっている日本人はこれを笑えない。
ミレイ氏の一番の友人はネタニヤフ(イスラエル首相)だ。ネタニヤフはもちろん大量虐殺者でジェノサイドに関与している。彼のような人間を、どんなリバタリアンであろうと、擁護できるとは理解できない。
ミレイ氏はリバタリアンの評判を台無しにした。リバタリアンはネタニヤフ、ゼレンスキー(ウクライナ大統領)、トランプ(米大統領)の友人に違いないと思われるようになってしまった。我々は彼ら全員に反対しているのに。
(次より抜粋)
Considerations and Reflections of a Veteran Reactionary Libertarian | Hans-Hermann Hoppe - YouTube [LINK]
【コメント】オーストリア学派経済学の重鎮ホッペ氏による、再度のミレイ氏批判。75歳となったホッペ氏は、多少の言い間違いはあるものの、ユーモアを交え、彼らしい視野の広さと骨太な論理で、ホッペ氏の師でもあるマレー・ロスバード氏を尊敬するというミレイ氏の欺瞞を暴いていく。ミレイ氏がリバタリアンの評判を台無しにしたという怒りは、真のリバタリアンなら誰もが共有する思いだろう。一方、ミレイ氏を英雄として担ぎ回る日本のいわゆる自由主義界隈は、ホッペ氏の指摘するような、ミレイ氏の内政・外交の問題点から目をそらし続けている。深い失望を禁じえない。
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