ヨハン・シュトラウス1世「ラデツキー行進曲」は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで最後を飾る曲として有名。軽快な曲調や明るい手拍子と裏腹に、政治的な因縁に彩られた曲でもあります。北イタリアの独立運動を鎮圧したオーストリアのラデツキー将軍を称えて作曲されましたが、イタリア側から見れば悲劇の歴史で、この曲をタブー視する向きもあるといいます。一方、オーストリアではその後ナチス・ドイツに併合された際も、国家を象徴する曲として尊ばれました。ナチスは国を奪われたオーストリア人の不満を和らげるため、シュトラウス家のユダヤ系の出自に細工までして同家の音楽を利用したのです。そして2020年、ウィーン・フィルはニューイヤーコンサートで使用する同曲の楽譜を一新しました。それまでの版の編曲者であるオーストリア出身の作曲家ベーニンガーがナチスに入党し、党の文化・音楽活動に協力していたことを問題視したためです。
<参考文献>
「特集=ウィンナ・ワルツとニューイヤー・コンサート」(モーストリー・クラシック 2021年2月号)
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