2021-01-06

米国式の社会主義


社会主義の下では、市場で決まる価格は存在しない。市場が存在しないからだ。価格は単に政府の命令で決まる。市場価格に基づく経済計算ができないから、政府が始める事業のコストを計算できないし、価格も決められない。だから社会主義経済が大混乱に陥るのは避けられない。

社会保障は給付金に対する「資格」だと言われるが、法的には何ももらえる資格はない。社会保障によって政府と市民の間に契約関係は生じない。制度そのものを続ける義務もない。もし議会が今日、社会保障の廃止を決議しても、契約違反で訴え、補償を求めることはできない。

1960年代、ジョンソン政権が公的医療保険を導入するまで、米国の医療水準は技術革新のおかげで急上昇していた。公的医療保険がそれを台無しにした。公的医療保険のアイデアは社会保障と同様、19世紀末にドイツの社会主義者の間で生まれ、米国の左翼が20世紀前半に持ち込んだ。

米国では教育バウチャー(利用券)の導入によって、国営教育は終わりに近づくどころか、逆に国家が教育に対し、より深く組み込まれた。バウチャーを受け取る私立学校への影響が大きい。私立校は流れ込んでくるバウチャー収入で教職員を増やし、校舎を新築し、機器を購入した。

米国では金貨・銀貨本位制のおかげで、19世紀に高い経済成長と繁栄を享受した。人々はインフレで貯蓄の価値が吹き飛ぶことはないと知っていたので、収入からまとまった額を貯めた。よく買われたのは百年物の社債だ。金貨で支払われるので、価値が損なわれないとわかっていた。

移民の規制を支持する人は、国には国境を守る権利があると言う。しかし国には権利はない。権利があるのは人だけだ。人は自分の私有地を不法侵入から守る権利はあるけれども、他人が生活や幸福追求のために国境を越えるのを止める権利はない。

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