経済学者、フィリップ・バガス
(2021年8月25日)
ワクチン未接種者への圧力が強まる。ある国のワクチン接種者は、コロナ対策によって奪われた自由を取り戻しつつあるが、ワクチン未接種者はそれほど恵まれていない。差別の対象になっている。公共の場への出入りや移動がより難しくなっている。国によっては、いくつかの職業にワクチン接種が義務付けられているところもある。
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— Mises Institute (@mises) December 31, 2021
"The globally coordinated vaccination program can be interpreted as a building block in a supranational strategy of a great reset." - @PhilippBagushttps://t.co/25EbFMAmU3
しかし、なぜ政府にとってワクチン接種キャンペーンがそれほど重要で、これほどまでに圧力を強めているのだろうか。誰が世界的なワクチン接種キャンペーンに関心を寄せているのだろうか。
これらの問いに答えるには、流布するワクチン接種の物語を分析し、そこから利益を得ているのは誰なのかを問うことが必要である。その際、政府、メディア、製薬業界、超国家機関の間の利害の一致に注目する必要がある。
まず、製薬業界から見てみよう。製薬会社はワクチン接種キャンペーンで明らかに経済的な利益を得ている。ワクチン接種が普及すれば、莫大な利益が得られるからだ。
政府はどうだろうか。新型コロナの危機では、政治家が恐怖とヒステリーを組織的に増幅させた。政府は内外の危険から国民を守るという主張の上にその存在意義を築いているのだから、これは偶然ではなく、当然である。政府は恐怖の上に成り立っている。政府の助けがなければ、国民は飢餓、貧困、事故、戦争、テロ、病気、自然災害、パンデミックに対して無防備になってしまうというのがそのストーリーである。したがって政府は、起こりうる危険に対する恐怖を植え付け、それを解決するように見せかけて、その過程で権力を拡大することが利益になる。比較的最近の例では、9月11日の同時多発テロと第二次イラク戦争の後、テロの脅威に対応するため、米国では市民の自由が制限された。同様に、国民の基本的権利を犠牲にして平時にはありえないほど国家権力を拡大するために、恐怖を意図的に植え付け、新型コロナを特異な殺人ウイルスとして描くことは、政府の利益につながるものであった。
コロナ危機が始まったとき、このウイルスの潜在的危険性についてあまり知られていなかったので、政治家は非対称的な対価に直面することになった。政治家が危険を過小評価し、対応しなかった場合、その責任を問われる。選挙も権力も失う。とくに、死者を出したことを非難されればなおさらである。集団埋葬の写真はともかく、危険を過小評価して行動しなかった場合の結果は、政治生命にかかわる。対照的に、危険を過大評価し、断固とした行動を取ることは、政治的にはるかに魅力的である。
本当に前例のない脅威であれば、政治家はロックダウン(都市封鎖)などの厳しい措置で称賛される。そして政治家はつねに、自分たちの断固とした行動がなければ、本当に災害が起きていたと主張することができる。結局、危険はそれほど大きくなかったので、対策は大げさだったと判明した場合、その対策によって起こりうる負の結果は、大量埋葬の写真ほど政治家に直接かかわるものではなく、間接的かつ長期的なものだからである。ロックダウンの間接的かつ長期的な健康コストには、自殺、うつ病、アルコール中毒、ストレス関連疾患、手術や検診のキャンセルによる早期死亡、総じて低い生活水準が含まれる。しかしこれらの代償は厳しいコロナ対策に直接関連するものではなく、政策のせいだとされる。これらの影響の多くは次の選挙以降、あるいはそれ以降に発生し、目に見えない。たとえば、生活水準が高ければ平均寿命がどの程度伸びたかを観察することはできない。また、6年後にロックダウンをきっかけに発症したアルコール依存症やうつ病で誰かが死んだとしても、ほとんどの人はロックダウンの政治家の責任を追及しないだろうし、追及したとしてもその政治家はすでに退陣している可能性がある。したがって、脅威を過大評価し、過剰に反応することが政治家の利益になるのである。
政治家にとって魅力的なロックダウンのような過酷な手段を正当化し、擁護するためには、恐怖心をあおることが必要である。コロナ危機で政治家が恐怖とヒステリーをあおり、ロックダウンのような厳しい規制を実施した際、経済と社会構造へのダメージは計りしれないものであった。しかし社会は、コストが上昇し続ける以上、永遠にロックダウンしているわけにはいかない。どこかの時点でロックダウンから抜け出し、正常な状態に戻らなければならない。だが殺人ウイルスの脅威に対する恐怖をあおりながら、どうやって正常な状態に戻すことができるのだろうか。
その解決策がワクチン接種である。ワクチン接種キャンペーンによって、政府は自らを深刻な危機の救世主として演出することができる。政府は国民のために予防接種を計画し、国民に「無料」で予防接種を提供する。この「接種救済」がなく、永久に封鎖された状態では、市民権の制限による経済的・社会的な悪影響が大きく、国民の恨みは募り続け、最終的には不安の危機が訪れるだろう。だから遅かれ早かれ、ロックダウンは終わらせなければならない。しかしもし政府当局がそれ以上の説明なしに封鎖や制限を撤回し、結局危険はそれほど大きくなかった、制限は誇張であり間違いだったとほのめかせば、住民の支持と信頼を大きく失うことになる。したがって政府の立場からは、最も厳しい制限の中で、面目を保つ良い「出口シナリオ」が必要であり、ワクチン接種キャンペーンはそれを提供してくれる。
政府が提供するワクチン接種によって、政府は大きな脅威という物語を保持し続け、なおかつロックダウンから抜け出すことができる。同時に、ワクチン接種によって正常性を多少なりとも高めている救世主として、自らを売り込むことができる。そのためには、できるだけ多くの人口がワクチン接種を受けることが必要である。もし人口の一部しかワクチン接種を受けなければ、ワクチン接種キャンペーンをロックダウンからの開放に必要なステップとして売り込むことができないからである。したがって、人口の大部分にワクチンを接種させることは、政府の利益となる。
この戦略がうまくいけば、政府は前例を作り、権力を拡大し、市民をより依存させることになる。市民は、政府が自分たちを死活的な苦境から救ってくれた、将来は政府の助けが必要になる、と考えるようになる。その見返りとして、市民は自分の自由の一部を永久に手放すことをいとわないだろう。政府が毎年行うブースター(追加接種)が必要だという発表は、市民の依存心を永続させるだろう。
マスメディアはワクチン接種のシナリオに同調し、盛んに支持する。政府とマスメディアは密接な関係にある。有力メディアによるフレーミング(枠づけ)と、国民を標的にすることには、長い伝統がある。すでに1928年にエドワード・バーネイズがその古典的著書『プロパガンダ』で大衆の知的操作を提唱している。現代の政府では、マスメディアは、コロナの場合のような政治手段に対する大衆の支持を構築するのに役立っている。
マスメディアが政府を支持するのには、いくつかの理由がある。あるメディアは国家によって直接所有され、他のメディアは厳しく規制され、政府の免許を必要とする。またマスコミ各社は政府の教育機関の卒業生で構成されている。さらに、とくに危機の時代には、政府との良好なつながりが利点となり、情報への特権的なアクセスが可能になる。政府の恐怖物語を喜んで伝えるのは、悪いニュースや危険の誇張が注目を集めるという事実にも由来する。
コロナ危機では、ソーシャルメディアを通じて拡散した一方的な報道が批判的な声を封じ込め、恐怖とパニックを助長し、国民に大きな心理的ストレスを与えた。しかしメディアにとって魅力的なのは悪いニュースだけでなく、政府が国民を大きな危機から救うという物語もまたよく売れる。このように、ワクチン接種の物語はマスメディアの思惑にはまる。
国民国家、メディア、製薬会社に加えて、超国家的組織も世界人口のワクチン接種を実現させることに関心がある。超国家的組織は、世界的なワクチン接種キャンペーンが重要な役割を果たすような方針を活発に追求している。これら組織には世界経済フォーラム(WEF)、国連、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)などがあり、相互に密接に結びついている。
これら組織のなかには、グレート・リセット、あるいはグレート・トランスフォーメーションを目標に掲げるものもある。パンデミックや気候保護、ジェンダー、移民、金融システムの分野において、これら組織は世界中のすべての人々の利益のために協調して答えを見つけたいと考え、責任の共有とグローバルな連帯を強調している。予防接種、気候変動、金融や移住の流れの中央管理は、新しい世界秩序の特徴を帯びる。たとえば、WEFの2019年年次総会のテーマは「グローバル化4.0:第四次産業革命時代のグローバルアーキテクチャを作る」である。また超国家的な計画の例として、国連の「移民のためのグローバル・コンパクト 」がある。国家レベルでは、ドイツ地球変動諮問委員会の政策文書「移行期の世界:大きな変革のための社会契約」が示すように、過激な考え方が支持されている。
レイモンド・ウンガー氏は、この超国家的計画の推進を、アントニオ・グラムシとハーバート・マルクーゼが構想した文化戦争の一環であると見ている。とくに気候変動やコロナの分野では、新しい社会主義的な世界秩序を確立するために、意見と怒りのグローバルな管理が、恐れと恐怖の場面と組み合わされる。実際、WHO、IMF、国連は元共産主義者によって率いられている。WEFは製薬業界や大手ハイテク企業を含むグローバル企業から資金提供を受けている。WEFはその一部で、国連の2030アジェンダに多大な資金を提供している。WHOもまた製薬会社やビル&メリンダ・ゲイツ財団から多額の資金提供を受けており、世界的なワクチン接種キャンペーンを先導している。コロナ危機の際にも、製薬業界はWHOに影響力を行使している。IMFはWHOの勧告に従った場合のみ、各国を支援する。
相互に結びついたこれら超国家機関は、コロナ危機を自分たちの方針推進のチャンスととらえている。国連の政策文書「責任の共有、グローバルな連帯---新型コロナの社会経済的影響への対応」は、新型コロナを現代社会の転換点としてとらえている。その意図は、この機会をとらえ、世界的に協調して行動することである。大手ハイテク企業はこうした方針を支持している。ハイテク大手はWEFのメンバーでもあり、マスメディアと同じように、そのプラットフォーム(ツイッター、ユーチューブ、フェイスブック)でコロナに関する好ましくない情報を検閲している。とくにユーチューブでは、ワクチン接種に批判的な動画はすぐに削除される。
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事の基調講演のタイトル「グレート・ロックダウンからグレート・トランスフォーメーションへ」も、超国家組織がコロナ危機を自分たちの目的に利用したいのだという考えを強調している。WEFの創設者であるクラウス・シュワブ氏は、コロナ危機は「経済と社会の制度に新たな基礎を築く貴重な機会」であると主張している。シュワブ氏はティエリ・マルレ氏との共著『グレート・リセット』で、決定的瞬間について語り、新しい世界が現れると主張している。シュワブ氏によれば、今こそ資本主義の根本的な改革を行うべきときである。
したがって、世界的に連携したワクチン接種政策は、グレート・リセットの超国家的戦略の構成要素であると解釈することができる。その後の世界的な予防接種キャンペーンに利用できる、世界的な予防接種の仕組みが確立されつつある。グレート・リセット提唱者の視点から見ると、世界的に連携したコロナワクチン接種は、その後「気候変動」と効果的に闘い、グレートリセットを推進するような他のグローバルな目的のために使用できる、グローバルな構造と組織の必要性を強調するものである。つまり政府、メディア、製薬業界、超国家機関が密接に絡み合い、ワクチン接種という物語に共通の利害を持っているのだ。このような観点からすれば、ワクチン非接種者への圧力が強まるのは当然のことである。
(次を全訳)
Vaccine Mandates and the "Great Reset" | Mises Wire [LINK]
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