2021-01-30

太宰治『走れメロス 太宰治 名作選』

走れメロス 太宰治 名作選 (角川つばさ文庫 F た 1-1)

名作は児童書レーベルで読むのがいい。絵が多くて楽しいし、活字は読みやすく、解説もわかりやすい。本屋や図書館でまとめて置いてあるので探しやすく、買っても安い。この太宰治アンソロジーは角川つばさ文庫版。夕陽を背景に駆けるメロスがかっこいい。

その「走れメロス」は、メロスが本人に断りもなく親友を王への人質に差し出すのがどうかと思うけれど、名文につい酔ってしまう。齋藤孝氏の解説によると、太宰治は、口で話した文章を奥さんに書き取ってもらうなど、時には実際に語って作品を書いていたそうだ。

「申し上げます。申し上げます。」で始まる「駈込み訴え」も、声に出して読みたくなる日本語だ。イエスに愛されなかった商人ユダの悲しみ。聖書からベニスの商人、転売ヤーに至るまで、商人はいつの時代も蔑まれる。

そして何といっても、「眉山」。ただのユーモア短編かと思って読み進めると、結末で一転して胸を突かれ、みごとな伏線に驚く。

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