ジャーナリスト、カート・ニモ
(2022年11月3日)
ダグラス・マクレガー退役大佐のこの論説が怖くないとしたら、一体何が怖いだろう。マクレガー氏は、フランスの週刊誌「ルクスプレス」によるデビッド・ペトレイアス元大将のインタビュー記事を引用している。このインタビューで、元中央情報局(CIA)長官でもあるペトレイアス氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領とその政府の敗北を防ぐために、米国政府が現場でロシアと直接対峙する時が来たと述べているのである。
Former CIA Boss Petraeus Demands US Forces Enter the Fight in Ukrainehttps://t.co/modkmywYVw pic.twitter.com/EU3KDoiPjD
— Ron Paul Institute (@RonPaulInstitut) November 4, 2022
マクレガー氏はこう書いている。
たしかに、この件は怪しげではあるが、ペトレイアス氏の提案は却下されるべきではない。同氏の軍事に関する専門知識が検討に値するからではない。むしろペトレイアス氏は、米政府や金融業界の有力者に言われない限り、このような提案をすることはないだろうから、注目に値するのである。ジェフリー・サックス氏(経済学者、コロンビア大学教授)が米国人に語ったように、グローバリストとネオコン(新保守主義者)のエリートは、明らかにロシアとの直接的な武力衝突を望んでいる。
マクレガー氏によれば、ペトレイアス氏は「何事もやる前に自分より上の立場の人間に確認することで出世してきた」のだという。上司を怒らせないように、歯向かわないようにして、出世の道を切り開いたという。
イラクで、ペトレイアス司令官率いる「有志連合」が、経済制裁で破壊されたイラクを難なく制圧したことを思い起こそう。ペトレイアス氏はこのような考え方に囚われているのだ。「ウクライナはイラクではないし、ロシア軍はイラクのような軍隊でもない」と、マクレガー氏は警告している。
冬が始まると、故障や離反の多いウクライナ軍にロシア軍を撃退する能力がないことは、痛いほど明らかになってくる。「過去60日から90日にかけてのウクライナの一連の反撃は、ウクライナの何万人もの命と、ウクライナ政府では補充できない軍の人的資源を犠牲にした」と、マクレガー氏は書いている。
マクレガー氏によれば、ウクライナは今、正念場である。「11月か12月、あるいは地面が凍る頃に、ロシアのハンマーがゼレンスキー政権に振り下ろされ、ウクライナ軍の残党はすべて粉砕されるだろう」
今は11月で、秋の雨でぬかるんでいることで有名なウクライナの野原は、まもなく凍りつく。ロシアは、ゼレンスキー政権と、現在ウクライナの正規軍に組み込まれている超国家主義のネオナチ連隊に終止符を打つために動き出すだろう。
ペトレイアス氏は、このタイミングが非常に重要だと考えている。大量虐殺を行ったステパン・バンデラ(第二次世界大戦中に本物のナチスに協力し、何十万人ものユダヤ人、ポーランド人、ジプシー、その他の「下等人種」を虐殺した)に敬意を表する「愛国者」たちで構成されたゼレンスキー政権とその大統領を救うには、今しかない。
ホワイトハウス、国防総省、CIA、米議会のいつもながらの戦争タカ派は、宣戦布告なしにウクライナに米軍を派遣すれば、ロシアに対し体面を保てるという主張を、おとなしい米国の有権者が信じてくれると考えているのだろう。
マクレガー氏は、「そんな考えは危険で愚かであり、米国人はこの考えを拒否すべきだが、このような誤った考えが政府中枢に蔓延していると考えるのは無理からぬことだ」と考えている。
米国民は今、多くの問題、とくにインフレと経済悪化で頭がいっぱいだ。ウクライナ人に同情はしても(ウクライナの歴史やネオナチがウクライナのロシア系住民にもたらす脅威をほとんど知らない)、直接軍事介入は政府に取り組んでほしいことのリストの上位にないことはたしかである。
ワシントンの権力中枢では、「参戦」の前提にはつねに一定の条件がある。戦争権限法を発動する責任を無視する従属的な議会、軍事行動を支える無制限の財源、軍事担当の政治家が主張するどんな馬鹿げた考えにも従う準備ができている軍の上級指導者たちである。ペトレイアス氏やその仲間には、将来の任命や金銭上の利益という形で、何らかの具体的な報酬が約束されている可能性も高い。
一言でいえば、地球上で最も多くの核兵器を保有する国(ロシア)との直接対決の可能性は、国家安全保障の舵取りをする指導者たちのことを考えれば、明らかに高まっているのである。「米国の軍事指導者たちの知的・職業的資質は嘆かわしいほどだ」とマクレガー氏は結論づける。
実際その事実は、かつて強力だった米軍が最初に負けた大規模戦争であるベトナム戦争以来、明白である。ペトレイアス氏のような身勝手な出世主義者が多く、かつての面影はない。
今、地獄の淵に立っていると警告しても大げさではない。水準が下がり政治色を強めた軍の指導者、ネオコン、少なからぬ数の議員が、ゼレンスキー政権をどう救うかについて考えを巡らせているのだから。同政権は、米政府と国務省のビクトリア・ヌーランド(国務次官)ら狡猾なネオコンによって画策された違法なクーデター(2014年のマイダン革命と呼ばれる政変)の後継者である。
バイデン政権には、「人道的介入主義者」とネオコンが多い。ダグラス・マクレガー元大佐の経験を考慮し、その見方が正しいとすれば、私たちは今、取り返しのつかない奈落の底に突き落とされようとしているのである。ミサイルが発射されたら、もう後戻りはできない。地球上の生命が絶滅する可能性は、日に日に高まっている。
(次を全訳)
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