2022-11-24

ケネディ暗殺はなぜ今も重要か

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年11月22日)

今日がジョン・F・ケネディ元米大統領(JFK)暗殺から59年目であることを考えると、「何が違うのか」と問うのは当然である。結局のところ、それは遠い昔のことなのだという疑問も当然あるだろう。

私の答えは断じて「ノー」である。JFK暗殺事件は、わが国の歴史上、大きな政治的断絶であった。1953年にイランで行われた米中央情報局(CIA)の政権交代作戦の結果を、イラン国民がいまだに引きずっているように。もし私たちがこの国をより良い方向に向かわせようとするならば、1963年11月22日に起こったことに向き合い、なぜそれが起こったのかを理解し、私たちの国を正しい軌道に戻すために何をすべきかを認識することが不可欠なのである。

わが国の歴史上、2番目に大きな変革は、福祉国家への転換である。社会保障制度は、ドイツの社会主義者の間で生まれた概念であり、連邦政府の主要な役割は、米国民の世話をすることになった。この新しい福祉国家の役割は、制御不能の大規模な連邦支出、負債、貨幣価値の低下(すなわちインフレ)に道を開いた。

しかし、最も大きな変化は第二次世界大戦後に起こった。連邦政府が、建国時の政府体制である最小限の政府による共和制から、安全保障国家という政府体制に転換されたのである。国防総省(ペンタゴン)、巨大な軍産複合体、増大し続ける「防衛」請負業者、CIA、国家安全保障局(NSA)が誕生したのである。この新しい戦争国家の役割は、福祉国家がすでに生み出していた巨額の支出、負債、貨幣価値の低下(すなわちインフレ)に加わった。

安全保障国家は、暗殺の権限を含む全能の力を持つようになった。CIAは当初から、外交政策上の手段として暗殺を志向していた。それは審査不可能な権力であった。議会も最高裁も、CIAの暗殺にあえて干渉することはない。

私は何年か前から、タフト大学の法学部教授を務めるマイケル・グレノン氏の『国家安全保障と二重政府』という本を推薦している。グレノン氏は上院外交委員会の顧問弁護士も務めた。その説は不穏なものである。政府を実際に動かしているのは国家安全保障部門であるというのが、グレノン氏の主張だ。他の3つの部門、つまり行政、立法、司法は、支配しているように見せかけることが許されている。国防総省、CIA、NSAにとって外見は重要ではない。彼らにとって重要なのは、とくに外交問題に関して、現実に支配しているのは自分たちであるということだ。

もしグレノン氏のいうことが正しい(私はそう確信している)なら、だからこそわが国は今、ロシアとの命を奪う核戦争に危険なほど近づいているのである。ペンタゴンとCIAは北大西洋条約機構(NATO)を通じて活動し、私たちをこの道に導いてきた。アフガニスタンとイラクで致命的・破壊的な戦争を果てしなく続けながらである。いうまでもなく、いつまでも続く「テロとの戦い」は、中東における介入主義者の愚かな行為が直接招いたものだ。

連邦政府の支出、負債、インフレが急増する一方で、米国の役人は何十億ドルもの納税者や新たに印刷された連邦準備理事会(FRB)のドルを、世界で最も腐敗した政府の一人として広く知られるウクライナ政府の金庫に送り続けている。その金の多くがスイスの銀行口座に流れ込んでいるのは間違いないだろう。

これでは生きていけない。しかし、私たちはこのような生き方をする必要はない。自由、平和、繁栄、調和のある生活を送ることはできる。しかしそれに欠かせない前提条件は、国家安全保障型の政治形態を解体し、私たちの国に最小限の政府しか持たない共和制を回復することである。

ケネディ大統領はキューバ危機が終わるころには、安全保障国家が私たちの国に与える深刻なダメージを理解していた。当時、国防総省とCIAがキューバへの侵攻を主張したために命を奪う核戦争の危機に瀕したケネディは、国を別の方向に向かわせることを決意したのだ。反ロシアの敵意はもういらない。反キューバの敵対はもうやめよう。反中国の敵対はもうしない。冷戦はもうしない。反共十字軍はもういらない。ロシア、キューバ、中国、北ベトナム、北朝鮮、世界各国と平和的・友好的に共存しよう。

ケネディと安全保障関係者の戦争は、ピッグス湾事件〔1961年4月、米国がカストロ政権転覆を狙ってキューバに侵攻〕の後、すでに始まっていた。ケネディはCIAを解体し、風前のともしびにしようとした。CIAは、ケネディが裏切り者で臆病者で無能であり、米国を共産主義者の支配に導こうとしていると確信していたのである。(自由の未来財団が刊行した、『JFKと国家安全保障体制の戦い——なぜケネディは暗殺されたのか』も参照されたい。暗殺記録審査委員会の委員を務めたダグラス・ホーン氏の著書だ)

1963年6月、ケネディがアメリカン大学で平和演説を行うと、戦いは全面戦争になった。それは10年後にチリの国家安全保障機構が、ペンタゴンとCIAの全面的な支援を得て、チリの大統領サルバドール・アジェンデに対して行った戦争と何ら変わりはなかった。

ケネディもアジェンデも、国家安全保障機関の全能の力にはかなわないことがわかった。どんな大統領でもそうだ。それが、安全保障国家が危険である理由の一つである。ひとたび安全保障国家が誕生すると、それを排除することは事実上不可能である。

そう、お決まりのセリフはわかっている。ペンタゴンとCIAがケネディを殺したという考えは「陰謀論」だというものだ。暗殺後の最初の数十年間は、このセリフが有効だったかもしれない。しかし1990年代、軍が行った大統領の死体解剖に不正があったという決定的な証拠を暗殺記録審査委員会(ARRB)が発見すると、「陰謀論」という考え方は事実上、通用しなくなった。なぜなら、解剖の不正に無罪はありえないからだ。不正な検死は、暗殺における有罪を必然的に意味する。それを回避する方法はない。拙著『ケネディ検死』『ケネディ検死2』『悪との遭遇』を参照されたい。

私たちは明らかに、きわめて機能不全の社会に生きている。定期的に起こる大規模な殺人事件。致命的で破壊的、人種差別的な麻薬戦争。社会主義的な移民管理制度は、私たちの国に死と移民警察国家をもたらした。何百万人もの人々が、他人の所得を奪うために政府を利用している福祉国家。政治目標を達成するために、罪のない人々を死と苦しみの対象にする経済制裁と禁輸。クーデター。独裁政権との同盟。外国との戦争に若者の命を捧げるような、絡み合った同盟関係。生命を奪う核戦争に再び危険なほど近づこうとしている対外介入主義。

ケネディはこの状況を打開する道筋を見いだした。残念ながら、少なくとも外交問題に関しては、わが国を正しい道に戻す前に、彼らはケネディを消し去った。私たちには選択肢がある。ペンタゴン、CIA、NSAが作った道を進むか、最小限の政府を持つ共和国を取り戻すことによって正しい道に戻るかだ。私たちの生活と幸福はその選択にかかっている。だからこそケネディ暗殺事件は、私たちの現在と未来にとって、いまなおきわめて重要なのである。

(次を全訳)
The 59th Anniversary of the JFK Assassination – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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