2021-01-19

プーランク:平和への祈り

シャルル・ドルレアン(オルレアン公)は15世紀フランスの王族で詩人。ジャンヌ・ダルクが活躍した百年戦争のさなか、聖母マリアに「平和への祈り」を捧げます。「すべてを破壊し尽くす戦争をなくしてくださいますよう/祈りに倦まれませぬよう/平和の祈りを、平和の祈りを/平和こそ喜ばしい真の宝なのですから」。プーランクがフランスの新聞でこの詩を読んだ1938年9月29日は、折しもミュンヘンで主要国首脳会議が開かれ、ヒトラー率いるドイツと戦争の緊張が高まっていました。プーランクはさっそく詩に曲をつけます。彼自身の日記によれば、情熱と、それから何よりも謙虚さの表現に苦心したといいます。敬虔なカトリック信者を両親に持つ彼にとって、謙虚さこそは「祈りの最もすばらしい特質」だったからです。しかしその祈りも虚しく、一年後、ドイツのポーランド侵攻とそれに対する英仏の宣戦布告により、世界は未曾有の戦禍に引き込まれていきます。

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