2023-04-08

戦争犯罪の責任を免れる人々

ケイトー研究所主任研究員、ダグ・バンドウ
(2023年4月5日)

国際刑事裁判所(ICC)はロシアのプーチン大統領を戦争犯罪で起訴し、逮捕状を発行した。ジョー・バイデン米大統領は、プーチン大統領が「明らかに戦争犯罪を犯した」と述べ、この行動を支持した。米国務省は、ロシアの軍隊が行った残虐行為について露当局者に責任を取らせるよう求めた。アントニー・ブリンケン国務長官はこう述べた。「法廷の当事者で義務を負う者は、その義務を果たすべきだ」
ただ一つ問題がある。バイデンはさらに、「問題は(ICCを)米国も国際的に承認していないことだ」と認めた。実際、米国はロシアの戦場での行動に関する調査を妨げている。ニューヨーク・タイムズ紙はこう報じた。「国防総省は、米情報機関がウクライナでのロシアの残虐行為について集めた証拠をハーグの国際刑事裁判所と共有しないよう、バイデン政権を妨げている」

なぜそんなことをするのだろうか。「米国の軍事指導者は、裁判所が米国人を起訴する道を開くのに役立つかもしれない先例を作ることを恐れて、裁判所のロシア人調査を助けることに反対している」とタイムズは説明している。

しかしICCに対するトランプ政権の反応に比べれば穏やかなものだ。共和党の大統領候補と目されるマイク・ポンペオ国務長官(当時)が率いる前政権は、「米国人の調査」を敢行したとして、ICCの検事2人とその家族に対して制裁を課した。米政府は検事らを中国、イラン、ロシアの人権侵害者と同様に扱った。

米欧の戦争犯罪がない不自然さ


国務省は最近、米国を除外して人権裁判を支援するという不可能なことを企てるため、同盟国が支援する「国際化された国内裁判所」を設立し、ロシア人を裁くことを提案した。都合の良いことに、そのような裁判所は米国人の恥ずべき調査を行うことはない。国務省のベス・バン・シャーク特使(国際刑事司法担当)によれば、「ウクライナで行われている国際犯罪に対する包括的な説明責任を果たすために、ウクライナや世界中の平和を愛する国々と協力し、このような法廷を立ち上げ、職員・財源を確保することを約束する」。しかし他のどこでも、米国とその同盟国に責任を負わせないよう保護している。

実際、バン・シャーク氏は、米国人を標的にすることに使われる可能性のある前例を作ることを政府が恐れたと認めた。

バイデン政権が米国の潜在的な責任を心配するのは、十分な理由がある。米軍は世界中で活動し、他国を爆撃・侵略・占領しているが、その説明責任はほとんどない。米国の乱暴な軍事力の使用は、イラクとイエメンで最も顕著に、何十万人もの不必要な民間人の死という結果をもたらしている。これらの戦争はどちらも正当化できない。前者は都合の良い嘘に基づき、後者は独裁者の気まぐれに由来している。

経済制裁もまた、人を殺してきた。現在経済制裁は、ひどく困窮するシリア国民をさらに貧しくするために使われている。30年前、マデリン・オルブライト国連大使は、経済制裁によって子供たちが大量に死亡するという懸念を、「その対価に見合うだけの価値があると考えています」という冷ややかな言葉で打ち消した。

米国の戦争にしばしば加担する欧州は、ロシアの侵略を裁くという米国の提案に従うだろうが、自らは同様の国際監視を受けることを拒むだろう。しかし南半球はそうもいかないかもしれない。アフリカ諸国の政府は、ICCのような国際法廷がアフリカ以外の場所で起きた犯罪を扱うことはほとんどないと以前から指摘してきた。さらに米国とその同盟国による利己的な戦争と尊大な道徳的態度の長い歴史の結果、発展途上国は欧米の対露作戦への参加を望んでいない。

ルールはルールであれ


バイデン政権は、ロシアが同じことをすれば、米国の高官に裁判の責任を負わせるよう申し出るべきだ。米国の指導者も審査の対象としよう。世界の道徳的なリーダーシップを敬虔に主張する人たちに特別待遇はないはずだ。

米軍関係者が不当に訴追されるのではないかという懸念を払拭するため、この手続きは、軍や政治の上級意思決定者にのみ適用できるものとする。ウラジーミル・プーチンとジョージ・W・ブッシュ(元米大統領)は、ウクライナとイラクへのそれぞれの侵攻について法廷で裁かれることになろう。バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、そしてそう、ジョー・バイデン(各米大統領)は、イエメンを荒廃させたサウジアラビアへの援助について裁かれよう。イラン、シリア、ベネズエラ、その他の国々を荒廃させ、窮乏と飢餓を政治的な道具として使用したことについて、議会の指導者に世界と向き合わせよう。

もし西側諸国が、ロシアに押しつけようとするのと同じ基準で生きようとしないなら、他者を裁く道徳的権威はあるだろうか。これはロシアの犯罪責任を軽視するものではない。ロシアの高官は、戦争犯罪の責任を問われるべきだ。しかし他の国の指導者も、適切な場合は、ウクライナであろうと米国であろうと、同じように扱うべきである。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)が認識しているように、西側諸国は日常的に殺人や騒乱を起こし、その後、人道的な災害を残したまま何ごともなかったかのように行動している。これらの政府はしかるべく裁かれなければならない。

よく言われる「ルールに基づく秩序」においていつも変わらないのは、それを作った人々がつねにその要件から自分自身を免除していることである。この振る舞いは、米国が提案したロシアの特別法廷でも続いている。米国が世界の道徳の守護者を装うのであれば、その真の意味を受け入れるべきである。

Try George W. Bush and Vladimir Putin for War Crimes - 19FortyFive [LINK]

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