2021-01-20

ヴィヴァルディ:グローリア

「グローリア」(作品番号 RV 589)はヴィヴァルディの宗教作品でとくに有名な楽曲。カトリック教会のミサ曲のうち、グローリア(栄光頌)と呼ばれる歌詞に曲をつけたものです。冒頭部分は新約聖書「ルカによる福音書」の「いと高き神に栄えあれ、地に平和あれ、人に恵みあれ」に由来します。この言葉はキリスト生誕の際、天使の大軍が発したとされ、古くから平和思想を表す言葉として有名なようです。たとえば、ヴィヴァルディよりおよそ二百年前の哲学者エラスムスは聖書のこの言葉を引用し、「キリスト生誕の際、天使が歌ったのは戦争の栄光でも勝利の歌でもなく、平和の賛美歌だった」と述べています。影響は文化にも及び、日本でも、最近再評価の機運が高まる作家、小松左京が戦争をテーマとしたSF短編「地には平和を」を残しています。ヴィヴァルディのこの楽曲で、「地に平和あれ」と歌う第2楽章は、とりわけ美しく、平和の祈りにふさわしいものです。

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