その「走れメロス」は、メロスが本人に断りもなく親友を王への人質に差し出すのがどうかと思うけれど、名文につい酔ってしまう。齋藤孝氏の解説によると、太宰治は、口で話した文章を奥さんに書き取ってもらうなど、時には実際に語って作品を書いていたそうだ。
「申し上げます。申し上げます。」で始まる「駈込み訴え」も、声に出して読みたくなる日本語だ。イエスに愛されなかった商人ユダの悲しみ。聖書からベニスの商人、転売ヤーに至るまで、商人はいつの時代も蔑まれる。
そして何といっても、「眉山」。ただのユーモア短編かと思って読み進めると、結末で一転して胸を突かれ、みごとな伏線に驚く。
>>書評コラム【4】
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